お仕事 お仕事
大変お待たせしました。
本日より、新章をUPしてまいります。
この章では、シシリーファミリー討伐後の広域刑事警察機構準備室の新たな取り組みから始めてまいります。
楽しんでください。
「艦長、間もなくニホニウム管制圏内から離脱します」
「本艦の管制圏内離脱と、予定航路を発信しておいてくれ」
「了解しました」
「艦長、艦内モードの変更を進言します」
「ああ、いつも通り頼む」
「ゲストへはどうしますか」
「そちらも上手に伝えておいてくれ、詳細は任せるよ、副長」
「了解しました。
カリン少尉、艦内放送にて、艦長の趣旨に沿って連絡をお願いします。
「副長、了解しました」
「艦内全乗員に通達。
これより艦内モードを離陸モードより、通常モードに変更します。
続いて、ゲストの皆様にご連絡いたします。
本艦の離陸に当たり、ご協力いただき大変感謝いたします。
只今を持ちまして艦内モードが変更されましたので、事前にご説明した通り、規制区域以外への移動、飲食等が許可されました。
また、個室内に持ち込みました機器の使用も許可されますので、随時ご利用になれます。
なお、飲食についてですが、艦内唯一の食堂を解放します、そちらもご利用ください。
これからの航海、皆様の安全のため色々と規制させていただきますが、引き続きご協力ください」
カリン先輩のゲストへの放送はなんだか客船のアテンダントのようだな。
ひょっとしてカリン先輩って、軍人になるよりもそっちの方が子供の頃の夢だったりして……無いな。
殿下と幼少より、この国の未来を憂いていたようなおませさんだったようだから。
それにしても、そつがない。
まあ、今回の任務は、難しい話ではない。
俺たちはただの運転手だ。
「しかし、今回の地上勤務は思いの外短かったな」
「それはすまないことをしたな、艦長」
今回のゲストをアテンドしている捜査室長のトムソンさんが艦橋後方の作戦検討室から出て来るなり、俺の独り言を聞いたのか、詫びて来た。
そうなのだ。
今回の任務は、このトムソンさんの発案から始まった話だ。
俺たちが、最初に攻め落としたシシリーファミリーの大型拠点であるスペースコロニーの他、放棄されていた資源小惑星にある本拠地など、複数の海賊拠点での捜査をしていたトムソン室長は、その当時に感じたのが捜査員の絶対数が足りないということだ。
今まで地上の犯罪の多くが、多かれ少なかれ海賊とのかかわり合いがある。
そのうち、かなりの部分は各惑星内の捜査員のそれこそ血を吐くほどの献身と努力により検挙までもっていっているが、それでも本星である黒幕までの検挙まで繋がることは少ない。
それ以上に、星その者も宇宙に逃げてしまえば、そこでお手上げ状態になるのが普通だった。
今回俺たちが、直接海賊の拠点に入り捜査してきたことで、かなりの実績を挙げて来たが、それは首都星域内の犯罪及び、トムソンさん自身が抱えていた案件のみであった。
海賊がかかわる犯罪は、首都星域だけに限られる筈がない。
他の星域での犯罪にも当然海賊たちの魔の手はあったはずだが、俺たちにはそもそも犯罪そのものを知りようがないので、これ以上はやりようがない。
何より、トムソンさん自身が感じていたあの不条理を他の捜査員も同様に感じていることをトムソンさんはよく知っている。
そこで、シシリーファミリーの本拠地の捜査が、いち段落して帰還した折に、殿下にある提案をしたのだ。
その提案とは、各惑星の警察本部でも海賊の拠点捜査を行えるようにできないかというのだ。
トムソンさん自身が感じていたようにどの惑星の警察にとっても、海賊の本拠地など拠点の捜査を行いたいに違いがない。
そこで、我々広域刑事警察機構が窓口となって彼らへ協力してはどうかと。
我々が、各星域の警察本部から依頼を受けていては、マンパワーが絶対に足りないことは殿下に限らず全員が理解していた。
それになにより、警察官魂というのか、他人に依頼して解決してもらうよりも今まで苦労して捜査してきたものが自分で解決したいに違いない。
これはトムソンさんを始め我々の同僚である捜査室の室員全員の思いでもある。
「トムソン捜査室長。
貴方のご提案の趣旨は理解できます。
理解できますが、実際に行えるかどうか、私には疑問が残ります。
何かお考えがあるのでしょうか」
そう殿下から問われたトムソンさんは今まで捜査しながら考えてきたことを殿下に訴えた。
「どこの警察官も自分の事件は自分で解決したいに違いがありません。
何より、同じ証拠を見ても、その裏に隠されている部分までは、信念を以て捜査してきた人間にしか見えてきません。
ですから、私たちが彼ら捜査員を海賊の拠点に招待して彼ら自身に捜査させるのです。
我々は、彼らの捜査の協力をするのはどうでしょうか」
トムソンさんの提案を受けた殿下はしばらく考えてからにっこりとその提案を受け入れたという。
ちょうど俺たちがニホニウムで休暇のような地上勤務をしているさなかの話だ。
トムソンさんの提案は、少し前から首都星ダイヤモンドの警察本部が一部行っていた話を聞いた時から考えていたようだ。
首都星ダイヤモンド警察本部はコーストガードと同じ建屋に本部を置いていた関係で、裏技を使って、捜査できたわけだが、他の警察ではそうもいかない。
その証拠に、首都星域にある他の警察本部では未だに捜査はできていない。
だから、自分たちが仲介して、王国全土でやろうというのだ。
ちなみに、首都星ダイヤモンド警察本部が使った裏ワザというのは、捜査員をコーストガードに出向させて、捜査させるというものだ。
元々の話、ダイヤモンドの警察本部はコーストガードと同じ建屋に置かれており、少なからず交流があった。
それに捜査員とコーストガードの下級官僚はたたき上げの者が多く、中には学生時代の友人関係の者も多数いた関係で、俺たちが海賊の拠点を落としたと聞くや否や、トムソンさんがしているようにその拠点に捜査に行けるか、誰もが考えていたようだった。
そこで編み出されたのが、警察本部の敏腕捜査員がコーストガードへの出向という形を取り、コーストガードの職員の資格で、拠点捜査に乗り出した。
これは、関係者の間ではちょっとした事件として流れている話で、軍としては気持ちの良い話では無かったが、首都星域内の海賊捜査において、捜査権はコーストガードも持っている。
軍も捜査権は持つが、首都星域内ではコーストガードの方に優先権があるのが暗黙の了解事項だ。
元々はコーストガードも軍の下請けのようなものだったから、今までならそれで何ら問題無かった話だが、俺のデビューにもなった事件で、コーストガード内での軍出向組の声が非常に小さくなったことと、その拠点を落とした最大の功績が軍では無く、どちらかと言うとコーストガードに近い警察のような立場の俺たちだったこともあり、拠点を監視している軍でも受け入れたという話だった。
一時的にスペースコロニーの管理が第二艦隊にあった時には、このような捜査員もほとんど軟禁状態で、満足に捜査できなかったようだが、それも自身の暴発により、今では聖域なき捜査を許されるに至った。
軍としては、軍の不利益になりそうな部分だけは隠しておきたかったようだが、王国全体がそれすら許されない雰囲気になっている。
それを間近で見ていた殿下は、これをより発展させてすべての警察に開放するように考えた。
ただ、各拠点までの足が無い警察に対して、その足を我々が提供することで、やみくもに捜査官が各拠点に乗り込んでの混乱を避けることもできるというメリットを生み出したのだ。
勝手に捜査員が多数あの狭い拠点に押しかけてもろくに捜査などできないばかりか、管理している軍の邪魔にすらなり、良いことなど一つもない。
偶々ダイヤモンド星の捜査員が少数だから結果が出たのだ。
そこで、今回殿下の行おうとしていることは、その捜査員たちの間に入り、調整を行おうとするものだ。
しかも、宇宙に点在している各拠点への送り迎え付きでだ。
また、現地での捜査に慣れたトムソンさんの部下をアテンダーに付けてと、まさに至れり尽くせり。
これなら、結果が出ないはずは無かろう。
ダイヤモンド星の警察本部は、コーストガードに足の役割をさせて、今ではほとんど自分たちの捜査も終えているが、同じ首都星域にあるニホニウムやルチラリアの警察にはそんなことができない。
なので、今回、第一弾としてニホニウムの捜査員とルチラリアの捜査員をあのスペースコロニーまで連れて行く仕事が回ってきたのだ。
毎回私の作品を楽しんでくださる読者の方には感謝の言葉しかありません。
軽快なテンポで話をUPしていければ良かったのですが、一月以上の間が空いてしまいお詫びします。
ここから言い訳
正直、毎回ですが、新章を書きあげると、ひとまず一安心してお休み……
数日休んで、次には入れればいいのですが、気が付くと簡単に一週間がたっていたり、そこから展開などをぐずぐずと考えていると平気で時間が過ぎて行きます。
前に感想を頂いた時にもお答えしましたが、それに今回はシシリーファミリーとの激闘に決着がつき新たな展開になるのですが、そうなるとなかなか次の展開を作りこんでいくのが……
本当に申し訳ありませんでした。
暫くグタグタな展開が続き、新たな……それは今後をご期待ください。




