おまけ:2番艦『バクミン』笑誕4
殿下の承認が得られていれば問題無いな。
そうこうしているうちに最下層の格納庫に来た。
ここを見た俺の感想はとにかく広いに尽きた。
「ここは?」
「ここがこの艦の最大の特徴になる格納庫です。この艦には後部格納庫の他に前部にも同じ大きさの格納庫があり、それぞれを繋ぐ回廊があります。
全通回廊と呼んでおり、作戦時は後部格納庫で収容した艦載機などは整備後回廊を通って前部格納庫から発進できます。
また、前部格納庫にはエレベータを設置しており、格納庫の上にも艦載機等を格納できる構造となっております。
マリアたちが頑張って、収納できる場所を確保してくれました」
「エッヘン。
凄いでしょう」
「確かにすごいな。
これなら10機という艦載機の数にも納得ができる。
一々カタパルト発進ではとてもじゃないが搭載できたとしても作戦では10機全てを運用できないしな」
とにかく思いっきり特徴的な艦が出来上がったようだ。
殿下たちを降ろしてから試運転に向かった。
結論から言うと、このエンジンシステムは既に2回目でもあるし、エンジンも新品と云うのもあって問題無く目標となる速度を出して試運転を終えた。
そうそう、説明が漏れていたからここで説明しておくと、この艦の外装には『シュンミン』のようにスカーレット合金は使っていない。
しかし、外装を補強しないと前に『シュンミン』で失敗したような強度不足になるので、この艦では今のところ、どこでも使っていないと云うよりも試作が終わったばかりの新素材が使われている。
キャスベル工廠の子会社の素材メーカーが開発中の新素材、高分子ポリマーだとかファインセルロースだとかを混ぜ合わせたような夢の素材が使われている。
薄くて高強度を誇るのだそうだ。
エネルギー兵器に対してはスカーレット合金の1/10の性能しか出せないが、それでも大したものだ。
だが、この新素材は物理兵器に対しても従来の外板よりも3倍の強度を誇るのだそうだ。
初めての実装なので少々不安もあったが、とりあえず試運転において、例のビビリも無くスムーズに最高速まで加速できた。
結果が思いのほか良かったので、俺たちはこのまま使うことにした。
地上に降りて来ると、試運転の成功を確認した王国の運輸管理局の役人から正式に艦ナンバーと艦名を頂いた。
広域刑事警察機構軍 2番艦
艦ナンバー KSS9998 艦名『バクミン』
だそうだ。
未だに俺たちに対する悪意は続いていそうだ。
いったい何だよ、この艦名は。
確かに一番艦が『シュンミン』だから、2番艦も「何とかミン」になるのは分かるがって、そもそも『ミン』って付く段階でまともな名前は期待できないな。
艦ナンバーについては一番艦で意地悪をしたから普通とは逆にナンバーを降ろすしかなかったのだろうけど、最初に意地悪をした奴に向かってざまあって言いたい。
しかし、もう少し艦名はどうにかならないかな。
まあ、艦種は登録上『航宙駆逐艦』になるが、どう見てもこれって駆逐艦の範疇から外れているな。
するとカリン先輩は俺に嬉しそうに言ってきた。
「この艦の艦種は登録上では駆逐艦にしかなりませんが、この艦はこの国初めての『航宙駆逐キャリヤー』になります。
こんな艦なんて、宇宙軍でも持っていませんよ」
俺もそうだが、カリン先輩もかなり中二病を患っているらしい。
何だよ『航宙駆逐キャリヤー』って、中二病全開だろう。
それにしても艦名ってどうにかならんかな。
~閑話休題~
数年後、広域刑事警察機構もその活躍を止めずついに3番艦を就航させることになった。
KSS9997 航宙雷撃艦『ダミン』の就航だ。
どこかの星の古い話で、風光明媚な観光地の名前を取った軍艦があったそうだ。
その風光明媚な場所にちなんで三景艦なんて素敵な名前で三隻を呼んでいたとか。
それにちなんだかどうかは分からないが広域刑事警察機構の三隻の軍艦にも名前が付いた。
その名も………
『お昼寝三艦』
『春眠』『爆眠』『惰眠』
って、おい、流石にこれは失礼だろう。
さらに後日談。
4番艦の話が出た時に艦名をどうするかという話になって、上がってきた候補に『エイミン』があったそうな。
流石にこれには殿下も反対して4番艦計画そのものも無くなったとか。
『エイミン』ではもはやお昼寝ではない。
流石に軍艦に限らず、生きた人を乗せる船には付けてはダメな名前だろう。
どこまでも悪意を受けなければならない組織だ。
これで、この章は終わりです。
流石に艦名で遊び過ぎましたか。
まあ、おまけの話ということで、楽しんでいただけたら幸いです。
またしばらく時間を空けますが、流石にこの間にならないようには気を付けます。
暫くお時間をください。




