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方針変更

 

 まあ、軍警察官の多くが貴族がほとんど占める軍上層部を取り締まる関係で、貴族階級からはまず出てこない。


 それでも下層階級から士官になるのは珍しいとか。

 そう言う意味でもシャー少尉は稀有の存在だ。


 そんな感じで、早速俺の暗殺未遂事件の捜査から始まった。

 毒についても詳細なデータなどの情報を俺からというより、優秀な『シュンミン』の生活安全部署からの報告書を渡してある。


 かなり驚いていたが、それもそうだろう。

 どうも監察官の様子からは国の諜報部は何か掴んでいるようだが、それを公開などできる筈も無く、俺の方から出されていた報告書を上手に利用するようだ。


 それにしても、この国は真面目な奴ほど苦労をする。

 それは下層階級出身であろうが、王族であろうが変わりなくだ。


 王宮周りでも殿下が色々と動き回っているそうで、あちらはあちらで苦労しているようだ。


 今回の軍からの応援もそんな殿下の苦労の賜物だ。


 俺たちと一時的だが仲間になった軍警察がそろったので、俺はなかなか宇宙に逃げることもかなわず、やむを得ず、『シュンミン』から降りて、ここでしばらく指揮を執ることになった。


 尤も指揮を執ると言っても、『シュンミン』にいる時とほとんど変わりがなく、報告書や資料と格闘するだけなのだが。


 その間『シュンミン』は例の宙域に出発して『バクミン』と一緒に調査している。


 俺もあっちの方が良かったんだが、流石に俺の指揮下に入ったという軍警察がいる以上、俺もここを動けない。


 実際の仕事は専門家であるトムソンさんが仕切っているが。


 そんなある日、俺の苦労が報われた。


 苦労と言うよりより不満を我慢していた忍耐と言い直しても良いが、スプートニク伯爵の拘束に成功したのだ。


 今回殿下の苦労で、この星に施行されている治安警戒令のお陰と言ってもいいかもしれない。

 どんなに証拠を隠そうとしても、現場に出向き、資料公開を軍警察から要求すれば隠す間もなく公開せざるを得なかったのだ。

 これが、この法律の強みだ。

 強力な拘束力のお陰で、この星を領している辺境伯の屋敷ですら簡単に捜査に上がれるから、辺境伯の事務所で押収した資料や、他の役所などでの捜査の結果、十分な証拠を押さえるのに成功して、俺の名で陸戦隊に治安出動を要請しての強行捜査の結果、現場にいたスプートニク伯爵本人の身柄を保護するのに至ったと聞いている。


 そんな現場なら俺も行きたかったが、許される筈も無く、身柄を押さえて、この基地まで伯爵を連れて来た時に報告を聞いた。


 俺は、監察官の要請により、直ぐに宇宙にいる『シュンミン』を呼び戻し、彼を首都星まで護送することになった。


 幸い、前の改装で、拘束した人を預かる施設は用意してある。

 海賊用だが、なにせこれを改造する連中の頭がおかしい……訂正、ちょっと変わった感性の持ち主だ。

 留置のための施設のはずなのだが、十分に貴族に使っても問題ないような仕上がりだ。


 尤も、使っている家具類が豪華なだけで、必要以上の物はない部屋だから、拘束された人には不満はあるだろうが、それでも半日もすれば首都星にある貴族を取り締まる部門に引き渡されるのだ。


 それまで勘弁してくれ。


 久しぶりの宇宙でも、俺はゆっくりとはできない。

 拘束中の伯爵は俺に色々と要求してくるのだ。


 無理だって。一緒に監察官も載せているのだから、闇取引などできない話だろうが、相手は必死だ。


 無視をすればいいだけの話だが、そこは監察官が許してくれない。

 俺に彼と話をしろと命じて来る。


 なので、伯爵が何かを言うたびに俺は呼び出されて、彼に付き合わないといけない。


 やれ女だとか、金だとか、地位や名誉まであったが色々と提案してくるが、捕まっている人からどんな名誉を貰えばいいのか正直俺には分からなかった。


 貴族の人たちとは住む世界が違うと、この時に思った。


 監察官は俺に色々と取引を願ってくる伯爵からより多くの情報を引き出す算段だったが、本当にあれで目的は達したのだろうか。


 唯一雑談の中から、海賊との邂逅についての情報を得た。


 ある酒場で待てば連絡が来るらしい。


 しかし、どういう経緯で宇宙にいる海賊と連絡が取れるのか不明だった。


 俺は、『シュンミン』からジンク星にいるトムソンさんに連絡をして宇宙に向けて発せられる電波などを見直してもらうように依頼をしておいた。

 膨大な量があるが、その内、特定な星や場所以外に向けての物だけでいいから、現地人に協力してもらえば不可能ではない。


 無事に首都星で監察官ごと引き渡しが終わった後に、殿下から色々と質問攻めにあった。

 『体に異常はないか』

 『毒以外に危ない目に遭っていないか』 

 などなど。


 あんたは母親かよ。

 尤も俺は母親を知らないが。


 でも正直色々と質問攻めにあった後に俺は一応お礼を言っておいた。


 殿下のお陰でジンク星に治安警戒令が施行されたおかげだと。

 でも、捕まえたのは氷山の一角であることは誰もが理解している。

 当然、辺境伯もターゲットではあるが、なかなか証拠を掴めていない。


 そんなこんなで、俺もニホニウムに寄ってちょっと休憩って考えていたけど、それすら許されることは無く、乗員たちの休息も必要だと艦長のメーリカ姉さんに言ったら、休息は終わったばかりだと言っていた。


 俺が地上で苦労している間に、補給と休息を済ませていたようだ。

 悔しそうな顔をしながら報告を聞いていると、メーリカ姉さんは俺を慰めるように、『休息と言っても連中の生活は変わりませんですよ。

 皆部屋にこもって趣味に走っていますから、今と一緒』って言っていた。


 くそ~、そんなことでだまされないぞ。


 と云うことで、それこそ1日でジンク星に戻り、あのさびれた宇宙港の建屋に戻っていった。


 あのさびれた宇宙港に併設されている事務棟に、知らない間に俺の執務室まで作られていた。


 まあ、古くはあるが、首都星の有る航路管理局と同じ造りに2人しか働いていなかったので、それこそ部屋ならいくつでもあった。


 そのために、いくら臨時とはいえ、司令官室なる部屋に俺は通された。

 そう、俺の部屋に通されたのだ。


 その部屋で、第13課の課長とシャー少尉、それにトムソンさんが集まって、俺から依頼した件について報告会が開かれた。


 こちらで何をしたいかだけ明確に出しておけばあとはAIが勝手に働いてくれる。

 技術の進歩には脱帽だ。


 で、その中間の報告だが、結論から言うと星間通信の類には怪しいものは無かった。

 暗号通信の類もいくつかあったが。発信元に発信先などの確認と、現地の受信先に捜査員を使って調査までしたが、海賊との通信は認められない。


 だが、ジンク星と宇宙にいる海賊との間に意思の疎通はあることは判明しているのだ。

「となると、直接人が連絡するしかなくなりますが」

 ある一人の捜査員がこぼしたのを俺は聞き逃さなかった。


「分かりました。

 私の方で、人の移動については調査してみます」


「え、宇宙港は完全にこちらで押さえておりますよ。

 仮に密出国だとしても、宇宙船そのものはこちらで監視下にありますし」


「ええ、ですから残りは宇宙タクシーなどですか」


 このジンク星は主惑星でも珍しく、星の衛星軌道上にコロニー衛星を、持っていない。

 それでも宇宙衛星軌道上までは簡易宇宙船でも行けるので、たまに見かけることがある。


 目的はまばらだが、その多くは観光だ。

 たまにあるのが、宇宙空間からのジンク星の学術調査くらいか。

 それに何より衛星軌道上で停泊する宇宙船とのやり取りだ。

 宇宙港に降りると時間と金がかかるのを嫌う連中はどこにでもいる。

 大抵は、惑星上の宇宙港よりは断然安く済むコロニー衛星にでも停泊するが、ここでは衛星軌道上で済ませてしまう。


 そのため、俺たちは一々調査までしていなかったが、今度はこれに絞って調べることにした。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] それでも宇宙衛星軌道上までは簡易宇宙船でも行けるので、たまに見返ることがある。 見かけることがある の誤字?
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