メンバーの役割決定
「それでしたら、待ちましょう。
………
ただ待つのもなんですから、うちの連中を紹介しますよ。
メーリカ姉さん、ケイトとマリアを呼んで、ここに来てくれないか」
「分かりました艦長代理」
「艦長代理??
ブルース中尉は艦長なのでは」
「ええ、先ほど殿下から辞令を頂きましたので、艦長になりました。
しかし、あいつらには今の今まで会っておりませんから知らないのでしょう」
「そういうことですか………!
もしかして、ここでの足止めもそれが原因では?」
「は!
そうかもしれませんね。
あいつらでも知らないのですから王宮警備の人には分かりませんよね。
だとしたら頷ける話です。
艦長代理以外は通してもらえそうにないでしょうから、艦長に昇進した私は該当者でなくなっていたのでしょうね。
これもお役所仕事の弊害でしょうかね。
あ、シーノメ主任がいらしたようですね」
メーリカ姉さんがケイトとマリアを連れてきた。
「紹介します。
まだ正式に役目を決めておりませんが、うちの副長のメーリカ少尉です。
また、こちらには今後攻撃主任を任せるつもりのケイト准尉で、そちらは機関を任せるマリア准尉です。
この三名がうちの士官です。
その後は後程紹介していきます。
メーリカ少尉、ケイト及びマリア准尉。
こちらは殿下の持つ航宙クルーザーの船長をしているフォード殿だ。
この後『シュンミン』の試験航海に同行してくださる」
「これは、皆さま方。
今ブルース艦長に紹介にあずかりましたフォードです。
よろしくお願いします」
「メーリカ姉さん、今艦長って言わなかった」
「マリア、ちょっと黙っていて。
……
失礼しました。
副長の役目を仰せつかっておりますメーリカです」
メーリカ姉さんが挨拶をしているとゲート奥からシーノメ主任が一人でやってきた。
「ブルース艦長代理。
どういうことなのでしょうか」
俺を見つけるとすぐにシーノメ主任が俺に聞いてくる。
「どうも、艦長に出世した私は通してもらえ無さそうでしたので、シーノメ主任にご面倒をおかけしているようです」
「へ?
それは……」
「先ほど殿下から辞令を頂きまして、艦長にしてもらいました。
それが原因なのでは」
「は………
すみませんでした、ブルース艦長。
私の指示がまずかったようですね。
おい、この方たちは私が身分を保証する。
お通ししろ。
それと乗員が戻るから、ここの警戒レベルを通常まで下げる。
良いな」
ゲートのセキュリティ担当の者たちにシーノメ主任が新たな命令を発していた。
「やれやれ、やっと通れるね」
メーリカ姉さんにマリアが愚痴を言いながらゲートを通っていく。
ゲート前でちょっともめていたので、フォード船長のお連れの部下たちも合流できたし、サーダー主任も助手を連れてやってきた。
ちょうど良かった。
ここで揉めていたので、とりあえず全員と合流ができた。
俺は簡単に集まった人たちに挨拶をしてからみんなを連れてゲートをくぐった。
艦に入るとすぐに俺はメーリカ姉さんに乗員全員を後部格納庫に集めてもらった。
幸い全員で移動していたので、集める手間も無い。
後部格納庫に集めた乗員に対して、俺はこれからのことについて話をしてから、フォード船長やサーダー主任たちを紹介しておいた。
先ほど、士官の三人にはフォード船長を紹介したが、ここで乗員にはまとめて紹介を済ませておきたかった。
今後の予定としては、明日に殿下が再度訪問され、全員に辞令を交付されることと、補給が済み次第、首都宙域を離れての試験航海に出ることを話して聞かせた。
そこで、いったん全員を解散させたが、ゲストの部屋を用意しないといけないので、とりあえずゲストを士官食堂に当たるラウンジに連れて行った。
元々がメーリカ姉さんからして士官食堂に籠って自分たちだけが良い思いをしようという考えが無いので、ここもほとんど使われていない場所だ。
有効活用ができて良しとしよう。
「ここが士官食堂に当たる場所です。
報告を聞いているかはわかりませんが、廃品の利用で、豪華客船からラウンジ部品を使用した関係で、このようになっております。
皆様にはここをご自由にお使いください。
この後皆様の個室に案内させます」
「艦長。
聞いてはいたが、この船は凄いな。
私のクルーザーよりもラウンジスペースはあるし、ここなら簡単なパーティーを開いても誰からも文句は出そうにないよ。
これは殿下も良い買い物をしたと思う」
「ここを自由に使えるんだって。
ならここで資料を沢山出して研究していても良いかね」
「ええ、でも、ここを利用される方たちと協力しあってくださいね。
メーリカ姉さん、船長と主任をスイートにお連れするわけには行かないよな」
「ええ、殿下のご使用するお部屋の他にもう一部屋ありますが、そこよりも若干落ちますが私たちが使っているデラックス仕様の部屋もまだ余っておりますからそちらにお連れしましょう。
正直あそこは私でも贅沢過ぎる部屋だと思っているのですから、クルーザー船長クラスなら納得していただけるかと思いますよ」
「おお、それならそうしよう。
しかし、士官用に作った部屋はいくつあるんだっけ」
「デラックス仕様の部屋は20、1等客室の部屋が40、2等が60です。
それに多目的ホールが3つあります。
乗員を2/3にしておりますから居住空間には余裕がありますしね」
「では、船長たちを案内しようか。
悪いがマリアが付いてきてくれ。
俺もまだ使っていない部屋については正直不安だ」
「艦長……だっけ。
分かりました」
「では、フォード船長、サーダー主任。
皆様の個室にご案内します。
今日からでもそこをお使いください」
と言って、今回のゲストを士官用の個室に連れて行ったが、お二人から断られた。
とにかく豪華すぎるという話だ。
いくら俺が士官の三人も使っているし、何より艦長である俺の部屋などもっと酷いと説明しても納得してもらえず、結局下士官の使用する1等客室にお二人が、助手たち彼らの部下は2等客室に落ち着いた。
何でゲストの部屋を宛てがうだけでこんなに疲れるのか。
とりあえず、個室の入り口にあるモニターにそれぞれの名前を登録してから、先ほどのラウンジに戻ってきた。
「船長、主任。
必ず誰かを付けておきますので、ご自由に探査してもらって結構です」
「艦長。
なら、早速で悪いが、艦内を案内してもらえるかね」
「マリア、悪いが今日は君がお客様を案内してくれ。
マリア自慢の場所を自由に案内して説明するが良いよ」
「え?
いいの。
分かりました。
では、皆さま。
私が艦内を案内します。
武装管制室から機関室まで、どこでも案内しますし、私が改装もしておりましたから、ほとんどの疑問にもお答えできるかと思います」
「おお、それは助かる。
ではお願いしようか」
そういうと、マリアはゲストを連れて艦内のどこかに向かった。
「メーリカ姉さん。
悪いが艦長室まで一緒に願えるかな」
「艦内配置ですね」
「ああ、流石に辞令も出たし、何より代理も取れてしまったんでな。
きちんとしないとまずい」
「分かりました」
俺とメーリカ姉さんはその後、一緒に艦長室にこもって、人事資料を前に相談を始めた。
副長と、攻撃主任、機関主任は既にあいつらしかいないのだが、それ以外について決めて行かないといけない。
何より、うちにはルーキー以前の就学隊員の二等宙兵しかいないし、なんちゃっての一等宙兵や、下士官が多い。
そいつらの配置が頭痛い。
二人で艦長室にこもってから3時間かけてようやく出来上がった。
俺らの艦の布陣が決まった。
「当然艦長は俺で、副長にメーリカ姉さん。
それに、攻撃主任にケイト、機関主任にマリアは決まりだな」
「そうですね。
それ以外には無いでしょうし、何よりマリアの任務場所を艦橋にできるのが大きいですね」
「確かにあの二人だけは目の届く場所に置きたいよな。
決して能力的には不満は無いがね~~」
「あとが問題ですね。
次にカスミですが……」
「ルーキー扱いだったリョーコをカオリやアイに付けておけば問題無いでしょう。
2等宙兵については各部署をローテーションにしておけば良いでしょう。
なにせまだ彼らは就学隊員ですからね」
「ローテーションは今すぐに決める必要はないが、そうだ、あの暇そうな二人に決めさせよう」
「それがいいですね。
では決まった布陣は殿下にお伝えしておきますね」




