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領主ジェドのとんでも発言

ランキングからは下降しましたが、ジェドは頑張っております。

 女暗殺者の腹が鳴ったのを合図に、俺たちは昼食を摂ることにした。

 付け加えると、暗殺者も一緒だ。

 ただ、下着だけってのは目のやり場に困るので、服は姉のお古を提供させて貰った。

 元の服は、暗器やら凶器がやたら隠されてるので、バイゼルが許可しなかったのだ。


 それにしても……


「ガツガツ! ングング! ガツガツ!」


 よ、よく食べるな……

 相当、腹が減ってたのか?


「お、おい。そんな慌てなくても、誰も取りはしないんだぞ?」

「そう言って甘い戯言を繰り返せば油断すると思うんでしょ? そうはいかない」


 と、またガッついている。

 なんだそれ?

 俺はただ正直に言っただけなんだが……


「ご当主のお命を狙ったばかりか、食事まで与えられたというのにその態度……、やはり殺します」

「ふぇ!? ちょっ、タンマタンマ! あたし、まだご飯食べ切ってないよ!?」

「基準がそこかよ……」


 飯食べ切ったら死んでもいいってか?

 なんて儚い人生なんだ。


「バイゼル、落ち着け。俺がしたくてしてることだ。そういきり立つな」

「ぬっ……、ご当主の温情、ありがたく思いなさい!」


 そう言うとバイゼルは悔しそうな顔でその場から一歩下がった。

 ふぅ、それにしてもまぁ。


 女暗殺者を再度見る。


 テーブルマナーもクソもあったもんじゃない。

 それは俺も似たようなもんだけど。

 とにかくガッついてる。

 けど、それが何かなぁ。

 微笑ましいというか何というか……


「で、お前名前は?」

「は? 何言ってんの?」

「いや、だから名前だよ、名前」

「そんなもん、あるわけないじゃん」

「は? 名前がない?」

「小さい頃、師匠に拾われたの。それで、暗殺術を仕込まれたの。名前は一人前になったらやるって。それまでの名前は捨てろって言われて……」


 なんだ、急にショボくれたな?

 肩を落として、凄く悲しそうな目をしてるんだが?


「ご当主、氷のミショーは誘惑の使い手でした。さすれば……」

「バイゼル、俺は今、こいつと話してる。少し黙っててくれ」

「……失礼致しました」

「『路地裏のバイゼル』がいるのに、誘惑なんて使えるわけないじゃん。使った瞬間、あたしを殺すんでしょ?」

「てことは、使えるのか? その誘惑っての」

「一応ねー、師匠程ではないけど」


 はぁ、そうなのか。

 ちゃんとそういうのは習うのか。


「で、お前の目的はなんだよ?」

「……言えない」

「やっぱダメか」

「当たり前じゃん! 依頼主との契約は絶対だからね、守秘義務はあって当然! 失敗したらマジのガチでヤバいんだから!」

「……もう、失敗してるだろ?」


「あ……」


 俺がそう言った途端、女の顔から血の気が一気に引いた。

 急に塩らしく……じゃない、力が抜けていく感じだ。

 生気が抜けたとでも言おうか。


「……し、失敗、しちゃっ……た」


 途端、泣きそうな表情になり、それまで手にしていたフォークを机にコトンと置くと、力なくうなだれた。


「バイゼル、どゆこと?」

「依頼主からの契約は絶対でございます。依頼を受けるということは、ある意味弱みを握られることにもなります。仮に失敗すれば、たちまち命を狙われるでしょうな。成功しても命は狙われますが」

「どっちにしても命を狙われるって、どんな職業なんだよ?」

「ヘイ、トム君! またどさくさに紛れて飯を食って!」

「いいじゃねぇか! 俺も暗殺者に興味あんだよ」

「君にはアネッサがいるだろーが!!」

「……何ムキになってんだよ、兄貴は?」


 トム君にそう言われて鼻を「フン!」と鳴らす。

 話を戻そう。


「で、こいつは失敗したわけか」

「確実に消されるでしょうな」


「……うっ!」


 バイゼルがそう言うと、暗殺者はまた、顔を青くした。


「失敗……、消される……、死……」


 顔を引きつらせ、体は震え、今にも消え入りそうな程に影が薄くなりつつ……


 大丈夫か?


「お、おい、お前さ、大丈夫?」

「兄貴ー、何暗殺者に『大丈夫〜』とか聞いてんだよー?」

「黙れ、シャラップ! トム君、暗殺者とは言え、女性がだな」

「ご当主を惑わせたか? やはりこの女! 殺す!」


 どぅわーーー!

 やめろやめろやめろー!

 どうしてそうことを荒立てる? 大きくする!?


「とにかく落ち着け! みんな、深呼吸しろ! バイゼルは何もするな! こいつが逃げそうになったら取り押さえるだけでいい! 首にグサっとか、余計なことすんなよ!」


 俺はつい大声を出したが、それが功を奏したのか、場の空気は一気に静まった。

 トム君は目をパチクリさせている。


「あ、兄貴、どうした?」

「ご当主?」

「ジェド……?」


「決めた!」


「「「何を!」」」


 俺はがっくり肩を落としている暗殺者の腕を持ち上げ、立たせると、ガッチリその肩を俺に寄せた。






「こいつの身柄は俺が預かるぞ!」








「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」





 俺なんか、まずいこと言ったか?






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