279話 崩壊の武装商団〜とある調達局長の悪夢
さて、明日からまた遠征生活の日々か。
近場は既に狩り尽くしちまったせいで、今回は結構な遠出になりそうだ。
しばらく戻れねぇと考えて、準備は念入りにしとかねぇとな。
「親分!」
「バカ野郎! 今の俺はこの基地の調達局の局長だ。何度言ったらわかるんだ」
「すんません。つい昔の癖で」
「お前なぁ。ここに来てもう5年もたってるんだ、いい加減覚えろよ」
「すんません」
はあ。
こいつは仕事はできるんだが。
なんというか微妙に抜けてやがるんだよな。
「まあいい。それで何かあったのか?」
「いえ、指定されていた機材の準備が終わったので、その報告に」
「おう、わかった。明日からまた遠征だ、しっかりと休んでおけよ」
「わかりました! 失礼します」
ふう、それにしても……5年か。
人生なんてのはどこでどうなるか、わからんもんだ。
盗賊の頭領が、一味もろともこんなところで働くことになるなんてな。
まあ、やることが変わらないのに、稼ぎもいいし、まともなねぐらももらえるしと感謝しかないがな。
「親分!」
「だから局長と呼びやがれ!」
「すんません、ですがそれどころじゃないんです!」
「なにがあった?」
「敵襲です」
俺たちに恨みを持ってるやつは山ほどいるが。
わざわざこの基地に襲撃かけるなんざ、どこのバカ野郎だ。
「それで相手の規模は?」
「弓を持ったエルフ一人です」
は?
一人?
「そんなもん一々報告に来るんじゃねえよ。防衛用魔動機兵の連中で直ぐ片がつくだろ」
「そいつらが一瞬で消し飛ばされました」
「なんだと!?」
「既に各種魔動機兵が応援で出撃していますが、全く歯が立ちません」
おいおいおい、冗談じゃねえぞ。
この基地に一体何機の魔動機兵がいると思ってるんだよ。
そいつらが全くもって歯がたたないだと?
「親分」
「おい、部隊の連中を全部集めろ」
「うって出るんですか?」
「いや、さっさとずらかるぞ。そんなやべえやつにかまっても意味はねえ。命あっての盗賊家業だ」
「わかりました!」
飯も金も住み家も保証された環境は捨てがたいが、死んじまったら元もこもないからな。
「親分!」
流石にはやすぎねぇか?
今出ていったばかりだろ?
「奴がもうそこまで」
「なんだと!?」
「それに基地の半分が消えちまってる!」
「なに言ってやがる」
「兎に角、早く逃げてくれ。このままだとここもっ!?」
な!?
壁が消えた?
「親分、あいつだ。あいつがここを襲ってきたやつだ」
くそ、姿がよく見えねえな。
あんな遠くから一体どうやって。
「親分、早く。ここも直ぐに他の建物みたくなっちまう」
他の建物?
そうだ、なんでここからあいつが立っている場所が見えるんだ?
他の建物はどこにいったんだ?
「親分、奴がまたなにかするつもりだ!」
なんだ?
弓を天に構えて……なにかを放った。
一体なにをしたんだ?
「親分、上だ! 上からなにか降ってくる」
な、天井が、壁が消えていく。
「親分、にげ……」
魔力の塊が降り注いで……全てを消滅させてるのか!
一体どんな攻撃の仕方なんだよ、くそったれ!
「こんなもの防げるか」
こうなったら俺だけでも転移石で。
……。
「なんでだ! なんで反応しない」
しまっ。
た…………。
……。




