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100/1501

100~逃げ出した3人

「お~い! ドロテアぁ~! ペトラぁ~!」

館に駆け込んで来たのはもちろんヘルゲ。

家の扉を開けると、開けっ放しでドカドカと床を蹴った。

 「どうされました? ヘルゲ殿」

「お、ペトラ! どうにもこうにもだ! ドロテアは? 寝ておるのかい?!」

 「はい、さきほど分厚い化粧を落とされまして、今ベッドに」


ヘルゲは食堂を横切ると、寝室のドアをバタンと開けた。

「おい!ドロテア!」


 『あ~、なんだよヘルゲ。私は今まさに深い眠りに入ろうとしたところ。出て行っておくれよ』

「そうじゃないんだ! 寝ている場合じゃない!」

 『うるさいなあ。しずかにしておくれ』

ドロテアは掛け毛布を抱くと、寝返りを打ってヘルゲに背を向けた。


「ばか!わしの話を聞け! 攻めてくるぞ!」

 『だれが? 煙なら窓は閉めてあるぞ』


「アホ!海賊だ!か、い、ぞ、く!」


 『はぁ~?はぁ~? はぁ~? どこの?』

ドロテアはもう一度寝返りを打つと、そこで上半身を起こした。


うつけ!海賊にどこぞもくそもあるか! とにかくだなぁ!早くここを逃げ出さないと大勢の賊どもに襲撃されるぞっ! 目的はここの家のお宝だっ!」


 『ぎゃ~!』

ドロテアはベッドから、ピョンと跳ねあがるとスタスタと鏡の前に向かった。


「は?なにをしておる! 化粧なんかしてる場合かぁ! そのままでいいから早くしろ!」

 『は?私はズロースだぞ!』


「いいから!いいから! そこに掛けてあるわしの寝巻を羽織るんじゃ! 身成なんかどうでも良いわ! 早くしないと殺されちまうぞ!」

 

 『宝は?』

「宝? どっちが大事か考えろ! その寝ぼけ頭で!」



2人は着の身着のまま、食堂に出た。

「おい!ペトラ! お前も早く逃げるんだ! 海賊の追っ手が攻めて来るぞ!急いで!急いで!」

ペトラは洗っていた皿を放り投げると、エプロンの裾で手を拭いた。


 『おいおい、この格好にこの私の顔では、私が召使いでペトラが男爵夫人ではないか!?』

ペトラの姿を見たドロテアはそう言った。


「ボケ! お前はこの場に及んで、なにを気にしておるんじゃ! とっとと外に出んか!! あ~!そっちではない!あっち! 勝手口じゃ!裏からじゃ!裏口じゃ!」


 3人は港とは反対側。そのぺんぺん草だらけの砂利道をバタバタと跳ね上げた。


 


 『ハアハアっ、息が切れるわ。おいヘルゲ、あの火事か? ハアハア、お前見たのか? その海賊ども』

「いやいや、ヨーセスの野郎とバッタリ会ってな、ハアハアっ、そう言っていた」


 「あれま? ヘルゲ殿。見てはいないのですか? その海賊とやらを」

ペトラも両手を振り振り、ヘルゲに聞いた。


「見ていたらわしなぞもう捕まっておるわ! ヨーセスがそう言うんだから間違いはないわ!」


 「ヘルゲ殿。どこまで逃げるおつもりで?」

「どこまでって、、、行けるところまでじゃ! ハアハアっ」



 『それよりも、逃げ延びたらお前に言いたいことがあるっ!』

なびいたヘルゲの寝巻。そのボタンを留めながらドロテアが言った。

 『ばか。アホ。うつけ。ボケ。寝ぼけ頭。私に言ったその言葉。覚えとけよ』


「あ、、、っ」

 

 『それから、ペトラ! 分厚い化粧とは何事ぞ!聞こえておったわ!』


3人は砂利の道を記録づくめの早さで駆けて行った。

※第21話~「統計という魔術・紫の雪」に挿絵を掲載。

宜しかったら是非覗いてみて下さい。

 いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  二度目の感想すみません。  ❇❇100話おめでとうございますーーーう❗❗❇❇
[一言]  ヨーセスは何を企んでいるのでしょう❔  しかし、三人の逃げる姿がとても滑稽ですね。笑  すっぴんのドロテア見たくないですうー。  そんなに分厚いんでしょうか。笑  あの私の作品読めない…
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