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敵艦発見

 

「そう言うことだ。

 こちらから攻勢にかかるぞ、副長」


「ハイ、艦長。

 『シュンミン』はこれより戦闘に入ります。

 本艦を攻撃ポイントまで移動」


「了解しました」


「敵の攻撃線上に達したら主砲を敵の攻撃軸線に向け斉射」


「本艦指定ポイントに達しました」


「いつでも主砲は撃てます」


「主砲斉射。

 続いてもう一度斉射の後に光子魚雷を同じ方向に2本発射せよ。

 信管指定は瞬発のみ。

 距離は無限で」


「魚雷準備できました」


「主砲次弾発射します」


「続けて魚雷発射」


「魚雷発射しました」


「もう一度光子魚雷を発射するぞ。

 準備でき次第2本発射だ」


「魚雷準備します」

 艦橋にあるスピーカーを通して前部魚雷発射管制から返事が入る。

 『前部魚雷発射管制です。

 次発装填完了』


「了解。

 魚雷を発射」


 艦橋はそれこそ攻撃の命令で怒鳴り合っているようだ。


「艦長、攻撃命令は全て完了しました」


「よし、後から撃った魚雷を追いかけるぞ。

 副長、『シュンミン』であの魚雷を追いかけてくれ」


「そう言うことですね。

 分かりました艦長。

 航海士、速度変更、最大船速で魚雷を追いかけるぞ」


「え?

 この小惑星帯で最大船速を出すのですか」


「ああ、しかし大丈夫だ。

 もし障害物があれば先に魚雷がぶつかるから大丈夫だ。

 だからあの魚雷に置いていかれないようにすぐに動くぞ」


「了解しました。

 本艦は最大船速で魚雷を追いかけて直進します」


「哨戒士。

 付近の警戒だけは怠るな」


 この作戦での戦闘は次の段階に進む。

 付近を警戒しながら前方にある筈の敵に最大船速で向かう。

 『シュンミン』の最大船速ではちょっと遅い魚雷と間違われるくらいの速度は出ているので、奇襲にはもってこいだ。

 しかし、この作戦が成功するにはこちら側が先に敵を発見しなければならない。

 先に敵に『シュンミン』が発見されれば攻撃を受けることになるが、もし攻撃を受けても先の攻撃から推測するにそれほど大きな攻撃力は無いと考えている。

 まあ、それでも一応警戒だけはしておくか。


「前方に最大出力でシールドを張ってくれ。

 それと哨戒士。

 前方の警戒はもちろんだが他からの奇襲にも十分に注意してくれ。

 特に敵艦載機などは見落としがちだ。

 その警戒もよろしくな」


 艦橋内はひとまず攻撃がやんだこともあり静かになった。

 オペレーション上必要最低限の声しか聞こえてこない。

 緊張する時間がそれこそ延々と続くような感覚になって襲って来るが、実際にはまだ10分と時間は過ぎてない。


 静寂とは言えないが緊張感が漂う艦橋にひときわ大きな声で報告がなされる。


「前方に金属反応。

 推定距離0.03」


「目標までの時間は」


「およそ5分」


「減速。

 速度を1AUまで減速してくれ」


「減速します」


「艦長」


「ああ、大丈夫だ。

 もしあれが敵だとしても、ここまで近づければ奇襲も成功だと言えよう。

 それに何より、準備を整えてから怪しいものを調べたいのでな。

 それで、哨戒士、詳細は掴めたか」


「いえ、金属反応以外はまだ距離がありますから……

 あ、待ってください。

 ………

 前方の金属反応に熱源反応をとらえました。

 これは明らかに人工物です」


「敵ですかね」

 副長が俺に確認してくる。

 これは艦橋内の乗員に注意喚起するためだ。


「そう考えて準備する方が良いだろう。

 もう少し情報がほしいが、いつ何時攻撃されるか分からないから警戒に当たってくれ」


「「「ハイ」」」


 5分後、哨戒士のカスミから続報が入る。


「熱源をとらえました。

 金属反応のほぼ中央部からです。

 このパターンは宇宙船です。

 間違いありません」


「敵に決まったな。

 カリン少尉」


「ハイ」


「艦載機の準備は」


「いつでも出せます」


「なら艦載機を出してくれ。

 『シュンミン』の後方及び側面の警戒を頼みたい」


「え、艦載機で前方の宇宙船を調べるのではなくて、ですか」


「ああ、既に攻撃をされているから、艦載機での調査は避けたい。

 『シュンミン』の方が丈夫だしな。

 この艦で直接調査を行う。

 調査中に奇襲でもされたらたまらないので、その警戒を頼みたい」


「了解しました。

 艦載機2機を発進させ、付近の警戒に当たらせます」


 これで、もし前方の船が囮だとしてもいきなり奇襲されることは無いだろう。

 俺は、速度を維持したまま怪しい宇宙船に『シュンミン』を向かわせた。


 目的の宇宙船に近づくほどに徐々にその宇宙船の情報が集まって来る。


「金属反応の大きさから、超大型の船では無いですね。

 熱源の反応からは小型の宇宙船クラスでしょうか。

 クルーザーよりは大きいものと思われます」


「それはおかしくないか。

 あの攻撃力はかなりのものだぞ。

 軍でいえば少なくともイージス艦以上の主砲クラスの威力があったと思うのだが」


「そうですね。

 私もそう思いますが、センサーからの情報ではそれほどの出力は感じられません。

 もう少しすると船影が捉えられますので、それまでお待ちください」


「船影をとらえました。

 拡大してスクリーンに投影します」


 カスミがコンソールパネルを操作して、艦橋メインスクリーンに捉えた船影を映し出してきた。

 この距離なら地上では揺らぎなどが有り、はっきりした船影は望めないのだが、ここは宇宙空間、何もない空間だから当然揺らぎも無いし、光の拡散による邪魔も無い。

 あるのは距離による光の減衰だけだ。


「この映像は、もう少し拡大できるか」


「画質が悪くなりますができます」

 カスミはそう答えてから拡大していった。


「あ、私これ知っています」

 哨戒副士のバーニャが叫んだ。


「何を知っていると言うんだ、バーニャ」


「私この船に乗ったことがあります。

 確か有名な造船会社で作られた貨客型宇宙船とか言っていました。

 幼馴染が同じ型の船に乗っていますから、前に彼を迎えに行った時に見たことがあります」


「そう言われれば、そう見えますね。

 今照会してみます。

 ………

 出ました。

 バーニャの云う通り、シャフト造船製のブロックチェーンですね。

 この会社の主力の中型貨客型宇宙船です。

 現在までに230隻ほどのロールアウトの実績があるそうです」


「改造型海賊船か。

 さしずめ主砲だけ大きなものを積んだということかな」


「でもおかしくないですかね」


 そう言ってきたのは軍艦フェチのカスミだ。

「何がおかしいと言うのだ」


「あのサイズの宇宙船にしては熱源が小さすぎます。

 今計測された数値だけで言えば小型船くらいしか熱源は捉えられていません」


「熱源を遮断する何らかの改造をしているとか」


「それだと熱源が大きすぎます。

 熱源を遮断する目的の改造であればもう少し小さなものにならないと、改造の意味がありません」


「宇宙船が特定されたら新たな疑問が出て来るか。

 どちらにしても調査する必要があるのは変わらない。

 あの宇宙船から主砲クラスの攻撃を警戒して近づくぞ。

 速度はもう少し出しても構わないが、十分に敵からの攻撃に備えてくれ」

「了解しました、艦長。

 航海士、速度変更5AUへ」


「速度5AUに変更します」


 恐る恐る近づいてみれば改造宇宙船を見つけたという訳だ。

 敵からの攻撃を警戒しながら俺らはその宇宙船に近づいていった。


 しかし、あの距離で艦載機を見つけるくらい優れた哨戒能力がある筈なのだが、ここまで俺らが近づいても一向に反応を示さない。

 俺は罠を警戒して、艦載機にさらなる付近、特に後方の警戒を命じた。


「艦長、いくら探してもあの船以外には人工物は見つかりません。

 それこそ小惑星の影に隠れたものも探していますが、何もありませんね」


 おかしい、絶対に何かある筈だ。

 あの距離で艦載機を見つけた海賊たちが明らかに政府の宇宙船を見つけても何もしてこない。

 この距離まで近づけばレーダーでなく光学センサーで捉えている筈で、拡大されればこのシュンミンほど目立つカラーリングの船は無い。

 逃げるか攻撃するか何かしらの反応があっても良い筈なのだが、それが全く何も無いのだ。

 もうこうなると不気味以外に何もない。


「ここまで近づいて何も反応が無いとなると罠の可能性が大きいな。

 となると後ろからの攻撃が一番有力なのだが、どうもそれも無い。

 残るはあの船だけだが」


「近づいてきたら自爆とか」


「私たちがここに来ることがあらかじめ分かっていれば準備もできたでしょうが、それにしたって準備が大変よ」


「そうですね、あのサイズの船ですと準備だけでも半月はかかるかと」


「なんで、それこそエンジンを臨界まで上げて暴走させれば大爆発するでしょ」


「どこの世界に民間船で臨界まで出力を上げられる船があるのよ。

 安全装置を全て解除したって燃料系統のジョイント部分が持たないわよ。

 絶対に臨界どころかその半分も出力は出せないはずよ」


「だってこの艦は……」


「『シュンミン』も民間船からエンジンを流用してきたけど、あの社長がそんなことを見逃すはずないでしょ。

 全部軍用規格品に置き換えているわ。

 だってそれ私も手伝ったから」


「まず、自爆は無いわね。

 いや出来ないでしょうね。

 大体今どきの海賊たちが高価な爆薬を持っているかも怪しいでしょう」


 確かに我々が使っている宇宙船用の燃料は、プラズマ状態にして初めてエネルギーを取り出せる代物なので、そのままでは火もつかない極めて取り扱いが容易なものだ。

 子供が遊んでいても誰も止めないくらいに無毒無害で安全なのだ。

 そんなのをいくら大量に集めても爆発なんかは絶対に起きない。

 自爆を考えても先の会話に出たように軍艦ならいざ知らず民間船では難しい。

 改造民間船であることから爆発は起こせるかもしれないが、それも精々主砲周辺だけの話だ。

 主砲のエネルギーも同じものを使っている。

 主砲内で限界までプラズマを作らせても……あ、無理だ。

 主砲から勝手に外に向けてエネルギーを出されてしまう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、障害物があれは魚雷が吹っ飛ばすし、なければ奇襲と。…ぶっ殺す気満々じゃねーか((゜□゜;))ボスさえ取っ捕まえればかまわない西武○察戦法ですかね? 殿下「証拠がおれば無問題。なん…
[一言] お久しぶりです!今年も楽しみに読ませていただきます 頭に血が上って視野が狭くなるなどまだまだ未熟なナオですが、その後に魚雷の後ろを進むという奇襲を行なうなど冴えた面もありますね 謎の船の真相…
[一言] 40年ほど前シャープのMZ-80Cというキット式パソコンで、機械語で疑似スタートレックゲームを作り楽しんでいました。その頃の戦闘のイメージが今回の話で思い出しました。
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