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準備室、初の成果発表

 

 成果としては商船を改造した海賊船が一隻と、その乗組員である海賊達30名、それと突入の時に倒された死体が12ばかり。

 これは、こちらに運ぶまでもないので、海賊船の倉庫に放り込んでおいたそうだ。


 残るはお持ち帰りだけだ。


 向こうに保安要員として5名移ってもらい、副長のメーリカ姉さんと機動隊員とでワイヤー接続の作業をしてもらう。


 副長はともかく駆り出されたマリアはまた不満を言いながら作業をしていた。


 作業を終えて、俺らは一路ニホニウムに戻った。


 今回はお土産があるので、宇宙港では無く、そのままドックに向かう。


 管制圏内に入るとタグ宇宙船を呼んで、海賊船を付き合いのあるドックに入渠させ、『シュンミン』は隣に購入済の敷地に降ろした。


 ニホニウムに戻ると早速の成果とばかりにマスコミで報道された。

 殿下の広域刑事警察機構のお手柄とばかりに庶民に報道されたのだ。


 実はこれで2例目の海賊退治なのだが、前回は完全に破壊して庶民目線で分かりやすい証拠が無かったのと、正直あれは失敗の部類に入る作戦だったため、わざわざ発表はしなかったのだ。


 今回も殿下は発表までは考えていなかったようだが、流石にただでさえ目立つ船が海賊船を連れてきたので、殿下に各報道機関から問い合わせがかなりの数に上り、混乱を避けるために正式に発表するに至った。


 最初に俺が無線で殿下に報告した内容を臨席の記者会見で捜査室長が発表した。


 ニホニウムでは大きく報道されて注目を集めた。

 王国全土にも報道されたようだ。

 こちらの方はそれぞれの星系で扱われ方は一様ではない。


 今回鹵獲した海賊船の本格的な調査は、お世話になっているドックで捜査室主導で行われた。

 当然首都星域内での海賊討伐だったこともあり、コーストガードからも人が派遣されて、地元警察と共同しての調査になった。


 また、捕まえた海賊達についても共同で捜査が行われ、地元警察から司法当局に送検される運びになっている。


 いずれは広域刑事警察機構だけで送検まで持っていくようになるかもしれないが、まだ俺らは準備室だ。

 正直法律的にも少々怪しい部分はある。


 そんなことを理解しているのか、端から捕まえた悪党に興味が無いのか捜査室長は他の海賊に関する情報だけを仕入れたら、残りは地元警察に任せたようだ。


 俺らの方は、別の有力情報が無い限り、しばらくこの辺りを中心に調査していくことになった。

 噂だった秘密の航路について現実味を帯びて来た。

 何もない所に海賊がそうそういるはずは無い。


 既に2隻の海賊との遭遇があったのだ。

 なぜあの辺りに海賊がいたかを調べないといけなくなり、負傷した二人の状況を確認して1週間後に再度調査に向かうことになった。


 うれしい事?に艦載機も無事に認可が下りたようで、『シュンミン』に搭載したが、肝心のパイロットの方がまだだ。


 このままだとマリアたちのおもちゃにしかならない危険はあるが、積まない訳にもいかず、とりあえず空いた時間を使って『シュンミン』に積み込んだ。


 中途半端に時間が空いてしまったが、先の宇宙海賊船を鹵獲した場所から調査を始めた。


 確かにこの辺りが怪しいとは思うし既に2隻の海賊船を始末した場所ではあるが、そう簡単に敵さんの全容は掴めない。


 そもそも、捕まえた海賊からも大した情報は得られなかったようだ。

 捜査室長も全力で尋問などしたようだが、捕まえたのが所詮野良の海賊で、この辺りにのこのこやって来る密輸船を狙ったものだそうだ。


 ということはこの辺りに探している航路がある筈なのだが、海賊からはその航路についての情報は得られなかった。


 捕まえたのが海賊でも下っ端ばかりなのが原因の様で、捜査室長からアイス機動隊隊長に、『今度捕まえるのなら下っ端は要らないから上を捕まえてくれ』との注文があったと俺に愚痴をこぼしてきたくらいだった。


 俺もアイス隊長の心境はよくわかるし、捜査室長のトムソンさんの気持ちも分かる。


 30人捕まえて来れば、その30人を調べないといけないが、所詮は下っ端、誰を調べても得られる情報には大したものは無い。

 しかも手間はしっかり30人分かかるのだ。

 トムソンさんからしたら手間ばかりかかる下っ端は連れて来るなと言いたいのだろう。


 しかし、現場となる敵船の中は本当の意味で修羅場だ。

 目の前で人が死んでいくのだ。

 そんな状況で、投降でもして来れば話は違うが、捕まればどちらにしても死しか見えてこない連中にとってそれこそ死に物狂いで向かってくる。

 それも上に行けば行くほどその傾向が強い。


 当然、機動隊と遣り合って死ぬのは上の方が確率的に上がってしまうのだ。


 今回出発に当たって、わざわざトムソンさんは俺にもその件についてお願いしてきたのだ。


 だからといって、今回見つけられるかどうか。

 あまり気長にもできないだろうが、調査していく。


 一回の出航で、最高でも1週間が限界だろう。

 これは、我ら乗員の耐久という面から出た数値だ。

 特に、消耗が早いのが機動隊員だ。

 元々機動隊の運用として考えて来たのが、捜査で見つけた敵拠点に乗り組むことだったので、機動隊員はそこまでのお客様という扱いだ。

 なので、機動隊員には個室が与えられていない。

 それこそ避難所に避難した人たちのように固い廊下に毛布一枚で寝ている状況になる。


 彼ら屈強な機動隊員はそれこそ必要ならそんな状況でも一月も二月も耐えることができるだろうが、そんな生活を通常とできない。


 そもそもこのような調査に連れてくる方がおかしいのだが、彼らの訓練と言われたので、連れて来たら、早速成果を出してしまった。


 この後色々と考えないといけなくなりそうだ。


「艦長、また退屈な仕事が始まりますね」


 マリアはそれこそあくびでも出そうな感じで俺に言ってくる。

 この調査中はほとんどの部署は退屈なルーチンが待っている。

 手隙の時間が増えるのだ。

 しかし、最初の調査で奇襲されたこともあり、彼らを休ませるわけには行かず、準戦で調査している。


 ただ待機するだけの連中には地獄だろうが、調査の主体である哨戒チームもまた違う意味で地獄だ。

 彼女たちの処はそれこそ必死でレーダー波の解析や画像認識ソフトのパラメータ調整をしながら僅かの見逃しも許さない仕事ぶりだ。

 そんな生活を2~3日もしたら、精神が擦り切れてしまう。


 この辺りも改善の余地がありそうだ。


 そろそろ艦内の不満と疲れのピークを迎える3日目の午後に、また怪しげな船を見つけた。

 近づいていくとこちらに攻撃してきたので、前回同様、応戦していくが、こちらは前回と違い小型なうえ、武装だけが強化された船の様で、こちらも安易に近づけずやや距離を取った状態での応戦となった。


 結論から言うと、主砲が一発当たって敵船は爆破したのだ。

 こうなると一番最初と同じように大した成果も期待できないが、デブリの回収をする羽目になる。


 疲れている上に、モチベーションも最低な状態での作業となった。

 俺の方は、就学隊員の船外訓練と割り切って前回と同じ作業をしていく。


 2回目となれば多少は慣れるのか、3時間で作業を終えることができ今回の調査を終えた。


 ニホニウムに戻り殿下に報告して終わりとなる。


 こんな生活をこの後5回も行った。

 そのうち2回海賊船と遭遇したが、どちらも野良ばかりで大した情報を得られないままニホニウムでの捜査を打ち切られることになった。


 結局俺らは噂にあった航路の痕跡だけは見つけたが、航路そのものの発見には至らなかった。


 捜査本部もニホニウムでの捜査を打ち切ることを決めた。


 今回ニホニウムでの捜査の打ち切りの理由として、海賊討伐に関しては十分な成果は出ているが、そもそもこの辺りの海賊討伐の責任部門はコーストガードであり、ここでこれ以上海賊討伐をしていくと色々と組織の軋轢が生まれそうだということと、情報室からもたらされた情報がきっかけだった。


 ここでの海賊討伐任務をここに拠点を置いている第二巡回戦隊に資料を引き継ぎ、俺らはレニウムに向かう。


 俺らが捜している隠された航路はここ首都星域とレニウム星域の間にあり、首都星域の反対側に当たるレニウム側からも探すことになった。


 それに先に掴んだ情報には無視できないものが含まれていたのもある。


 探している航路の反対側にあるレニウムのスラムでかなりの数の子供が攫われているという情報を得たのだ。

 どうもスラムで攫われた子供たちの人身売買にこの航路が使われている節が見えてきたのだ。

 この真相を探るべく、捜査室長のトムソンさんは捜査員を送り捜査していたようだが、割と組織的な海賊の影が見えてきたと言うので、殿下はニホニウムからレニウムに拠点を移して捜査することを決めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 人身売買か。売られる子供が乗ってても主砲で爆破されたら諸共死んじゃうんだよね
[良い点] 一件目は公表しなかったのですか。まあ、遺体の一つも残さず一掃は、いくら海賊相手でも世間体が悪いですからね( =^ω^) そのうち"公表出来なくなる"ことが増えたりして
[気になる点] 地の文が多すぎませんかね? もう少しキャラクター同士のやり取りの中で説明されないとちょっと読みにくいです。
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