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さあ、応戦だ

 

「カスミ、襲撃を受けた場所は分かるな」


「ハイ、直ぐに座標を出せますが」


「副長、停船してくれ。

 こちらの準備が整ったら戻るぞ」

「航宙士、指定座標までの航路設定を」


「了解しました」


「カスミ、先ほど攻撃してきた敵の場所の推定はできるか」

 俺はカスミと副長を艦長席まで呼んで、艦長席のパネルを使って反撃の計画を立てる。


「先ほどのレーザーの角度からして、この辺りだと思われます。

 方向は分かりますが、距離までは掴み切れておりません」


「副長、態勢が整ったら戻るぞ。

 そうだ、ケイトちょっと来てくれ」

 今度はケイトも呼んで、反撃の計画について話した。


「良いかケイト。

 これから攻撃されたポイントに戻るから、敵を発見したら直ぐに攻撃をするぞ」


「艦長、任せてください。

 しっかり攻撃してみます」


「しかし、大丈夫ですか。

 ほとんど奇襲のようになりますが、相手を確認せずに攻撃しても」


「相手から攻撃があったんだ。

 大丈夫だろう。

 一応、投降の勧告だけは無線でするけどそれだけでいいだろう」


「しかし心配ですね」


「ああ、心配はあるがこのまま逃げる訳にもいかないだろう。

 大丈夫だよな、ケイト」


「艦長も、メーリカ姉さんも心配しすぎ。

 大丈夫です。

 私に任せてください」


「余計に心配になってきたよ」


「艦長、同感です」


「艦長、艦内レベルが臨戦になりました。

 所要時間18分です」


「まだ掛かりすぎはしょうがないか。

 副長、計画通り戻るぞ」


 俺の命令で、『シュンミン』は反転して、元居た場所に向け移動を始めた。


「まもなく異次元航行に入ります」


「哨戒士、異次元から抜けたらすぐに探索を開始してくれ。

 通信士、こちらも同様に直ぐに降伏勧告を出してくれ」


「「了解しました」」


 それからすぐに異次元航行から抜け、元居た場所に戻ってきた。

 この先には小惑星帯が広がっており、レーダーでの船舶探査には不向きな場所だ。

 どうしても光学センサーに頼ることになるが暗い宇宙では赤外線センサーなどを利用して辛うじて見つけることができる。

 これも、センサーを扱う人間の技量によって雲泥の差が出るが、今は先ほどと違い、こういったことにやたらと長けているカスミが当たっているので、先ほどのように先に攻撃を食らうことも無かろう。


 先に、カスミが相手を見つけたようだ。

「艦長、発見しました。

 指定座標より23ポイント前方に赤外線反応、これは宇宙船の反応です。

 艦種識別は無理です」


「勧告の無線の反応はありません」


「まもなく標準主砲の射程に入ります」


「敵艦より発砲を確認

 これも本艦の後ろを過ぎて行きます」


「主砲の射程圏内に入りました」


「本艦も応戦せよ」


 ケイトにとってこの艦での初陣だ。

 やたらに張り切っているのが気になる。

 次々に指示を出して、その後に『目標に向け攻撃』と命令を発した。


 次の瞬間に主砲に続き、朝顔からも発砲が確認されたかと思ったら光子魚雷も発射管全部使って魚雷が敵に向け発射された。


 ちょっと待て。

 これは全弾命中するなら明らかにオーバーキルだ。

 魚雷の着弾が一番後になるが、下手をすると跡形もなくなるぞ。


「主砲のレーザー命中を確認。

 敵艦の後部に命中」


「続いて朝顔弾命中を確認しました。

 敵艦が真っ二つに折れたようです」


「え?

 敵艦が折れた?」


「ハイ、レーダー上で二つに折れるのを確認しました」


「魚雷はどうなった。

 敵艦が折れたなら、命中は無いな」


「いえ、敵艦が動いておりませんでしたから、全弾命中の予測です」


「副長、まずいぞ。

 跡形も無くなるぞ」


「ケイト、魚雷に自爆シーケンスを」


「え?

 自爆させるのですか」


「良いから早く。

 跡形も無くなると、どこから攻撃されたか分からないでしょう」


「4本全部ですか。

 今問合せしますね」


「何やっているの、このバカケイト。

 早く自爆させて」


 魚雷には各々違う自爆シーケンスが登録されており、個別に艦橋から自爆させることができる。

 しかし、そのシーケンスを知らなければ自爆命令を魚雷に送れない。

 ケイトは魚雷発射管制室に今発射された魚雷のシーケンスを問合せしている。

 しかし、その管制室でも、初めての実践だ。

 一々管理していなかったので、誰もそのシーケンスを知らなかった。


「あ、魚雷命中を確認しました。

 敵は多分完全に破壊された模様。

 レーダーでの解析ではデブリしか見つけられません」


 いくら艦橋から自爆させられる機能を持っていても自爆シーケンスを知らなければ、自爆させられない。 

 当然発射されたすべての魚雷は目標に向かって進む。


 最初のレーザー砲の攻撃で、目標の応戦能力は奪われていたようで、回避もされないので、全て命中となった。

 しかも運の悪いことに、朝顔の弾丸で二つに割れた船体の前後にそれぞれ2発ずつ魚雷が命中して、目標は船の体をなしていない。


 は~~、デブリとなった敵の身元が分かればいいが、どうしよう。


「艦長、敵の撃破を確認しました。

 どうしますか」


「どうするって、どうしよう」


「艦長、間もなくスクリーンに敵を確認できます。

 メインスクリーンに投影します」

 カスミは淡々と自分の仕事をしている。


 それで、メインスクリーンに映し出された映像には、完全にデブリとなった船の成れの果て。

 分子レベルで破壊されてはいないので、何らかの痕跡はあるだろう。


「現場まで行って、デブリをできる限り回収だな。

 とにかく相手の素性が分からないと報告もできない

 ということで、副長現場までだ」


「は、進路変更、目標座標……」


 メーリカ姉さんはかつて敵がいた場所の座標を読み上げている。


 普通の業務なら、何ら問題なくこなすようになっている我がクルーだが、いろんなところでポカをやらかす。


 まだ臨機応変に行動ができないので、奇襲された時など完全にお手上げなので、逃げ出してから態勢を整えたのだが、今回の場合、これも結果から言うと失敗と言えるだろう。


 逃げ出す前に敵の場所をある程度捉えていたので、異次元航行に入る前に、艦内の全ての武装に直ぐに発射できる準備をさせていたのが失敗の原因だ。


 ケイトの奴、何も考えずにすべての武装に一斉に攻撃命令を発したのだ。

 流石に意味の無い護衛用の側面パルサー砲には攻撃命令を出していなかったようだが……出していたの。

 ただ相手に届かなかっただけ、ああそう。

 もういいわ。


 事前準備も考え物だということね。

 と云うよりも、そもそも攻撃前に相手の場所が特定できるのなんて固定目標くらいだろう。

 今回が幸運だっただけの話だ、


 後部格納庫に待機しているアイス機動隊長を艦橋に呼んで、事情を話した。


「早速で申し訳ありませんが、あのデブリに対して調査をお願いできますか。

 とにかく相手を特定できるものを探してください」


「了解しました。

 しかし、艦長は手加減ないですね。

 完膚なきまでに壊しましたね」


 アイス隊長にも呆れられてしまった。

 今後に課題を沢山起こした初陣だったが、とにかく一人の怪我人も出なく、ある意味幸運だった。


 『シュンミン』は敵のいた場所で、停船して、周りにあるデブリの回収を始めた。


 アイス隊長率いる機動隊は5人ごとに分かれて周りに散っていった。


 遠くのデブリから調査するというので、艦の周りについては俺らも手伝う。


「副長、就学隊員全員にパワースーツを着用させて船外に集合だ。

 各々のセクションリーダーに引率を命じてくれ」


「何をなさるので」


「船外活動の訓練だ。

 周りにあるデブリを集めさせる」


「え、でもパーソナルムーバーの数が」


「大丈夫だ。

 ワイヤーを本艦に繋げさせて、自分の力で目標に向かう訓練にはもってこいの環境だろう」


「そうですね」


「講師は自分たちのセクションリーダーにさせる。

 絶対に、宇宙では迷子にさせるな。

 船外に出る前にリーダーとワイヤーで繋げておけよ」


「大丈夫ですよ、艦長。

 みんな臨検小隊の出身ですよ。

 宇宙空間での経験は誰よりも積んでいますから。

 ルーキーだったリョウコやニーナだって十分に私が鍛えてありますから、先の訓練のような失敗は無いでしょう。

 まあ今回は初めてですので、ラーニやカオリのような経験のある者たちを付けておきます」


「助かるよ。

 よろしくな。

 後悪いが、カスミ。

 付近の警戒と同時に、あいつらも注意してくれ。

 もし飛ばされるようなことがあればアイス隊長に頼んで保護をお願いするから」


「了解しました……が、艦長はどちらへ」


「艦橋にも就学隊員はいるだろう。

 そいつらの引率だ」


「え、艦長が自ら」


「お気を付けて」


 艦橋にいる部下たちは俺が船外活動に行くのを気に入らないのか文句を言われる中で唯一副長のメーリカ姉さんだけが快く送り出してくれた。


「ありがとう副長、艦橋を頼むな」


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― 新着の感想 ―
[一言] >これも本艦の後ろを過ぎて行きます ん~この世界の武器の発展がよくわからないな。 宇宙戦において残弾管理&弾着速度の関係で実体弾がメインでなくなるのはわかるんだよ。 そこにレーザー兵器での高…
[良い点] 真っ二つって(^^) 非装甲区画にピンポイントでクリティカルヒット? まあ、捕まって臨検隊員仕込みの『尋問』されるよりは一瞬で楽になったのが不幸中の幸い❓️
[気になる点]  一部台詞が重複しているところがあるんですが……良いのでしょうか?(^_^;)
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