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事情聴取


 それから僅か30分でチューブが渡されて、どんどん人が入ってきた。

 艦橋に入ってきた兵士が突然割れて中から偉そうな人が前に出て来た。


 俺がその人の前に出て、敬礼して挨拶を始める。


 「第三巡回戦隊航宙フリゲート艦『アッケシ』所属第二臨検小隊 隊長のナオ・ブルース少尉です」


 俺の挨拶を受け、相手も敬礼後に身分を明かした。

 彼は見るからに偉そうだ。

 階級章が既に将官クラスだ。 

 そう、提督と言われる部類の人が何故と思いたい。


 「ご苦労だった。

 貴殿たちの活躍は既に第一巡回戦隊から報告を受けている。

 私は第一機動艦隊旗艦『ドラゴン』艦長のストーン少将だ


 いきなり大物がやって来たが、どうするつもりだ。

 艦橋に集めた連中がざわつきだす。

 こんな大物そうそうお目にかかれるようなものじゃない。

 年初の挨拶の時にモニター越しに見れるかどうかの大物だ。


 「ブルース少尉、旗艦で総監がお待ちだ。

 悪いが一緒に来てもらう


 「ハ、閣下。

 他の兵士はどうしましょうか」


 「この艦を私のところで接収するので、引き継ぎだけを残して退去……と言ってもここではそれもできないか」

 

 すると、メーリカが出てきて、閣下にこう言った。

 「メーリカ准尉です。

 ブルース少尉の元で副官を務めております。

 引き継ぎですが、ここと機関室とがありますので、全員で引き継ぎをやらせていただきます」


 「おおそうか、それならぜひそうしてくれ。

 そうだな、引き継ぎが終わり次第、私の副官をよこすから彼の指示に従ってくれ。」


 「了解しました」


 「では少尉、行こうか」


 俺は旗艦の艦長に続いて、繋げられたチューブを通り、旗艦『ドラゴン』に向かった。


 この船はかなり大きい。

 それもそうで、コーストガード最大の船であり、割と最近まで宇宙軍で働いていた船だ。

 宇宙軍では航宙超弩級戦艦や、航宙戦艦といったこれよりも大きな船はあるが、それでも宇宙戦艦に続く大きさの航宙巡洋艦というクラスの船だ。


 このクラスの船になると居住空間にもかなりの余裕がある。

 俺は、艦橋に続く作戦司令室という会議室のような艦隊参謀が詰める広めの部屋に続く、第一機動艦隊司令官であり、コーストガードの総司令官でもある首都宙域警備隊総監が詰める部屋に連れて行かれた。

 いわばコーストガードにおける最高位の人の宇宙における執務室だ。

 ちなみにこの人は普段は首都にある本部に立派な部屋を持っており、よほどのことが無い限り宇宙まで出てこない。

 前にうちのカスミが言っていたようにこの船は単独では動かさない。

 確かに単独では動かされることは無いのだが、単独でのお留守番は割とよくある。

 また、副司令官だけを乗せ、司令官は本部でお留守番なんてことも頻繁にある。

 いや、そちらの方が多い位だ。

 そんな訳で、本当に稀にしかこの部屋は使われないとか。

 本当に無駄な使い方をする。

 これも首都宙域という狭い範囲だけを活動範囲とするためにできる話だ。

 出動しても、ほとんど数日の航海なのだから、中には日帰りなんてことも多々あるのだ。

 その辺りが軍との大きな違いだ。


 逸れた話を戻し、ナオは艦長に連れられて総司令官室に通された。


 中に入ると、本当に広くとられている部屋だ。

 先ほど通ってきた作戦司令室という広い部屋の半分くらいの広さはある。

 作戦司令室は参謀や職員など10名以上常時詰めているのに対して、この部屋は総監一人だ。

 秘書がいることが多いとは聞いているが、それでも広い。


 「総監、お連れしました」

 「オイオイ、艦長。 

 宇宙では総司令官だよ」


 「これは失礼しました。

 彼が第二臨検小隊の隊長です」

 

 艦長から降られたので、ナオは敬礼をして名乗った。

 「第三巡回戦隊航宙フリゲート艦『アッケシ』所属第二臨検小隊 隊長のナオ・ブルース少尉です」


 「君が我らを悩ませたあの少尉かね。

 まあいい、掛けたまえ」

 ナオは総司令官に勧められるまま室内の応接スペースにあるソファーに腰を掛けた。

 宇宙に来て応接スペースがあるのがすごい。

 流石組織のトップの部屋だ。


 総司令官がナオに座るように勧めた後に自身も対面に座った。

 そこでおもむろに口を開きナオに聞いてきた。


 「一応、第一巡回戦隊から君たちのことは報告を受けている。

 また、君たちが海賊に向かった経緯も上官たちからも報告は受けた。

 まあ、確認という意味しかないが君からも詳しく状況を聞いておきたい。

 構わないかね」

 一応質問して良いかと聞いているが、ナオには選択権は無い。


 「ハイ、はじめからというと少々長くなりますが、構いませんでしょうか」

 

 「ああ、このことはしっかり調べておかないといけないことだからな。

 報告書だけでは済まされないまでにことが大きくなっているのだ」


 そう言われたので、ナオはアッケシのダスティー艦長から突撃命令を受けたところからマリアが変な武器のようなもので海賊たちを倒して航宙駆逐艦を占拠したところや、その後に向かってくる航宙フリゲート艦を幸運から鹵獲できたことを偽りなく丁寧に報告した。


 「やはりそうか……」

 なんだか首脳陣が頭を抱えている。

 何か問題でもあるのか、正直俺には分からない。


 「君たちの言い分はよくわかった。

 君たちは我々と一緒に首都星に向かってもらう。

 多分、早い段階で、君たちには辞令が出される。

 職場の異動だ。

 覚悟しておいてくれ。

 以上だ」


 最後に何やら相当きな臭いことをつぶやかれたのが非常に気になる。

 別に出世は望んではいないが、事務職に回されるのだけは勘弁してほしい。


 俺は艦長に連れられて、部屋を出た後に士官食堂に案内された。

 そこには既にうちの連中も集められている。

 

 「悪いが君たちはここで待機してくれ。

 どうせ数時間の辛抱だ。

 この船は直ぐにフラーレン宇宙港に向かう」


 艦長は俺にそう言うと、自身の仕事に戻っていった。

 艦長が俺の傍から離れると、メーリカが俺のところまできて報告をしてくれた。

 

 「航宙フリゲート艦の引き継ぎは無事終了しました」


 「何も問題は出なかったか。

 例えばエンジンがどうとか」


 「ああ、マリアの仕出かしたことか。

 それはマリア自身がごまかしていたぞ」


 「マリア、何か言われたか」


 「いえ、なにも。

 ただ酷い壊れ方だなとは言われましたが」


 マリアの答えに俺はほっと胸を撫で降りした。

 どうにかごまかせたらしい。

 しかしこの先どうなるのかだな。

 あ、そうだ。

 総監に異動の話をされたんだ。

 みんなには一応伝えておこう。


 「隊長、上との話はどうでした」


 「ああ、俺らのしてきたことを報告しただけだ。

 相当に困ったような顔をされたがな。

 それよりも最後に気になることを言われたぞ」


 「気になる事」


 「ああ、本部に着いたら異動の辞令が出そうだ」


 「え?

 どこにですか」


 「そこまではさっぱり分からないよ。

 ただ、直ぐにでも異動させると言われただけだ」


 俺らの心配事に全く関係なく旗艦『ドラゴン』は旗下の艦船を引き連れてほとんど最速で首都のフラーレン宇宙港に向かった。


 艦長が言っていた数時間というよりも早く、2時間弱で到着したのには驚いた。

 なんでもこの宙域では使われることの少ない異次元航行まで使っての移動だ。

 相当に慌ただしく事態が動いているようだ。


 港に着くと俺らは直ぐにでも本部に呼び出しがあると思っていたのだが、基地に併設されている軍の宿泊施設にほとんど軟禁状態のように留め置かれた。

 そこは軍の施設とはいえ、首都にある高級ホテルと何らそん色ない施設で、居る分には快適な部屋なのだが、いかんせん、ここに連れて来られた経緯が経緯なので、不安しかない。


 結局ここに軟禁されてから2日目に本部よりの呼び出しがあった。


 俺はみんなを連れて、前に辞令を貰ったあの本部に向かった。


 訪問の目的を説明するために受付に行くと、なんと俺らを出迎えてくれたのが前に俺を出迎えてくれた受付嬢のサーシャさんだった。


 「あれ、サーシャさんだったけ。」


 「あ、ブルース少尉。

 お話は伺っております。

 11階のC会議室においで下さい。

 皆様もご一緒でとのことでした」


 「あ、そこって前に呼ばれた……」


 「ハイそうです。

 場所は覚えておりますか」


 「ああ、大丈夫だ。

 そこから行けばいいのかな」


 「ハイ、エレベーターで向かってください」


 「ありがとう、サーシャさん」


 俺らは連れ立ってエレベーターホールに向かった。

 「隊長、隊長。

 今の人誰?」

 「隊長の恋人なの?

 それともガールフレンド?」

 「隊長も隅に置けないね」

 などなど姦しいこと甚だしい。


 「俺が初めてここに来た時に親切に案内してくれた受付嬢だ。 

 しかも、会ってから一月もたっていないよ。

 少なくともそれ以降はお前らしか会っていないから覚えていたんだ。

 彼女は受付のプロなんだろう。

 一月くらいでは忘れないだけだろうな」


 そんな感じでワイワイと会議室に向かった。

 ここでも前の時のようにドア前でノックすると中から返事があり、そのまま全員で中に入っていった。



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― 新着の感想 ―
良い意味でも悪い意味でも受付嬢に覚えられそうwww
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