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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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【番外編】地獄へ

「おい、おい、何だよ、これは……」


 王都を出発し、辿り着いた国境付近。

 丘から見下ろした国境沿いの土地は……まさに地獄。


 木々は倒れ、草は燃え落ち、黒い土がむき出し。


 埋葬できないまま朽ちて行く敵味方の遺体。そこに群がる鳥。


 初めて目にする戦場に、多くの騎士が身震いすることになる。


 それでも王立イーグル騎士団は、武術の腕が凄腕の者ばかりで構成されていた。

 特に“ライル理論”が浸透してからは、皆、その腕前が百発百中になっている。


 ライル理論。


 それは「急所に命中しなければ反撃される。生き残るなら百発百中しかない」というもの。


 ライルの「心臓に命中しなかった場合、反撃される。その反撃で味方がやられるかもしれない。自分が命を落とすことになるかもしれない。よって百発百中ではなければならないんだ。生き残るためには」この言葉が要約されたものが独り歩きした結果だ。……いや、自分が広めたのだが。


 ともかく腕前だけは一流だが、戦場での経験がない精鋭騎士は、戦場を見て震えあがることになる。


 その中で一人落ち着いた表情をしている男がいた。


 ライルだ。


 ライルはすぐに斥候を使い、土地の正確な把握に努めた。


「何十年に渡る戦闘で、地形が地図とは変わっています。川の流れさえ変わっているのです。まずは土地を知り、勝ち筋を見つけるが最善かと」


 そう団長にアドバイスをするライルは……もはや彼が団長にしか見えない。


 さらにライルは自身が平民出身であることを隠さず、王立ソード騎士団の騎士とも、その配下の兵士とも、あっという間に打ち解けた。


 王立ソード騎士団は、最前線で戦うため、常にその数が不足している。ゆえにライルのような腕の立つ平民が、多く所属していた。対する王立イーグル騎士団は、貴族の三男以下の割合が圧倒的に多い。平民出身なんて歴代合わせても一桁。


 貴族のお坊ちゃん騎士団と、ソード騎士団の騎士達が揶揄することもしばし。よって同じ騎士とはいえ、仲がいいわけではなかった。


 だが平民出身でありながら、王立イーグル騎士団の副団長まで上りつめたライルに対し……それでも最初は、平民なのにイーグル騎士団の副団長なんて、それならソード騎士団の団長になれただろう──そんな白い目でも見られていた。


 それでもライルは、戦地なのに練習と訓練を欠かさず、実際に戦場に出ると、明らかに強い。


 実力主義のソード騎士団だからこそ、ライルの凄さを実感し、次第に戦場の仲間として認めるようになる。兵士達は言うまでもない。剣術もろくに分からないまま戦闘に参加している兵士もいる。普段は農作業をしているような、農民だ。ライルは彼らに、大変丁寧に剣術をレクチャーしてあげたのだから……。


 ライルを「師匠」と呼ぶ兵士が日増しに増えている。


 こうしてライルのおかげで、イーグル騎士団、ソード騎士団、兵士達は、結束を固めていく。それは即、戦力の向上につながる。


 ソード騎士団の副団長の死により、ザーイ帝国は一時、勢いを増していた。だがライルにより結束を強めることで、ザーイ帝国はその勢いを削がれる。


 盛り返したことに気分がよくなり、ついライルに尋ねてしまう。


「ライル、どうだ? このまま帝国軍を押し返すことはできるか?」


「……季節が悪いな」


 季節。

 そう、今は晩秋。

 まもなく冬に入る。

 そうなると冬営となり、双方攻撃を控え、春を待つことになるのだ。つまりここで一時停滞となる。


 とはいえ。


 ザーイ帝国はここで暗躍することが多い。


 つまり騎士や兵士を休ませ、代わりに刺客を送り込む。ピンポイントで指揮官クラスの命を狙ってくるのだ。聞くとこの冬営期間に、ソード騎士団の隊長クラスは数名落命している。


「ベルナード、気を抜くなよ」


「ははっ! 今、ザーイ帝国が狙っているのは、ライル、お前の首だよ。いきなり現れ、騎士と兵士の気持ちを一つにし、戦況を逆転させたんだ。ソード騎士団の副団長に続き、イーグル騎士団の副団長も消し去ってやると、ザーイ帝国は息巻いているんだぞ」


 この言葉を聞いたライルは「自分はここで死ぬわけにはいかない」と、口元に不敵な笑みを浮かべる。それは何とも怖くもあり、でも決意も感じられ……。


 有言実行で副団長まで上りつめたライル。


 本気で団長を目指し、爵位を得るつもりなんだ。

 こんなところでくたばるつもりはないんだな。


 そんな会話をライルと交わした数日後。


 野営地の近くを旅の踊り子の一団が通りがかった。


 砂漠の国から来たという踊り子は皆、スタイル抜群。王都にいる令嬢とは違い、一枚布を巻きつけたような服を着ている。体の凹凸がハッキリと分かり、これには騎士や兵士も落ち着かない。


「どうだろう、フィン上級指揮官。これから冬営に入り、娯楽もなくなる。今宵は踊り子を招き、宴会にしては?」


 イーグル騎士団の団長は、父親というより、祖父に近い年齢だった。


 王都の防衛がメインの任務。


 イーグル騎士団の団長は、儀礼の場で完璧な振る舞いが出来る、爵位も上位な紳士的な人物が選ばれていた。パッと見たその姿は、温厚そうな文官。騎士団の団長であるとは、隊服を着てないなければ、分からないかもしれない。


 対するソード騎士団の団長は、見るからに偉丈夫で顔に切り傷もあり、その見た目だけで、新兵は腰を抜かしそうだった。


 というわけでライルと同じような、真面目な気質の団長から、踊り子を招いての宴会の提案が出るのは驚きだった。だがこれから寒い冬を迎え、女気など皆無になる。冬を迎える前に、部下の気持ちを盛り上げたいと考えた、団長なりの配慮なのだろう。


「団長、その提案、皆、喜ぶと思います」


「そうか。ではフィン上級指揮官。ソード騎士団の団長にも話をつけ、宴会の仕切りを頼む」


「お任せください」

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