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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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84/112

終わり

 人間にはいろいろな性格の人がいる。


 誰かの幸せや成功を、心から喜べる人もいれば、嫉妬し不幸を願うようなタイプも存在した。


 そう、ユーリのように。


 ユーリは自分がいつも世界の中心にいないと許せなかった。

 何に置いても自分が一番。

 さらに自身が欲しいと思ったものは、手に入れないと気が済まない。


 その我欲の強さ、偏執な程の自己愛で、最後は墓穴を掘ることになった。


 結局、ユーリは妊娠していたが、その父親は間違いなく、第二王子ではなくエドガーだ。


 第二王子を貶め、虚偽の発言をし、彼を脅したこと。

 本来、許されることではなく、死罪が相当だ。


 ただ、ユーリのお腹には新しい命が宿っている。


 しゅの教えで妊婦への格別の配慮が求められているわけではないが、そもそもが罪人が悔い改めることを重視している。命を重んじることもあり、極刑は好まれない。


 その結果、ユーリとエドガーは王命で婚姻を結ぶことになり、シェーリル島という孤島へ送られることになった。この島は海鳥の楽園。その羽毛は最高級で知られている。シェーリル島には沢山の海鳥のための小屋があり、その小屋に貯まった羽毛を回収する必要があるのだが……。


 とにかく周囲に他に島はなく、大陸からも船で一か月もかかるような場所。島には人間より海鳥が多く、何もない。こんな場所で働きたいと思う人はいない。そんな島なのだ。


 つまりこの島に送られた罪人は、死ぬまでここで羽毛の回収をすることになる。娯楽もない自給自足での海鳥との生活。ここでユーリは子供を産み、育て、海鳥とエドガーと共に生きて行くのだ。


 ピンクダイヤモンドを求め、護衛の兵士の数を減らし、私が死んでもいいと思っていたユーリ。彼女のせいで二人の若者が命を落としているのだ。夫と子供と共に生きられるだけでも、感謝すべきではないだろうか。


 ただ、誰よりも着飾ることを好み、舞踏会や晩餐会を楽しんでいたのがユーリだ。華やかな生活から一転、島流しでの孤島生活。どれだけ絶望しているかと思うが、これも全て自身が撒いた種の結果だ。自業自得。


 そんなモンスターのようなユーリを育ててしまった両親は、王家に対し、多大なお詫び金を支払うことになった。金の工面で私のところへ来たが、絶縁を宣言し、追い返している。


 ユーリへ一心に注いだ愛情。その愛情を少しでも私に向けてくれていたら、こんな結果にはならなかっただろう。自ら招いた結果の尻拭いは、当人達にしてもらうしかない。


 こうしてユーリと両親に訪れた厳しい冬。

 一方の私は、人生の長い冬の時代を抜け、まさに春へと向かっていた。


 ◇


「若奥様、ついにタウンハウスが完成し、薔薇石英を扱う宝飾品店、ブティック、カフェもオープンですね。こんな日を迎えられるとは、数カ月前には思ってもいませんでした」


 本当にフィオナの言う通りだ。

 数か月前の私は、一生日陰暮らしを約束されたような状況だったのだから。


 ちなみに旧グランドホテルをタウンハウスにした理由。それはライルの私への配慮だった。元平民の侯爵が、伯爵令嬢である私を妻に娶る。パッとしないタウンハウスに私が暮らすようになれば、「やはり元平民の侯爵などと結婚するから、あんなタウンハウスにしか住めない」と後ろ向きな噂をされてしまうかもしれない。誰もが「これは!」と思うタウンハウスに私を迎えたかったというのだから……。


 ライルの愛の深さに胸が熱くなる。


「この日を迎えるまでは、本当に大変だったわ。フィオナのサポートに、とても助けられたと思うの。ありがとうね。それにローズロック領を目指し、危険な森で盗賊に襲撃された時。もう終わりだと思った。でもライルに出会い、不幸のどん底から這い上がることができたわ」


 フィオナがそばにずっといてくれたこと。

 ライルがちゃんと幼い頃の約束を果たしてくれたこと。

 その感謝の言葉を口にすると、フィオナは涙ぐみ、側へ来たライルはこんな風に言ってくれる。


「アイリ。自分はただ君を奪うように、嫁に貰ったに過ぎません。薔薇石英を王都に広め、ウィンターボトム家の収益の大きな柱にしてくれたのは、間違いなく君です。隠されていた商才を開花させたのは、アイリ自身。今日という日は、君自身の努力で得たものです。自信を持ってください」


 ライルはそう言ってくれるけど、私の商才が開花することになったのは、彼のおかげだ。


 私を理解し、励まし、応援してくれたから、ここまで来れた。


 ミルフォード伯爵家にいた時。

 商会経営に口出しでもしようものなら、大激怒されていたのだ。


 つまりライルのような理解者がいなければ、私は自分の力を発揮することはできなかった。


「ライル。あなたがいてくれたから、私はここまで来れたのです。才能がいくらあっても、それを生かせる環境がないと、開花することなく終わってしまう。ライルが私を支え、力を引き出してくれたのです」


「アイリ……!」


 ぎゅっとライルと抱き合うと、紺色のスーツ姿のベルナードが、いつもの調子で声をかける。


あるじ、若奥様、レセプションが始まります。正門を開けるので、続々馬車がエントランスに到着します。準備はよろしいですか?」


 セレストブルーのフロックコートを着たライルが「ああ、問題ない」と応じた。そして白地にセレストブルーの薔薇がプリントされたドレスを着る私の手を取る。


「ではお客様を迎えようか、アイリ」

「ええ、お迎えしましょう」


 ライルにエスコートされ、エントランスホールを歩き出す。


 開かれた扉からは、春の兆しを感じる温かい風が、ふわりと入り込んできた。

 エントランスを飾る、ミモザの明るい黄色の花も見えている。


 ライルと手を取り合い、支え合い、幸せな人生を送れるように。

 感謝の気持ちと思いやりの心を忘れず、生きて行こう。


 そう心の中で誓いながら、エントランスへと踏み出した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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