表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/425

怪しい小型艇を発見

 

 幸いなことに、この星にいる人たちにはまだ『バクミン』についての情報はそれほど出回っていない。


 偶々だったというのもあるが、俺たちも2隻でこの星に来ることは避けていた。


 それに何より、俺たちにはあのマッドな連中が作った……訂正、優秀な者たちが自主的に作った小型の調査艇がある。


 海賊連中に見つかることなく、遠距離から追尾ができる筈だ。


 俺は会議の後すぐに『シュンミン』を発進させ、宇宙空間で『バクミン』と合流した。


 『バクミン』と合流後に打ち合わせを持つ。


「捕まえた伯爵から僅かばかりの情報を得た」

 俺は集まったメンバーにこう切り出してから、ほんの僅かだが俺の得た情報を披露した。


「司令、それってわかっていたことでは」

 すかさず遠慮のないメーリカ姉さんが言ってくる。


「ああ、予想はしていたが、はっきりと聞いたこととは大きな違いがある。

 海賊のメンバーはジンク星に定期的に来ているということだ。

 通信が使えない暗黒宙域だと、当たり前だが、それでも人が来ている。

 これは決まった」


「そうなると、次はその連絡員がどのように来ているかですね」


「ああ、なので今までのようなしらみつぶしにエリアを捜索する方針から、この連絡員を探す方針に変えていきたい」


 そこから意見を出し合って、ジンク星に来るには宇宙船が絶対に必要となることから宇宙船を追うことにした。

 ただ、それでも莫大な数の中から目的の宇宙船を探すとなると今の人員ではほぼ不可能なことは誰でもわかる。


 それでも、俺にはと云うよりも集まった全員が同じ考えなのだが、定期船ではありえない。

 また、不定期船でも航路から外れればすぐに怪しまれるから、それも考えにくい。


 となると、定期船、不定期船を問わず航路上から小型艇を発進させている宇宙船があるのか無いのか調べれば良いが、多分これもあり得ないだろう。

 法律に則って運航している船では、そんなことをすればすぐにでも足が付く。


 残るは宇宙タクシーのような小型艇の存在だ。


 どこでも見かける光景なのだが、コロニー衛星などに向かう人や物資を運ぶのにひっきりなしに地上と宇宙とを行き来している小型艇の存在だ。


 しかし、ここジンク星にはコロニー衛星は存在しない。

 ただ、係留費用などの関係で、物資や人の受け渡しを宇宙空間で済ませてしまう星系間移動の宇宙船は少なからず存在しており、小型宇宙船もそこで活躍している。


 それら小型艇に交じりこんで、海賊の基地に向かう小型艇を探せば良いだけだ。


 だが、言うは易しの類じゃないが、これが非常に厄介な存在で、宇宙に行き来するときに発しているフレンドリーマーカーを途中で切られると、地上からはまず追えない。


 このフレンドリーマーカーとは、海賊や隕石など、惑星上で暮らす人にとって非常に迷惑な存在と間違われないように、所属などを常に発信していく装置のことで、全ての宇宙船に装着が義務付けられ、定期的にお役所で更新していかなければならない存在の物だ。


 これを発信しながら宇宙空間に向かえば、まず取り締まられることなく宇宙空間に行き来できるが、その数がコロニー衛星を持たないジンク星でも相当な数がある。


 まあ、俺らはこれらを一々調べるつもりはなく、そのフレンドリーマーカーを出していない小型艇を探すことにした。


 数が多いために、ジンク星から少し離れて、普通と違う動きのある小型艇を探すことにしたが、相手が小型艇であることから、また、フレンドリーマーカーを発信していないことからレーダーだけでの捜索には限界が来るが、そこは出鱈目を信条としている我が戦隊だ。


 レーダーで捉えられる小さな点までも全て調べることができる。


 普通は通信を使って問題の小型艇を問い質し、また、近くまで出向き実際に見て調べる等の手段しかないが、広い宇宙だと、まず無理だ。


 しかし俺たちには、暗黒宙域でも活躍できる装備まで持っている。


 レーダーで捉えられたフレンドリーマーカーを発信していない点をその光学装置で確認して、小型艇であるか無いかを調べれば、問題の小型艇に行きつく。


 そう結論付けて、実際に、捜査に当たった。


 簡単に見つけられると思ったんだが、あれからかれこれ10日ばかり無意に時間だけが過ぎた。

 とにかく、目標となる怪しい点がレーダーに現れない。


 まあ考えたら当たり前なのだが、一艘、そう唯の一艘だけで敵さんである海賊は目的を達する。

 いや、人を数人運ぶだけなので、二艘以上の船は邪魔なだけだ。


 そうなると、大して広くないと思われたジンク星周辺も、ことこういう捜査に当たるには十分な広さがあった。


 何より敵さんは毎日動いている訳では無いようで、その動いている時に発見しないと見つからないのは自明の理だ。


 本当にめんどう臭い事甚だしいが地道に作業をしていく。


 そうして、あれから10日が過ぎた時に『バクミン』から連絡が入る。


 怪しい船を見つけたと。


 俺は、見つからないよう十分な距離を取って、後を追うように指示を出す。


 実は、結構な数の無人の人工衛星をこんな感じていくつか見つけては後を追ったが、成果のほどは今までなしのつぶてだった。

 が、今回ばかりは人工衛星などでは無く小型艇だとはっきりと映像に捉えていた。


「今度は当たりでしょうね」


「そうだよ、姉さんじゃ無かった艦長」

 ケイトは気が抜けたのか、時々昔の名残が時々出てしまうが、そんな感じで会話に加わる。


「ああ、少なくとも無人機では無く、それでいて現時点で航行法違反だしな。

 やましいことを持つ奴らなのは決まりだ。

 それが海賊一味だという保証が無いのが悔しいが」


「司令、直ぐにわかりますよ。

 目的地に着けば、そこを捜査すればいいだけですから」


「しかし、あれって、ボッコサンだよね。

 あの船って、航続距離と燃費を売りにはしていたけど、あんなに航続距離を持っていたっけ」


 流石にメカしか興味の無いマリアが言ってくる。

「いえ、片道にしか使わなくともカタログ値はとっくに過ぎていますよ」

 今度はデータに詳しいカスミがマリアに応えて来た。

 この2人って本当に仲が良い。

 そのためか、2人がたくらむと本当に大事になるのが心配だ。


「艦長、敵さん、到着したようですね」


 こちらでも『バクミン』から送られてくる情報をモニタリングしていたカスミが声を上げる。

「相手が光を出していないので、良く分かりませんが敵さんの動きが止まり、あ、ちょっと待ってください。

 消えましたね。

 多分ですが中に入ったのでしょう」


 カスミが艦長に報告してくるのが聞こえた。

 それとほとんど同じくして、『バクミン』から無線が入る。

 カスミからの話と同じだった。


 その上で、どうするかの質問もしてくる。


 今『バクミン』で捉えている位置と『シュンミン』から同じ位置を計測して、海図に書き込み、一旦戻ることにした。


 流石に俺の戦隊2隻の戦力では、乗り込むのに明らかに戦力不足だ。

 少なくとも、ジンク星にいる機動隊だけは連れて行きたいが、できれば宇宙軍や軍警察も同行させたい。


 一応地上に向け無線を送り、軍警察と、宇宙軍の責任者には俺たちの基地に集まるようお願いをしていた。


 これだけでも敵さんに警戒を与えることになるが、今度は無線での連絡が海賊同士取れていないことを逆手に取る。


 今更俺たちの動きに気が付いても宇宙にいる海賊に知らせる手段は無い筈だ。


 今回は現場にバクミンを残しておきたかったのだが、内火艇を積む関係で残すこともできなかった。

 調査艇だけでもとの意見もあったが、敵さんに襲われたらひとたまりもない事からその案も却下しておいた。

 カリン先輩は相当がっかりしていたが、別に敵基地が大型宇宙船でも無い限り簡単に逃げられるものでは無い。


 それに何より、俺たちの足の速さが今回はアドバンテージだ。

 とにかく急ぎジンク星の基地まで戻り、集まった人だけで会議を開く。

 集めた全員がそろうのを待つつもりもない。


 俺が会議を開いている間に、カリン先輩に用意できるだけの小型艇を積み込んでもらう。

 何があるか分からないので、念のためだ。


 幸い宇宙軍陸戦隊の小隊長が近くにいたことから、小隊長にも会議に参加してもらい、状況を説明する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点]  まあ考えたら当たり前なのだが、一艘、そう唯の一艘だけで敵さんである海賊は目的を達する。  いや、人を数人運ぶだけなので、一艘以上の船は邪魔なだけだ。  以上は、数字として使う場合そ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ