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話はついた


 俺はマークを連れて先ほど来た内火艇発着ロビーに戻ってきた。

 俺の艦にまで回ってくれる内火艇を探したら、軍艦を中心に回る内火艇を直ぐに見つけることができた。


 そのまま二人で内火艇に乗り航宙駆逐艦『シュンミン』に戻った。


 俺はマークをとりあえず『シュンミン』の艦橋に案内した。


 「あれ、艦長代理。

 お早いお帰りで。

 指揮権を返しましょうか」


 「いや、それは良い。

 悪いが今日は頼む」


 「分かりました。

 では引き続き私が……おや、気が付きませんで。

 お客様でしたか」

 

 「ああ、俺の士官学校時代の同期で友人のマーク准尉だ」


 「マーク・キャスベル准尉です。

 少尉殿」


 「これは失礼しました。

 現在この艦の副長的な位置づけにおりますメーリカです。

 首都宙域警備隊 本部総務部付き航宙駆逐艦『シュンミン』所属になります。

 少尉です。

 よろしくマーク准尉」


 「これはご丁寧に。

 こちらこそよろしくお願いします。

  ………

 どうやら本当のようだな、ナオが艦長代理という話は」


 「あれ、信じていなかったの」


 「当たり前だ。

 あんな話なんか誰が信じられるかよ」


 「やっぱりそうだよな。

 俺もそう思う。

  ………

 そうそう、マーク。

 艦長席に座ってみるか」


 「良いのか、俺が座っても」


 「ああ、こんなオンボロでよければな。

 そう言えば、俺、この間あの航宙フリゲート艦の艦長席で指揮を執ったぞ」


 「そ、そうなのか。

 それじゃあ、俺がここに座っても良いよな。

  ………

 しかし、やっぱり憧れるよな、自分の指揮する船は。

 それよりさっきの話だけど、どういう事だ」


 「ああ、前の作戦で俺らだけで海賊に対処しないといけなくなってな、……」

 そこからしつこく聞かれたので、一応ここだけの秘密ということで、あの時のことを説明しておいた。

 第三王女殿下もほとぼりが冷めたら官報に乗せると言っていたし、別にそれほどの秘密じゃないだろう。

 話が広がるとみっともないだけの話だ。

 「しかし、運が良かったのか悪かったのか分からない話だな」


 「ああ、でも、良い経験をしたと思ったよ」


 「そりゃそうだ。

 軍に任官して数年やそこらで航宙フリゲート艦の艦長席で指揮を執る事なんか経験できることじゃないよ。

 それを一月もしないで、経験するなんて誰が信じるかよ。

 まあいいか、それにしてもすごいな。

 何が幸いするか分からない典型というやつだよな。

 同期の皆はナオの配属先がコーストガードだと聞いて同情していたくらいだからな。

 ありがとう、もう十分に堪能したよ」

 そう言うとマークが艦長席から出ようとしていた。


 「あ、そうだ。

 ここの通信設備なら十分にどこでも通じるぞ。

 さっき言っていたドックに連絡取れないかな。

 こっちから連絡すると言っていただろう」


 「ああそうだな。

 ここに繋げてもらえるかな」

 マークはそう言うと彼の情報端末を俺に見せて来た。

 そこには連絡先が書かれている。


 「カスミ、ここに連絡取れるか」


 俺は無線の前にいたカスミに声を掛けた。


 「艦長代理、ちょっと見せてください。」

 カスミはそう言いながら艦長席にやってきた。


 「マーク、彼女にこれを見せても良いかな」


 「ああ、構わないよ」


 「ありがとうございます、マーク准尉」

 「悪いな、この船の運命が掛かっているんだ。繋げてくれ」


 「それじゃあ、ここで繋げますね、艦長代理」

 カスミがそう言うと、艦長用のコンソールパネルを操作して、目的のドックに無線をつなげた。


 「マーク准尉。

 繋がりましたからお話しください」


 「ああ、ありがとう」

 マークがそう言うと何やら先方と話し始めた。

 コロニーで話を聞いた時に知り合いのようなことを言っていたが、どうも本当の様で、かなりご無沙汰していたところに挨拶から始めた。


 何やら一通り話をした後にマークは俺に話を振ってきた。


 「親方がこの船の責任者に話をしたいと言っているが、ナオでいいのか」


 「え?

 あ、俺」


 横で聞いていたメーリカ姉さんが「あんたしかいないだろう」って言ってきたので、とりあえず出てみた。


 ドックの経営者と云うより親方と云った方がよさそうな人だった。


 「何か、お前の船の整備をしろと言うのか」


 「ええ、うちの連中も手伝いますけど、3か月でA級整備をしないといけないんです」


 「銭は持っているのか」


 「へ?」


 「予算はあるかと言っているんだ。

 国の仕事だろう。

 予算がきちんとあるのか無いのかそれによって色々と変わるからな」


 「ええ、30億ゴールドの予算があります」


 「全部好きに使えるのか」


 「その辺りにつきましてはうちの事務方をそちらにやりますので、聞いてもらえますか」


 「そうか、最後だがその整備に中古再生部品は使えるのか」


 「ええ、好きに使っても良いですが、こちらからもお願いがあります」


 「お願いだと、いったい何だ」


 「うちにメカいじりの好きなのがいるのですが、そいつらも使ってもらえますか。

 出来れば鍛えてもらえると嬉しいのですが」


 「それを3か月でやれと」


 「できればですが」


 「まあ、それはそいつらと会ってからだな。

 いつ会えるのか」


 「直ぐに手配しますので明日には事務方をそちらにやります。

 その場で仮契約をして頂けたら直ぐにでも船をもってそちらに行きます。

 と云うか、こちらで整備ができ次第、そちらに向かいますが、なにせ海賊からの鹵獲品ですので整備が全くされておらず、速度が出せません。

 2~3日はかかると見てください」


 「よし分かった。

 お坊ちゃんからの依頼でもあるし、その仕事を受けよう。

 直ぐにでも事務の奴をよこしてもらおうか」


 「ありがとうございます。

 直ぐに連絡をしてそちらに向かわせます。

 首都にいますので、今日中にはうかがえるかと思います」


 「ああ、それじゃあ、待っているぜ」


 親方との話は付いた。

 仕事を受けてもらえることになった。

 隣で聞いていたマークは何故だか知らないがかなり疲れた顔をしている。


 「マーク、俺の部屋で少し休もうか」


 「ナオの部屋?

 この船にあるのか」


 「今、艦長室を使わせてもらっている。

 そこで少し休もうよ。

 案内する」


 「そうだな。

 こんな機会でもなければ艦長室で休めることも無いしな。

 頼めるかな」


 「ああ、こっちだ」

 俺はマークを連れて艦長室に向かうために艦長席を立った。

 艦橋を出る前に俺は艦橋で指揮を執っているメーリカ姉さんに一声かけた。

 「あ、メーリカ姉さん。

 俺、マークと一緒に艦長室にいるわ。

 あ、それとマキ姉ちゃん、違ったマキ主任を呼び出しておいてくれないか。

 艦長室で話すからそっちに繋いでほしい」


 「分かりました。

 後で誰かにお茶でも持たせます」


 「お、気が利くね。

 ありがとう」


 俺たちは直ぐ傍にある艦長室に入った。

 簡単な応接があったので、マークをそこに座らせて、ちょうど連絡が付いたマキ姉ちゃんと話を始めた。


 「マーク、悪いがちょっと待っていてくれ。

 さっきの件であの親方にうちの事務方を向かわせるからな」


 「ああ、俺に構わないで良いぞ」


 「ありがとう。

  ……

 マキ姉ちゃん、あ、つい元に戻るな。

 マキ主任。

 聞こえるか」


 「はい、艦長代理」


 「ドックの件だが、話は付いた。

 申し訳ないが直ぐに先方のところに行って仮契約をしてほしい。

 場所は、え~と……」


 「ニホニウムの中心地から少し外れた工業団地内にあるよ」


 「え~と、今の話聞こえた?

 住所は情報端末に送るからすぐに向かってほしい」


 「分かりました。

 これから高速艇で向かいます」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 任官直後に艦長なんて、まずないですよね。運がいいのか悪いのか… 某木馬の艦長「民間人ばかりだし、赤くて速いのに目を付けられるし、ほんと、大変だった…」 某外宇宙航行練習艦艦長「子供13人…
[一言] 魔改造楽しみです。超光速航法のワープや必殺の波動砲もどきが有ったらいいなぁw それとメンバーにはロボットか知的宇宙生命体が加わってシュンミンに接続か同化す ることにより船の運航を補助、その能…
[良い点] ミレミアムファルコン号しかりタートル号しかり、見てくれ名前はいまいちなのに、中身は凄いはSFロマンですね~エンタープライズみたいなバリバリ最新鋭艦より古い船体を魔改造宇宙戦艦ヤマトのほうが…
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