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捜査室長の思い

長らく投稿する間隔が空いてしまいましたが、やっとある程度溜まりましたので、投稿を始めます。

章の半分くらいしかまだできておりませんが、お楽しみください。

それでは『シシリーファミリー』との激闘の章が始まります。

 

 捜査室の面々を連れて帰ることになった。

 軍人以外では王宮からのお役人も、スペースコロニーにいるが、お役人たちには仕事が残っているらしい。

 『新たに別の仕事ができたので広域刑事警察機構の方とはご一緒できない』と見送りに来ていたチャーリー監察官が俺たちに丁寧にお断りの弁を述べていた。

 どうも俺らのせいで仕事が増えたようだ。

 俺は心の中で申し訳ないとだけ思い、スペースコロニーを後にした。


 俺は連れて帰る捜査室の方たちに『シュンミン』での部屋に案内して、いつものお約束を演じた。

 『シュンミン』の艦内が贅沢な造りになっていることは、既に我々広域刑事警察機構内では常識となっている。

 前に搭乗させた機動隊員や、いつもこの艦に交代で詰めている保安要員たちからも聞いていただろう。

 それに、何より殿下が乗る宇宙船だ。

 王室の一員である殿下の御座船だということで、艦内が贅沢な造りになっていることについては組織に属する全員が納得していたようだが、乗員用個室に案内したら、いつものようにチェンジを要求された。

 とにかく分相応でないとの理由で代えてほしいと言われた。


 前に機動隊員を乗せた時には突入作戦中ということもあって、結局個室は使われることなく終わったが、今回はそう言う訳にはいかない。

 今回の捜査室の皆さんは、この艦のお客様だ。

 『シュンミン』の部屋に余裕がなければそれなりの対応をお願いをするが、今のこの艦は部屋が余っているのだ。


 捜査員の方々をうちの士官と同じ部屋に案内したら拒否された。

 下士官用に使用している部屋も拒否されて、就学隊員が使っている部屋と同じ部屋を要求された。


 これについては、はっきりと言おう。

 この『シュンミン』内においてこの就学隊員用に使っている部屋が一番部屋数に余裕がない。

 すったもんだの挙句、チーフ以上については下士官と同じ部屋に案内して、捜査室長だけは俺が拝み倒して士官と同じ部屋にしてもらった。


 それも、ただ拝み倒しても納得してもらえなかったので、殿下と同ランクの別の部屋を見せた後に艦長室まで連れて行って、『私でも我慢しているのだから』とだけ言って納得してもらった。

 流石に殿下が利用している部屋には案内できない。

 幸いな??ことに『シュンミン』には殿下用の部屋と同等の部屋がもう一つ作られていた。

 マリアいわく、殿下のお友達が来た場合に困るというのだが、これは絶対に違う。

 資材が余っていたことで、勢い余って作ってしまったのが本当の理由だろう。


 そんなことは置いておいて、話を戻す。


 捜査室長のトムソンさんは、自分たちに用意された部屋が、明らかに殿下用の部屋と差が見てとれたので、安心して士官用の部屋に入れると言ってくれたが、それでも本人は納得していないようだ。

 どうも今回の部屋選びは、俺に対する貸しの扱いのように思われている節がある。

 まあ、俺の方でも使われないと言うのもあるので、借りという感じを持っているが、それにしても、世の中やりすぎという物があると、機会があったらあいつらに反省させよう。


 お約束も無事に終わり、落ち着いたらすぐにトムソンさんが俺のところまで来て、お願いをしてきた。

 早速、俺に対する貸しを回収に来たのかと思ったら、どうもそれだけではないようだ。


「艦長、いや戦隊司令と呼ぶべきかな」

「いえ、艦長で結構です。

 それよりも御用ですか」


「ああ、実はお願いがあるのだ」


「お願いとは」

 そう切り出されて言われた願いというのが、海賊船を捕まえた場所に連れて行ってほしいと言うのだ。

 証拠など期待できない海賊船の捜査よりも、『現場百回』と言った感じで実際に現場を見せて欲しいと言うのだ。


「艦長、俺たちは捜査員だ。

 当然、宇宙についてはずぶの素人だと理解している。

 理解しているが、こと捜査においてはどこにも負けないと誇りすら持って仕事をしていることを理解してほしい」

 そう言ってからトムソンさんが話してきたのは、今まで宇宙に関する捜査では全く関わることができずに悔しい思いをしていたという話だった。

 海賊相手では当然ではあるが宇宙空間で船を襲う事件においては、自分たちに出番がない事は理解している。

 しかし、海賊も全く地上に降りない訳では無い。

 そもそも、襲って奪ったお宝の換金は宇宙でもできるが、地上でするよりもはるかに大変だ。

 そのため多くの海賊たちは、地上に降りて地上の裏社会を通じてお宝を換金している。

 また、このスペースコロニーのような事件では、地上で誘拐して宇宙に逃げて行くという犯罪も頻繁に起こしてきた。

 今まで、トムソンさんたちは誘拐事件を捜査していても、犯人が海賊だと疑われた時点で捜査を打ち切られていた。

 犯人が宇宙に逃げてしまえば、トムソンさん達にはどうすることもできないという理由からだ。

 それでも、トムソンさん達は犯人がまた地上に降りた時に捕まえればよいと何度も上層部に掛け合ったが、上から帰ってくる答えはいつも同じ。

 上層部内での政治が影響していたのだろうと嘆いていた。

 上層部は何を恐れているのか、どこぞに忖度して海賊が関わる場合には絶対に捜査をさせない。


 それだけに、今回のように宇宙空間で捜査できたことは、驚きとともに嬉しくもあったようだ。


「殿下は、本当に俺たちとの約束を守ってくれた」


「約束?」


「ああ、俺たちが殿下に誘われた時に話してくれたのだ。

 『私が作る組織には、捜査において聖域をつくりません。

 貴方たちが必要だというのなら、どこだって私が絶対に捜査させます。

 捜査対象が宇宙でも、いえ、喩え王宮であっても必要があれば捜査させます。

 だから私に協力してほしい』と言われて誘われた」


「なら、ここを追い出されるように出て来たのは不満があるのでは」


「思うところもない訳では無いが、どうせもう何も出ないさ。

 それよりも、俺は艦長にも感謝している。

 また、済まないとも思っている」


「へ??」


「俺たちの捜査でも、肝心の情報すら見つけられずに、俺の勘だけで捜査させてしまったことを済まないと思っている。

 しかし、艦長は凄い。

 俺のことを信じて捜査してくれたばかりでなく、結果を出してしまった。

 これには感謝しているんだ」


「はあ~」

 俺はどう反応して良いか分からずに気の抜けた返事を返した。


「しかし、相手はあれだけでは無いだろう。

 まだ、他に沢山海賊連中がいるのだろう。

 これも勘だがな。

 そこで、お願いだ。

 あの海賊船を見つけた場所に俺たちを連れて行ってほしい。

 現場を見てみたいんだ。

 残りの海賊たちを一網打尽にできないかそればかりを考えている。

 だからと言って、俺たちが現場に行っても捜査できるとは俺でも思っていないが、この目で確かめてみたい。

 現場を見て、どんな些細な事でも何か発見できないかを俺自身が確かめてみたいのだ。

 お願いできないだろうか」


 トムソンさんは、俺に向かって真摯にお願いしてきた。

 俺としても、もう一度は行かなければとは思っていたのでトムソンさんからの依頼を受けるのは構わないが、殿下の居る本部に報告だけは入れておかないとまずい。


「構いませんよ。

 いわゆる捜査員の方の言われる『現場百回』とかいう奴ですね。

 私も子供の頃に見たドラマで見聞きしたことがあります」


「ああ、ドラマなどでは良く聞く話だな。

 だが俺たちは、そんな格好の良い物じゃあないよ。

 まあ、似たような感じだがな。

 でもいいのか。

 頼んだ俺が言うのもあれだが」


「ええ、私もあの付近の再調査の必要性は感じておりましたから。

 しかし、ここで事件を起こしたばかりですので、殿下に何も言わずに行く訳にはいきますまい。

 殿下に許可を得てからになりますね」


「確かにそうだよな。

 しかし、いったん戻ってからとなると余分な時間がかかるな。

 時間の無駄を省くには、ここから直ぐに行きたいのだが……

 そうだ、この船から殿下に連絡を取れないか」


 そう言われて、俺は前の改造で新設した無線室にトムソンさんを連れて行った。

 この間、あのドックに寄った時に改造してもらった無線室だ。

 通信については、普段は艦橋から操作しているが、乗員たちの私信などでは新設の無線室を利用している。

 通常ここには無線担当を一人は常駐させているので、その者に殿下に連絡を取ってもらった。

 後は直接捜査室長であるトムソンさんからここでの簡単な報告と現場への同行の許可を求めている。


 長くなりそうだったので、俺はトムソンさんを残して艦橋に戻ることにした。


 俺はスペースコロニーからの出航の許可が下りたとの連絡を受けたので、とりあえずこのコロニーの管制エリアから退去するために『シュンミン』を動かした。


「艦長、この後はどうしますか」

 副長が行き先を尋ねて来た。


「ああ、殿下からの許可待ちだが、また海賊を捕まえた場所に戻る」

「え?

 捜査員の方を乗せたままですか」

「ああ、捜査室長から頼まれた。

 あの場所に連れて行ってほしいとな」


 俺と副長のメーリカ姉さんが話していると、通信士のカオリが報告してきた。

「艦長。

 本部からの通信です。

 殿下より、あの海賊船拿捕ポイント付近の捜査を捜査員と合同でしてほしいとの依頼を受けました」


「受諾の旨を返信しておいてくれ。

 そういうことだ、副長」


「了解しました。

 進路、海賊船拿捕ポイントへ」

 副長の一言で、艦橋が急に忙しくなった。

 それぞれの担当者が各セクションへ指示を出して『シュンミン』を動かしていく。


ストックがなくならないうちにこの章最後まで投稿できるように頑張りますが、お約束はできません。

また、投稿間隔が開くようなことがありましてもお許しください。

明日以降もストックが続く限り毎日投稿します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  それに、何より殿下が乗る宇宙船だ。  王室ご用達だということで、艦内が贅沢な造りになっていることについては組織に属する全員が納得していたようだが、乗員用個室に案内したら、いつものよ…
[一言] いつも楽しい話をありがとうございます。納得がいくまで推敲されて、偶にで良いので更新してください。
[一言] お待ちしておりました。 物語が進みそうですね。楽しみにしています。
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