おまけ:2番艦『バクミン』笑誕3
まずは、出来上がった2番艦の内覧会だ。
明らかに『シュンミン』と異なり、豪華なものは見当たらない。
だが、どうしてもこの艦も軍艦とは思え無い内装だ。
それもそのはずで、この艦の内装はお隣のドック社長のご協力という奴だ。
解体中の病院船から内装など、使えるものはどんどん使っていったそうだ。
流石に艦橋の装置はドックの親会社であるキャスベル工廠を通して豪華客船の物と同じ物を取り寄せた。
半分くらいは中古だが、それでも新品も多く使った。
今度の改修に予算が付いたからできたことだ。
当然マリア謹製のレールガンも装備して、航宙魚雷発射管も『シュンミン』と同じ。
そう、一般武装は全く『シュンミン』と同じなのだ。
まあ、航宙駆逐艦の武装なんて、ほとんど自衛手段としてしか使えないような貧弱なものだ。
軍事行動ではどうあがいてもレーザー兵器では同程度の駆逐艦にしか太刀打ちできないが、他の国でもこの駆逐艦クラスの運用は少なくなっていると聞くから、軍ではまず使えない。
唯一戦艦にも打撃を与えられるとしたらこの国で使用しなくなった航宙魚雷くらいだろう。
あとは、特殊環境下でのレールガンもどうにかと言った感じか。
そのどちらも足の遅さが原因で軍では見向きもしなかったが。
なので、2番艦も同程度の武装はあるが、改造海賊船には十分ともいえる武装だが、武装というにはちょっとといった感も無きにしも非ず。
話を内覧に戻して、艦内を殿下やマキ姉ちゃんたちと一緒に見て行く。
病院船から内装を持ってこなくても、新品をいくらでも取り寄せるくらいには予算があったはずなのだが、この艦も解体中の船からの流用品を使っている。
居住スペースについては病院船の医師が使っていた部屋の流用だったようで、清潔感のあるこじんまりとした、下手をすると軍艦の士官室よりも使い勝手の良い感じに仕上がっている。
あ、これ、いいかもと俺も思った。
カリン先輩が殿下やマキ姉ちゃんに説明していく。
「本艦の士官は皆、このような部屋になっております。
下士官も個室とはなりますがこれよりも小さくなります」
「一般の兵士については」
マキ姉ちゃんが聞いている。
士官や下士官が十分に許容範囲に入っているので、『シュンミン』とは違い、全く心配は無いのだが、一応は聞かないといけない。
「一般の兵士は2人部屋になっておりますし、就学隊員については4人部屋を考えております。
また、保安室長からの要望により、保安員は4人部屋を用意しております。
それに機動隊員乗務の際に、8人部屋も用意しております。」
至極真っ当な造りとなっているようだ。
これでも軍から比べると若干ではあるが恵まれたものだ。
なにせ教育艦隊当時には准尉も2人部屋だったとか。
カリン先輩とイレーヌさんは同室になった関係もあり、親しくなっていったとも聞いた。
居住エリアの内覧を済ませて、いよいよこの艦の心臓である艦橋に向かう。
メイン艦橋は『シュンミン』とほぼ同じ造りだが、大きく違うのは、『シュンミン』よりも艦橋が広くとられており、艦載機管制のためのエリアが充実していた。
「この艦の特徴としましては最大10機の艦載機の運用を考えております。
その他に内火艇2艘、医療用搬送艇1艘も搭載しております」
「どこにそんなスペースが……」
「居住スペースが『シュンミン』の半分にまで圧縮されておりますが、搭乗員数は1.2倍はあります」
マリアたちのパズルの成果だと言っていた。
とにかく効率的に収容できるように徹底的に艦の中身の検討を施してこの艦はできているのだとか。
「この後、殿下たちを送り出しましたら試運転に入ります。
司令はどうしますか」
「当然、試運転に同乗させてもらう」
「ですよね。
この艦には、旗艦機能を一時的に預かれるように司令のお部屋も用意してありますから、そこを案内してから最後の格納庫に案内します」
そう言って、この艦の作戦検討室を通り抜け、その隣に部屋を用意したと言っていた。
真っ白な扉が付いた部屋には医院長室とのパネルに大きく黒マジックでばってんがしてある。
「ここが俺の部屋か」
「アハハハ。
そこまでは準備ができてなくて。
パネルはすぐに作るから許して」
と俺の後ろからマリアが笑いながら言い訳をしてきた。
中に入れてもらったが、今俺が使っている艦長室よりははるかに使いやすそうな部屋だ。
簡単な応接まであり、本当に医院長室であったかのような部屋の作りだ。
「本当に何から何まであの病院船から持ってきたな」
「だって、あの船も良いものをたくさん使っていたし、もったいないよね」
「それでいて、使いやすいし、言うこと無いしね」
「豪華にして使い難くしたのは誰だっけか」
「はははは、何のことかな」
マリアもカスミもとぼけている。
この後医務室を見てから最下層にある格納庫に向かう。
あ、医務室だが、かなり整理されており、『シュンミン』のように狭く感じない。
この医務室と続き部屋になって例のポッドのラックがあった。
「これはいくつあるのかな」
「このラックは50つけてあるよ。
まだ、このラック余っているんで、倉庫に仕舞ってあるから、追加もできるけど、50もあれば十分でしょう」
「ああ、『シュンミン』も初めは3つで、しかもこのラックよりも性能的には劣る奴で宇宙に出ていたからな。
十分すぎて、涙が出るよ」
「艦長、何言っているんですか」
「あ、当然だが、これについても……」
「これだけでは申請していないけど、この艦の性能諸元をまとめてきちんと書類にして提出してあるから問題無い筈だよ」
「ナオ戦隊司令。
心配いりませんよ。
私も確認して殿下の承認も頂いておりますから」
俺とマリアの会話をマキ姉ちゃんが聞いていて、補足してくる。




