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マリアたちの暴走


 それからかっきり1時間後にグーズ少尉を含め第一巡回戦隊はこの宙域から去っていった。


 幸いと云うか、仕事をしっかりとしたというか、第一巡回戦隊の人たちは、駆逐艦の方を封印をして、立ち入りを禁止してくれたので、こちらが分かれて駆逐艦の面倒を見る必要が無くなった。

 さっきまでと全く変わらず、フリゲート艦の方で時間を潰す仕事を始めた。


 本当にやる事が無いのだ。

 艦橋もメーリカと代わってもらい、俺も艦内探検と暇をつぶすことにした。

 そのことを話すとメーリカから一つの依頼が入った。


 「隊長、艦内を散歩して暇をつぶすのなら、悪いが機関室からマリアを連れて一緒に行ってくれないか」


 「なんでだ」


 「正直、これ以上マリアに機関室に入れておくには少々不安がある。

 艦内調査とかの名目があればそんなに嫌な顔をせずに隊長に付き合ってくれるさ」

 メーリカにそう言われて、俺も思い当たる節があった。

 艦内電話でマリアと話すときにただでさえ高いテンションが必要以上に高くなっているのが気になったのを思い出した。


 「確かにそうだな。

 分かった、これからマリアを連れて艦内巡回に出る。

 艦橋の指揮権をメーリカ准尉に移譲する」

 

 一応仕事中なので、ここはきちんとしておく。

 まさか暇なので、艦内を散歩しに行くとは言えないからな。

 その辺りの塩梅もきちんと心得ているメーリカも敬礼して返してくれた。

 「これより、艦橋の指揮権を隊長より預かります。

 ケイト、バニーを連れて隊長を護衛してくれ」


 「「了解」」

 

 俺はケイトたちに守られるように艦内の中央部にある機関室に向かった。

 機関室の傍までくると、中からは大きな音がしている。

 

 「なんだ?

 機関室ではする事が無かった筈だが」


 「あ~~。

 またマリアが暴走している~~」

 ケイトがそう叫ぶと、急ぎ機関室の中に入っていった。

 俺もケイトに続いて中に入っていった。


 「な、な、おま、お前ら何しているんだ」

 マリアがカスミと一緒に、メインエンジンの周りで、エンジンをかなり強引な方法でバラしていた。


 「カスミ、お前はマリアの暴走を抑える筈じゃ無いのか」

 今、目の前で二人はとんでもないことをしていた。

 パワースーツを着ていることを良いことに、そのパワーを遺憾なく使って、壊れているメインエンジンの筐体を壊していた。


 先に部屋に入ったケイトにより、船が爆発する前にマリアを抑え込むことに成功していたので、俺は近くにいたカスミに今の作業を止めるように命令を下した。


 「暇なのがいけなかったようだな。

 二人に命令だ。

 これから私と一緒に船内の巡回に回る。

 すぐに巡回に出るぞ」


 「ええ~、こんな機会はまず無いよ。

 せっかくのチャンスだったのに」


 「そうですよ、隊長。

 もう壊れていることだし、何より私たちに時間もあるから、もう少しだけやらせてほしいです」


 「だからその時間はお前らには無くなったんだよ。

 俺から命令が出ただろう。

 自由時間は終わりだ」


 「そんな~」


 「当たり前だ。

 下手すりゃこの船ごと爆発するぞ。

 そんなのを見逃せるか」


 「そんなへまはしないもん」


 「良いからすぐに巡回に出るぞ」


 そう言って二人を無理やり機関室から出した。

 船首の方から順番に巡回するつもりだったので、船首まで歩く間二人は俺に向かってブツブツ言ってくる。

 本当に往生際の悪い連中だ。

 「だいたい軍艦のエンジン回りは整備個所を除き極秘じゃなかったっけ。

 軍人でもないお前らは絶対に見てはいけないはずの処だ。

 下手しなくとも処罰対象になるぞ」


 「そんなの分かっています。

 でも、この船は王国の軍艦じゃないですよ」


 「それはそうだが、全くの白とは言えないだろう」


 「う、う、うう~。

 確かに、私の記憶では数年前からキャスベル工廠で作られているフリゲート艦ですが、軍の仕様とは少し異なりますから、多分ですが、王国の同盟国へ輸出されたものじゃないでしょうか。

 軍の物でなかったから絶対にセーフです」


 「だったらなおさら悪いわ。

 良いから巡回するぞ。

 これ以上悪いものが出ないようにしっかり見て回るぞ」


 不満そうな二人を加えて、船内巡回の続きを始めた。

 しかし、先ほどカスミから出た言葉は頂けない。

 むしろ不吉だ。

 彼女の言によれば完全にこの船は外交案件になる。

 

 海賊が鹵獲した段階で、所有権は輸出先から離れるが、それでも色々と問題が出そうだ。

 学校を出たばかりの俺でも厄介ごとだと分かるのに、上層部はこの事実を知ればさぞ頭を抱えることだろう。

 ………あ、となると俺らにもとばっちりが。


 お前な~、マリアの仕出かしたことがさらに状況を悪化させなければ良いが、俺はこの先が心配になってきた。


 そんな暗澹たる気持ちで歩いていると、艦内放送が入る。

 「隊長、隊長、聞こえますか」


 「マリア、近くの電話を取ってくれ」


 「ハイ、これをどうぞ」


 「マリア、ありがとう。

 で、聞こえるぞ、メーリカ准尉か」


 「ハイそうです」


 「何かあったのか」


 「それがまだよくは分かりませんが、大型の船がこちらに近づいてきます。

 至急艦橋にお戻りください」


 「ああ、分かった。

 これから向かうが、悪いが全員を集めておいてくれ」


 「ハイ、分かりましたが……

 何故でしょうか」


 「この辺りはほとんどルチラリアだ。

 近づいてくるのが海賊などの敵性勢力とは考えられない。

 だとすると、俺らに対して命令権の有る連中が乗る船だ。

 大方第一機動艦隊だろう。

 そうだとすると、このエリアに到着次第、あちらから乗り込んでくるか、呼び出しがかかる筈だ。

 そこでグズグズでもしようものならその後がどうなるかは容易に想像がつくだろう」


 「ハイ、分かりました。

 そうですね、直ぐに集めます。

 機関室はどうしましょうか」


 「機関室に人を置く必要はもう無いよ。

 バッテリーだけでも間に合いそうだし、それよりも第二第三のマリアが出ないとも限らない」


 「え?

 やはり仕出かしていましたか」


 「ああ、そっちに行ったら教えてあげるよ。

 今第一主砲管理室前だから艦橋までは時間はかからないだろう。

 これから艦橋に向かう。

 以上だ」


 「聞いた通りだ。

 すぐに艦橋に帰るぞ」


 「隊長、酷くないですか。

 何です、第二第三のマリアって。

 なんだか私が悪の代表のような言い回しは無いでしょ」


 「それだけのことをしでかしていたんだよ。

 今から頭痛いよ。

 これから会う上の方たちにどうやってごまかせばいいんだよ」


 「え?

 まずいことになるの」


 「わからん。

 ほれ、艦橋に着いたぞ」


 「あ、隊長。 

 あれです」

 メーリカがモニターに映った船をさす。

 「あの船の種類や所属が分るか」

 

 「あ、私分かります」

 そう答えたのはカスミだ。

 彼女はどうも戦艦フェチのようだ。


 「あれ、うちの旗艦ですよ。

 第一機動艦隊の旗艦『ドラゴン』です。

 航宙巡洋艦のドラゴンですよ。

 あれ、一隻だけで行動することはないので、あの後にどんどん来ますよ。

 第一機動艦隊の艦船が」


 「あ、本当だ。

 次が見えた」


 「あれ、2番艦の航宙イージス艦の『タナミ』ですよ」


 その後、第一機動艦隊の艦船が現れ、カスミのテンションが最高潮に達した。

 興奮して倒れないといいが。

 そうこうしていると、無線が入った。


 「あ、無線通じたんだ」


 「先ほどから通じるようになったようです」


 「どうしますか、向こうから呼びかけが入っていますが。」


 「バカなにやっているんだ。

 すぐに応答しろよ」


 「隊長何を」


 「バカ、直ぐに所属を伝え、その後の指示を仰げ」


 「ハイは~い、応答しますね」


 「お待たせしました。

 こちら第三巡回戦隊『アッケシ』所属、第二臨検小隊です。

 第一巡回戦隊の指示により航宙フリゲート艦にて待機中。

 指示を待ちます」


 「え、え~、こちら首都宙域警備隊旗艦『ドラゴン』だ。

 そちらに乗艦する。

 備えられたし」


 「後部ハッチを開きます」


 「いや、チューブにて移乗するのでその必要はない。

 エアロック周辺は特に注意されたし」


 「了解しました。

 われら全員艦橋にてお待ちしております」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] え?旗艦から人が来るんだから、全員艦橋でお待ちしてますは違う気が。迎えに行かないのでしょうか…
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