地元警察の大躍進
この後の話し合いで、今後は今回の要領を踏襲して、地元警察を載せて上に行くことになった。
地元への根回しは殿下とトムソンさんの方で全て済ませるから俺はその指示に従えばいいだけとなった。
殿下との会議は次の航海から途端に効力を発揮した。
早速、不審船を見つけ、そのまま検挙と言った感じで、こちらとしても法的にグレーゾーンではあるが、違法行為でないので気が楽だ。
時々、最初のようなバカも出るが、こちらに攻撃さえしてくれれば、こっちとしても一切の遠慮なく取り締まりが可能だ。
そんな感じで時間は過ぎて行った。
あとひと月もすればこの王国の会計年度が改まるという時に殿下は組織の全員を本部に集めた。
あ、この本部というのは登記上?のもので、首都星ダイヤモンドの雑居ビルにある奴だ。
もうこのころになると実質的な本部はニホニウムに作っていた拠点に移っているので、只本部と言うと組織に属している(一部を除く)人には誤解が生じるので、呼び出しの場合にきちんと場所の記載もある。
ビル名と何階かまでもが書かれているのだ。
まともな組織や会社などでは本社大会議室とだけ書けば済むところを、一々そう書かないと伝わらないと言うのもどうかとは思うが、これが一番各方面に対して軋轢が生じないから殿下も今のところいじる気配がない。
それまでの間、俺の『シュンミン』はこれと言って成果は出ていないが、王国内では、相当数の不審船の検挙が続いている。
軍も今では海賊だけでなく不審船検挙にまで力を注いでいると聞くが、何より、首都星域内のコーストガードの活躍が目覚ましい。
定期巡回を取りやめ、各巡回戦隊が、それぞれ工夫を凝らし巡邏をするようになったのが大躍進の原因だというものも現れている。
そう、定期巡回では全く見つけることができなかったのが、急に見つけられるようになる。
誰が考えても分かるように、情報が筒抜けだったようだ。
それがコーストガードへの軍のプレゼンスが弱くなると同時にいきなり成果が出てきたとなると、今までどれだけ軍が悪さをしていたかと疑いたくもなる。
まあ、あの件でかなりの高級軍人が更迭、不名誉除隊、そのまま逮捕などが有ったので、ある程度は予想もできたが、本当に思うところはある。
現場で命を張って頑張っている一般の軍人のことを思うと、殿下が懸念していた屋台骨の腐敗はかなりのところまで来ていたのだろう。
それと、それ以上に特筆されるところでは各警察本部の宇宙での不審船検挙がここ数か月の間だけで32隻になる。
あの快挙と言われた検挙から急な出来事と、マスコミではちょっとした話題になってきている。
まあ、これは俺たちがあっちこっちとうろちょろした時に見つけた船だが、地元警察の職質で悪さを見つけてのことなどで、成果は全て地元警察のモノと成っている。
まあ、うちのトップである殿下は全てご存じなので、各隊員への評価には問題ないが対外的には成果無しになっているのだ。
殿下が言われるには、我々の成果が特筆されるくらい大き過ぎるとのことで、正直困っていたというから、これで良いのだそうだ。
検挙した不審船は、最初の時と同様に近くの地元警察まで持っていき、地元で捜査される。
なお、最初の時にもあったが、その不審船の実質的オーナーである地元の大物、主に貴族などからの妨害も当然のように起こる。
最初の時にトムソンさんの部下が捜査に協力するために残ったことが幸いして、直ぐに殿下に通報してこと無きを得たが、その後も同様なことが起こった。
また、初期の10隻ばかりの時には、船長など密輸船の主だった人物の捜査中に不審死も多数発生していたことから、最近では宇宙空間で捜査し、そのまま送検してから不審船の乗員を地上に降ろしている。
なにせ、留置所で殺される人があまりに多かったもので、そのおかげで今では不審船を見つけると不審船の方からの抵抗などなく、直ぐに自首するものまで多数出てきている。
その上、司法取引を向こうから願ってくるケースが多いとも聞く。
そんなこんなで、王室の監察官が忙しいこと忙しいこと、前にご一緒したチャーリー監察官がこの間あった時にかなりやつれた顔をして俺にこぼしていた。
まともに仕事をするようになるとどこの組織もブラックになるのはどうしたものか、考えさせられることだ。
そんな忙しいさなか、殿下は俺たちを一堂に集め、直前に迫った発足を前に、発表がなされた。
「お忙しい中、お集まりいただき感謝します。
いよいよ来月、我々の広域刑事警察機構は正式に発足します。
それに先立ち、準備室として動いていた間にも多数の成果を出すことができ、国王陛下を始め各方面から信用を得るに至りました。
そのさなかに、我々の『シュンミン』からは、艦載機だけで海賊船を沈めると言う大成果もあり、陛下よりその功を報いよということで、艦載機チームにこの度栄誉勲章を賜ることになりました。
カリン少尉率いるチーム全員にです。
この集まりの後、カリン少尉のチームの皆さんは私と一緒に宮殿にて叙勲されます。
素晴らしい事ですので、みなさんにお知らせした次第です」
その後、マキ姉ちゃんが登壇して、新組織の組織図やら人事についてやらを発表していた。
なんでも、今回発表した内容は来月正式発足時にそのままマスコミに流されるとか。
この組織のトップである機構長は殿下であり、ナンバーツーになる副機構長にフェルマンさんが就く。
これは誰もが予測したことだが、フェルマンさんの管掌範囲が、組織の監察業務と殿下の補佐となっており、実際に組織を運営する実務部門の責任者に知らない間にマキ姉ちゃんが就いていた。
他からの軋轢を嫌い部長職のままだが、それも本部長を名乗り、組織全般を見ている。
人事については人事局も管掌しているが、これについてはフェルマンさんが見ることになっている。
まあ、組織人の悪さを見張る部門の親分だから妥当だと言えるが、昇進降格くらいしか見ることは無く、それ以外の人事部門の業務をマキ姉ちゃんが管掌するそうだ。
だが、そうなるとこの組織の実質的なナンバースリーとなり、はっきり言って会社でないから役員会や常務会などというものは存在しないが、この3人で組織を切り盛りしていくことになるようだ。
なので、今回の発表でもマキ姉ちゃんが組織についての説明を殿下に代わりしていた。
しかし、あの人確かに仕事はできるとは思うが、どこまで偉くなっているのやら……
その後は、各部長職の人が登壇して色々と言っていたが、はっきり言って内容がない。
殿下が今回集めたのは、カリン先輩たちの叙勲について首都星ダイヤモンドに巣くう魑魅魍魎たちに『うちは陛下より特段に評価されているから手を出すな』というメッセージに他ならないと、この会の後に秘書官のイレーヌさんから教えられた。
うん、貴族政治は俺には分からない。




