10~外れたヘルゲの目論見(もくろみ)
ガラガラ
「ん?う?お前らそこで何をしておる?!」
それはヘルゲの薪小屋。開けたのも当人ヘルゲ。
「あ、ヘルゲ男爵殿」
太い腕をむき出しにした若い5人が額の汗を拭っていた。
「ドロテアさまに言われまして、この薪をつらつら組み合わせて、女の寝床を作れと」
「ほう、寝床?」
「はい、今だいたいは出来上がったので今度はこの土間に落ちている枯葉を集めているところであります」
「これか?寝床というのは?」
「はい、お気に召しましたか?」
「ん~だめだ!ダメ!狭い!狭いわ! 2人は寝れんようではな!やり直しだ!」
「?2人と申しますと?」
「おや?なんだ?このアデリーヌの足首」
ジャリッ ジャリッ ジャリン
「鎖?」
「この先についておるのは、、」
「はい、その鎖と錨は船乗りたちが使わなくなった物を頂戴してまいりました」
「誰が?誰がそんなことを?」
「ドロテアさまが、この女を逃げれぬようにヒッチバットケ!と」
「おうおう、可哀そうなアデリーヌや」
ガラガラ ピシャん!!
『ここにおったかヘルゲ。今日は召使いの婆さんが非番だ。早く夕飯の支度をしろ!』
「おいおい、ドロテア。それよりなんだこれは?」
『ああ、わたしは明日からちょいとばかり北へ向かう。こいつの亭主の様子を見にいかねばならん』
「あれか?バルデのマウリッツの城か?」
『そうだっ。ここにいない薪割りの男達に連れて行ってもらうのだ』
「裏の馬車でか?」
『なにかご不満でも?』
「いやいや、まあゆっくりと行ってきなされ」
『おや?いつもならそんなことは言わないのに、今日はどうしたことかしら?』
「まあ、たまにはな。それもいいであろうと思ってな」
『はは~んっ。それはわたしが居なければアデリーヌと2人切りになれると?』
「違う!違う!」
『しかしな。それは無理な話というもんだ。ここは薪割りの男に毎昼毎夜交代で見張ってもらうことにしておるのでな』
「はぁ~? いやいや、ここは俺がいるから大丈夫だ。見張りなどいらん!わしがちゃ~んとっ見ておるから。なっ!こいつらに見張り代も払わねばならぬのだろ?あ~もったいない。もったいない」
『フン!もう男達に頼んでございますからっ。料理番の婆さんとごゆっく~り』
「おい、お前。扇の下。口元からヨダレが垂れておるぞ」
『あらま、失礼』
「お前は北の城に向かう前はいつもそうだ。拭いておけ」
(しかし、この薪割りの男達といいあの3人の兵といい、なぜ俺が「殿」でドロテアは「様」なのだ、、)




