11 Eランク冒険者になりました
「は、始まってすらないですよ?テストは」
「え?」
「さっきのがテストじゃないのか?」
「あ、あれはアクシデントですよ!あんな高レベルなテストしませんよ?!あの状態から復活させるなんて不可能なんですよ?!普通は!!!」
「そうなのか」
てっきりあれがテストだと思っていた。
そう思っていたら、ちょいちょいと俺の袖を引っ張る誰かがいた。そちらを見ると
「あ、あの!ありがとうございます!」
ニーナが立っていた。
「天使は見えなくなったか?」
調子は問題ないかということを冗談交じりでそう聞いてみた。
「見えていますよ」
少し恥ずかしがりながらそう口にした少女に俺は神妙な顔つきで答える。
「本当か?」
もし本当なら治ってないじゃないか。
まだお迎えがいるのか?
「はい。目の前にいます。素敵な王子様、お名前を教えてくれませんか?」
「重症だな」
俺はもう一度ニーナのステータスを見てみたがやはり怪しい点はない。
今すぐ死んでしまうこともないだろうが。
そう思っていたら
「重症なのはロードみたいね」
ナティアが苦笑しながらそう言っていた。
「お、俺が?」
「うん。その子はもう問題ないよ」
「だが見えないものが見えてるぞ。幻覚……」
俺の言葉は続かなかった。
「鈍いなぁ。まぁいいや」
そう言ってニーナに目をやったナティア。
「私の彼氏だから手を出しちゃだめ」
そんなことを言っているナティアを見て俺は目を細めた。
「ナティア、お前も見えないものが見えてるのか?」
「はぁ?」
ナティアが呆れたような顔をした。
何なのだこいつらは。
「この重症なニブチンはロード。覚えた?」
「は、はい!ロード様ですね!」
ナティアとニーナがそんな会話をしていた。
それにしても心外だ、俺は鋭い自負があったのだけど。そうか。鈍いのか。
何が鈍いのかは分からないけど気をつけるか。
そう思っていたら
「ロード様」
そんなことを言いながら俺に擦り寄ってくるニーナ。
「救ってくださったこの命あなたの為に使わせてください」
そう言われましても。
「好きに生きてくれ」
「私の好きに生きていいのですね?ならばロード様のお傍に♡」
何でそうなるんだよ。
「ちょっと離れなさいよ!」
「離れませんけど」
ナティアが引き剥がそうとしているけど離れないニーナ。
まぁ、悪い気はしないというのが正直なところではあるが。
そう思っていたらメイガスが近寄ってきた。
「あんたのとこの仲間だろ?こんな事言ってるけどいいのか?」
「情けない話だが俺はそいつを見捨てた。仕方ないとは言え初めから救うことを諦めていた。今更とやかく言うつもりは無い。好きに生きてくれニーナ」
「あ、ありがとうございますリーダー!」
「おう!俺こそ悪かったな」
おう!じゃないんだが、引き取ってくれ。
そう思っていたらメイガスが口を開く。
「それよりも見てくれ。ロード」
そうしてメイガスがカウンターの上に広げたのは何かの地図だった。
上に聖なる森と書かれてあるからあそこの地図なのだろう。
そしてメイガスが1つの区画を示した。
「今まで俺たちのパーティを含めてみんなここで行き詰まっていた」
「ここは?」
俺が訊ねるとニーナが口を開いた。
「毒蛙がいるボスエリアですよ」
「そうだ。死の毒という強力な技を使ってくるボスモンスターだ」
続けたのはメイガス。
「これを食らってしまえば助からない。そう言われていた。だから俺もニーナを諦めた」
「いた?いる、じゃなくて?」
「あぁ。あんたの登場で常識が変わったんだよロード。あんたが初めて打ち破ったんだよ死の毒を。とんでもない偉業だぞ誇れよ」
へー。そうだったんだ。
「そもそも死の毒のダメージ減少量が大きくて、それより回復するなんて誰も考えもつかなかったしそれを実践出来るはずもなかったんだよ……あんたは天才だ」
「そうです!ロード様は天才ですよ!」
こんなに褒められていいんだろうか?
そう思ってしまう。魔法学園にいた頃は罵詈雑言を浴びせられた事もあったし、何だか不安になってくるレベルだ。
「それでだな。あんたがいればこの毒蛙も恐らく突破出来るだろう。今まで攻略法が分からなくて仲間が欠けていきジリ貧になっていた。しかしあんたがいればまだ道は見える」
「そうです!ロード様は救世主なんです!」
とそんな事を聞いていたらちょいちょいと俺の脇を小突いてくるナティア。
「だってさ救世主様」
「はぁ……」
そんなに期待しないで欲しいんだが、まぁ何はともあれ俺は次の作戦に参加出来ることになった。
「それで今からクエストの内容を説明するんだが」
メイガスの話が終わりある程度作戦の流れを理解した俺。
「じゃあなロード。あんたのお陰で歴史が変わるよ。当日は頼むぜ」
そう言ってメイガスは去っていった。
「あ、あのー」
メイガスを見送った俺は受付嬢に声をかけられていた。
「これ、ギルドカードです。テストは受けていませんが今ので実力を見させてもらったので冒険者適正ありと判断しました」
渡された冒険者の証に目を通す。
そこには俺の名前と冒険者ランクであるEランクが刻まれていた。
「ちょっと!Eランクってどういうことですか?!」
ニーナが受付嬢にそう言っている。
「あんな魔法使ってどうしてEランクなんですか?!」
不服そうな顔でそう言ってくれているけど
「ごめんなさい。ギルドの規定で現状Eランクなのです。それから回復術士はEランクにしかなれないのです。上を目指すのならば剣士などのメジャー職を練習した方がいいかと」
「そんな規定変えた方がいいですよ!恥かきますよ?!ロード様をEランクにする規定なんておかしいじゃないですか?!」
そう言えば俺テスト受けてないよな。
確かにそうだな。
「俺はテストを受けていないな。そんな俺をEランクとは言え冒険者登録してしまうなんておかしいよな。俺にはやはりEランクすらまだ早い、か」
俺はカードを返そうとしたが
「ち、違いますよ?!もっと上のランクのはずなのにEだからこんなに言ってるんですよ?!」
とニーナが叫んでいた。




