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新兵器の投入

 

 俺が心配し始めると、レーザー交信を使って『バクミン』から通信が入る。


 現状の報告と、突入の準備ができていると。


 一通り指示を出し終わったメーリカ姉さんがまた俺のところに来て、指示を仰ぐ。


「目標の大きさはPB1に近いようですが、民間で使用されていたベースの活用では無く、明らかに軍用ですね。

 ですので、魚雷攻撃後の突入になりますが、ご許可を」


「え、いきなり魚雷攻撃って」


 すると、無線で『バクミン』のカリン艦長からも許可を求めて来た。


「司令。

 新兵器の()()()()の使用を求めます」


「衝角魚雷?

 初めて聞いたけど」


「ですから新兵器です」

 そう言ってからカリン艦長は嬉しそうに説明を始めた。


 少し前に海賊の航宙フリゲート艦に突入作戦を成功させたが、あの時、衝角を付けた小型艇はかなり危なかったようだ。

 衝撃を吸収する仕組みはあったが、装甲が厚いと装甲を破れずに、衝角ひいては小型艇までもが破壊されてしまう恐れがあった。


 あの時は、完全に装甲を破れず、期待された開口の5割の大きさで中に突入する羽目になったし、帰投後の点検で、衝角そのものは完全に一回の突入で壊れていた。


 その反省から、突入する前に、同じ材質の衝角を備えた魚雷を撃ちこんでから、装甲の厚みの確認と、突入作戦の援護のため装甲の弱体化を図るために開発された新兵器だと説明している。


 要は、衝角付き魚雷だが、目標に突き刺さると、爆発では無く、高温で装甲を熱するのだそうだ。

 その後、宇宙空間の低温にさらされた金属は高温からの急激な冷却されて()()()なる。


 そのもろくなった装甲に、あらためて突入部隊を乗せた小型艇を突入させる作戦だとか。


 もう、ここまで聞かされたら、反対などできないだろう。

 選択肢の無い問いに対して、俺はただ頷くだけだ。


 本当に大丈夫だよな。


「ああ、分かった。

 全艦にマイクを繋いでくれ」

 俺はメーリカ姉さんにそう頼んでから、全乗員に対して、作戦の開始を命令した。


 そう、俺が命じることが大切なのだ。


 今の俺は王宮監察室より、指揮命令権を預かった戦隊司令になる。

 監察室の要請に対して、要請通り作戦を実施すると宣言したのだ。


 よって、この作戦は監察室が主体で行われるのであって、俺はただの駒になる。

 だが、実施にあたりきちんと宣言しないと、特に他の組織が絡むので、きちんとしておく。


 俺の宣言により、カリン艦長は自身が抱えている戦力を発進させた。

 小型艇が目標に到着する前に2発の衝角魚雷は『バクミン』より発射され、無事に目標に対して着弾、その後に強い光を放ち直ぐに治まる。


 それが二度続けて起こり、その後に小型艇が目標に対して突っ込んで行く。


 ほんのしばらくしてから、カリン艦長より報告が入る。


「司令。

 機動隊の突入に成功しました。

 こちらは計画通り、続けて軍警察を送り込みます」


「了解した。

 メーリカ艦長。

 こちらも軍を送り出そう。

 それに続いて俺も行く」


「司令、了解しました」

 メーリカ姉さんはすぐに艦橋に戻り、指示を出していく。

 俺は、一旦自室に戻りパワースーツに着替えてから後部格納庫に向かう。


 俺が突入に備えて自室で準備をしている間に『シュンミン』は『バクミン』と並走をしながらチューブで繋がれていた。



 ここで時間を少し戻して、『バクミン』内に居るアイス隊長目線で今回の状況を見て見よう。


 ちょうど『バクミン』が目標を発見して、大きさなどを調査しながら司令の乗る『シュンミン』を待つ。


 その間に、私たちに対して突入作戦の準備をするよう要請が入る。


「機動隊のアイス隊長。

 もうじき作戦が開始されます。

 機動隊員は速やかに突入準備の後、格納庫に集合してください」


「カリン艦長。

 こちら機動隊隊長のアイスです。

 突入の件、了解しました。

 5分以内に格納庫にて、準備を整え次の指示を待ちます」


「おい、聞いたな。

 直ぐ格納庫に集合だ。

 遅れるなよ」


 私は周りにいた隊員たちに向け命令を発する。

 周りの隊員も慣れたもので、既に走り出している者までいる。


 私が遅れる訳にも行かず、彼に続いて走って格納庫に向かった。


 『バクミン』の広い全通格納庫には既に衝角の付いた小型艇がいつでも出発できる状態で待機しており、そのそばに整備員が待機していた。


「機動隊長。

 いつでも出発できます。

 搭乗ください」


 整備員から激励の様に報告される。


「ああ、司令からの命令があり次第出発させてもらうよ。

 それまで面倒を掛けるが、いつものように頼むわ」

 俺はそう言ってから小型艇に乗り込んで行く。


 小型艇の中では、既に機動隊員が準備万端で待機しており、出発の時を今か今かと待ちわびている。


「今からそんなに入れ込んでは持たないぞ」

 私は傍にいる操縦士に声を掛けた。


 艦内放送では旗艦の『シュンミン』との合流が無事に済んだことを知らせて来た。


 その直後にカリン艦長から命令が発令される前に司令からお言葉があると全艦放送が入った。


 その直後に、私の良く知る司令の声で、本作戦の実施が命じられた。


 続けて、カリン艦長より、艦載機の発艦が命じられ、制空権を確保した後、私たちに発艦の命令が入ることになっている。


 その後に『バクミン』の艦載機管制より、指示が出て俺たちを乗せた小型艇は全通甲板を通り、前部ハッチから宇宙空間に出て行った。


 小型艇のほぼ全速力で移動しているはずなのだが、この広い宇宙空間ではそれこそカタツムリの歩みのごとく感じられる。


「じれったいものだな。

 直ぐ傍に目標が見えているというのにな」


「隊長。

 それ、宇宙ではよくあることですね」

 雑談をしながらほんのしばらくの時間を過ごす。


 すると、操縦士から報告が入る。


「『バクミン』より、魚雷の発射を確認。

 10秒後に横を通過します」


 そう言われてから直ぐにすぐ横を魚雷がかすめていく。

 まさか私たちを乗せた小型艇に当てることは無いだろうが、あまり気持ちの良いものでは無いな。


 そんなことを感じていると、再度報告が入る。


「続けて2射目の魚雷発射を確認」


 2発目も無事に横を通り抜け、一発目が目標に命中するのが見えた。


「一射目、命中を確認。

 外装温度上昇。

 その後の急速な温度低下を確認」


「どうにか秘密兵器も成功のようだな」


「ええ、前回の航宙フリゲート艦の時には焦りましたからね。

 こちらの思惑通りに外装がもろくなると良いのですが」


「2射目の命中も確認。

 命中誤差12cm.

 突入に問題ありません。

 外装温度適正まで低下を確認しました」


「了解した。

 カリン艦長に報告。

 機動隊、これより突入すると」


「了解しました。

 報告します」


 俺たちを乗せた小型艇から発行信号で『バクミン』に突入することを伝えた。


「隊長。

 第2陣の宇宙軍警察を乗せた小型艇の発艦も確認できました」


「ああ、なら、こちらも予定通りに行こうじゃないか。

 突入するぞ」


 ゴ~~ン。

 ゴゴゴゴゴ。

 バリバリ。


「衝突成功。

 開口率6割になります」


「6割か。

 まあ、前回よりはましと考えるしかないか。

 次に移るぞ。

 衝角ハッチを開け。

 開放後、1班から順に突入。

 突入後、橋頭堡の確保を急げ」


 ガヤガヤ

 ドカドカ


 機動隊員は全開まで開けなかったハッチを通り、次々に目標艦の中に突入していく。

 時折、戦闘する音も聞こえてはいるが、せいぜい数人程度の戦闘のようで、今回の突入劇もどうにか成功したと言える。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冷えた空気なんてものが無い宇宙では、魔法瓶に入れられた状態と同じようなものですから、ほぼ輻射でしか熱が逃げないはず。
[気になる点] 機動隊員は前回まで開けなかったハッチを通り 全開 の誤字かな?
[一言] いつも楽しみにしています。 1点技術的なところで気になったのですが、衝角魚雷についてです。 魚雷そのものが発熱するのは良いのですが、宇宙空間は真空にほぼ近く熱伝導はほとんど起きなかったと記憶…
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