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地上での俺の仕事

 

 話している間中、とにかく気持ちが悪かった。

 俺が慣れない敬語を使っていることもあったのだろうが、腹芸の苦手な俺にとって、貴族社会での仕来りや風習などさっぱりなところに、何をしたいのか分からない会話が延々と続くのだ。

 気味が悪い。


 それもどうにか終わり、俺は解放された。


「一体あの人は何をしたかったんだろうね」

 俺は秘書のイレーヌさんに聞いてみた。


「さあ、どちらにしても司令の人柄を探りに来たことだけは確かですかね」


「俺の人柄?」


 どうも、あの人は俺を観察しに来たようだとイレーヌさんは言うが、忙しいさなかにすることなのか、疑問に思った。


 その日は、この後も面会が続き、夕方にやっと面会から解放されたが、俺の仕事はこれで終わらない。

 この後最近はだいぶ楽にはなったが、事務仕事が残っている。

 日中全くできなかったこともあり、俺が仕事から解放されたのは深夜に近くなってからだ。


 俺は良いが、秘書のイレーヌさんまでもつき合わせたのは申し訳なかった。

 妙齢の女性が仕事ばかりだと良縁に恵まれなかったと後になって文句を言われないかちょっと心配になる。


 その後も、だいたいこんな感じで時間は過ぎて行く。


 あの後、伯爵との面会の様に気持ち悪い面会は無かったが、相変わらず面会だけは多かった。


 まあ、ほとんどが地元企業のお偉いさんか、せいぜい地元の準貴族とばかりだったので、いつものごとくだった。


 だいたい軍関連の発注などに関してだが、それらについては俺は全くタッチしていない。しかし、一々お偉いさんが俺に会ってまですることがあるのか。


 そんなことは担当者か、大事でもマキ姉ちゃんの仕事だ。

 それに、担当レベルの話など、俺もそうだが、お偉いさんも知る筈も無かろうに、担当者まで連れてきていったいどんな意味があるのか。


 いかん、いかん、愚痴が出て来る。


 そんな感じで地上での地獄のような1週間が過ぎて、首都星ダイヤモンドに行っていた殿下たちが帰ってきた。


 無事に何とかといった会議が終わったようだ。


 尤も殿下たちは義理だけ果たして、途中は会議から抜け出し、王宮の監査部との打ち合わせに時間を使っていたようだ。


 俺たちが鹵獲した宇宙船は、とりあえず月にある宇宙軍ドックに隠すことにしていたので、会議体に参加している連中には新たな海賊の脅威については知られていない。


 殿下は会議体を無視して、王宮で監査部との打ち合わせにほとんどの時間を使っていた。


 なにせ、他国の介入の恐れがありそうだとの情報がもたらされたのだ。

 相手が菱山一家だということを考えると、そう大事にならない可能性はある。

 前に俺たちが鹵獲した航宙フリゲート艦も他国所有だったものだが、同盟国だったこともあり、事実関係が直ぐに判明して大事にはならなかった経緯もあったからだ。


 今回は、他国が同盟国でなく、中立からやや敵側にシフトしていると思われる大国が絡んでこないとも限らないので、慎重に話を進めているだけだ。


 そんな重要な話し合いをしてきた殿下たちが帰ってきた。


「お疲れさまでした、司令」

 帰ってくるなり殿下は俺に声を掛けて来た。


「は、お疲れなのは殿下の方では」


「いえ、スプートニク伯爵の件です。

 大変でしたでしょう。

 あれは限りなく黒ですからね」


 え、誰の事?


「司令、前に会ったあの伯爵ですよ」

「ああ、あの気持ちの悪かった」


「え、何ですか、司令」


 カリン先輩は俺の漏らした不穏当な独り言を見逃さなかった。


「いや、何でもない」


 その後簡単に打ち合わせを持ったが、あのデライト星系の上層部はかなりまずいらしい。


 元々王室監査部が調査を始めていたようなエリアだった。

 外国との接触が疑われる貴族も一人二人ではないらしい。


 ただ、実に老獪な貴族だけあって、簡単には尻尾は出さない。


 元々シシリーファミリーの件で処罰を受けた貴族連中も普通なら絶対に捕まらないように実に慎重な連中だったのだが、相手が悪かった。

 大物だった海賊であるシシリーファミリーにしっかり証拠を掴まれていただけの話だ。


 それでもシシリーファミリーが健在ならば何ら問題は無かっただろうが、ほとんど壊滅状態にまで駆逐されては、流石のシシリーファミリーでも証拠を隠すことはできなかっただけの話だ。


 それだけに、俺たちが成した功績は絶大とまで評価されているとか。


 しかし、今の話を聞いても、本当にこの国の屋台骨はかなり腐っている。

 しかも、元凶である貴族連中もあのシシリーファミリーがらみだけではなく、他の海賊、特に菱山一家に連なる連中もかなりの数が居そうだというのだから、ほとんど詰んでいたのではとすら思えた。


「今回も司令のお手柄でしょうか。

 デライト星系の疑惑は証明された以上、重点的に捜査に入れます。

 まずは政府直轄の出先機関に、うちの捜査員を送ることからはじめますから、皆を集めて会議をします」


 そう殿下は宣言を行い、翌日にはダイヤモンド星にいるメンバーを除く主要メンバーを集めて会議を開いた。


 まあ、うちの場合公ではダイヤモンド星にいる経理関係の重役までもが主要メンバーに入ってはいるが、実情は彼らは敵からのスパイ扱いで無視されているので、事実上広域刑事警察機構の主要メンバー全員が集まっての会議だ。


「以上、説明を終わります」

 カリン先輩が、王宮での話し合いの結果を説明していた。

 その後殿下が今後の方針を話し始めた。


「質問が無ければ、今後についてですが、デライト星系での捜査についてです」


「殿下、捜査と言っても現地警察に協力要請ですか」


「いいえ、ここだけの話ですが、あそこはかなり上層部が腐っています。

 証拠はありませんが、協力要請しても邪魔されるだけで、百害あって一利なしです」


「となると我々が直接捜査することになりますが、潜入捜査となると……」


「ええ、ですから大義だけは用意しました」


 そう言って殿下はカリン先輩に説明をさせた。

 先輩の説明からは、各星系に必ずある航路管理局の出先機関を利用するというのだ。


 先の治安責任者会議の席において、殿下は国家交通省の役人より航路の安全点検の依頼を受けた。

 これは、あらかじめ監査部との話し合いによって考え出された茶番の始まりだ。

 海賊被害の著しく減少したこの時期に、航路管理局は事故などの宇宙船ロスト数の多いエリアの大々的な調査に当たることとして、比較的、宇宙空間を自由に動ける広域刑事警察機構に航路点検の依頼を出した体を取っている。


 これは会議の席上で出た話なので、各星系の治安責任者も知ることになるので、何ら隠すことなくデライト星系に職員を送り込めるという筋書きだ。


「という処までは準備をしました。

 後は現地での捜査はトムソン捜査室長が指揮してください」


 何のことは無い。

 現地にトムソンさん率いる捜査チームをそのまま送り込める段取りまで付けて来た。

 その上、今ではほとんど使用されることは無いデライト星系の事故調査委員会管理下の小さな宇宙ポートまで抑えている。


 俺の機構軍はその宇宙港を使い、例の海賊捜査をしていく塩梅になっている。

 本当に、あの短い時間で段取りを付けて来たのか。

 これってかなり周到に準備された案件では無いかと疑いたくなる。


 俺たちが海賊船を拿捕してから準備したとは思えないくらいに用意周到だ。


 翌日から早速俺たちは捜査室だけでなく、機動隊までも引き連れてデライト星系に向かう。


 到着したのはデライト星系の主惑星、しかもその中心地から離れたかなりさびれた場所に有る小さな宇宙港だった。

 この宇宙港に隣接する建物の中に今回間借りする航路管理局の出先機関、出張所が入っている。


 早速その建屋に挨拶に向かうと、そこでは2人の女性が事務をしていた。

 1人がここの所長であり、もう1人がパートの事務員。

 そう、ここには2人しかいない。


 なので、広い建屋ほとんどが空いているので、トムソンさん達は所長の許可を得てから、空いている部屋の片づけを始めた。


 地元のお偉いさんへの挨拶についてはしなくてもいいと直接殿下より聞かされている。

 なんでも、後日マキ本部長が乗り込んで、挨拶することになっているとのことだ。


 俺の受けている命令は、捜査員と機動隊員をこのさびれた宇宙港に備品と一緒に降ろす事で、それが済み次第速やかに、この星から退去せよということだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難うございます。 当面の敵の首魁が値踏みに来たと言うところでしょうか。 広域刑事警察機構に揃った「マリア度」の高い人々がおりますので、とんでも武装やとんでも装備で海賊や敵軍を蹴散らすの…
[気になる点] アンリ先輩って誰? [一言] 更新ありがとうございます。
[良い点] 色々と手際がよすぎる殿下が一番の曲者では((( ;゜Д゜))) 皇太子、なんなら皇帝から女狐とかヒ○トラーのしっぽとか思われていそう [気になる点] 司令の人柄:腹の座った正義感溢れる若者…
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