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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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ささやかな願い

「まさかマダムと直接仕事をできると思わなかったから、とても嬉しいです」


 グレーのスーツ姿のエドガーはそう言うと、アイスシルバーの髪を揺らし、笑顔になる。


 店舗での打ち合わせが終わった後。

 エドガーからお茶に誘われた。


 ライルがエドガーのことを警戒しているので、お茶の誘いに乗るかどうかは一瞬、迷うことになった。


 だがエドガーと私にやましいことはない。

 それにエドガーとはまさにこれから仕事をすることになる。

 円滑な関係を築きたいのだから、お茶の誘いぐらい社交辞令の一つとして乗ったとしても、問題ないはず。


 何より前回と違い、ちゃんとフィオナを同席させる。

 文字通り、同じ席に座らせるつもりでいた。

 これならすべての会話をフィオナも把握するし、問題ないはず。


 ということでタウンハウスから、馬車で五分ほどのカフェでお茶をすることになったのだ。


「私もまさかチェイス様があの場にいると思わなかったので、驚きました。でもよくよく考えれば、母屋の家具をまるっとお任せしていました。店舗の方も対応いただくことになる……当然でしたね」


「いえいえ、そうとも限りませんよ。僕はマダムの旦那様に目を付けられましたから。仕事を干されてもおかしくありません」


「! それは……でも夫からお詫びの手紙は届いたでしょう?」


 するとエドガーは紅茶を口に運び、「届きましたよ!」と頷く。


「お詫びの言葉だけではなく、顧客を紹介してくれたんですよ。部下の騎士の方が今度結婚され、新居を構えることになるから、よかったら相談に乗って欲しいと書かれていたのです。驚きましたし、寛容な方だと思いました」


 ライルは一度は感情のままに、怒りをエドガーにぶつけてしまった。勿論それは彼の演技でもあったのだけど。そして事情を理解すると、いつもの彼らしい対応をしてくれた。


 お客さんを紹介するというのは、商売人にとっては一番のご褒美だろう。ライルの紹介した騎士とエドガーの商談が上手くまとまることを願ってしまう。


「でも本当に。マダムの旦那様があの日の態度が本性だったら……。僕はマダムを彼から助け出したいと、本気で動いたと思います」


 これにはドキッとしてしまうが、あくまであれはライルの演技。心配するようなことは何もないと伝えることになる。


 すると。


「それを聞くと安心する一方で、残念にも思ってしまいます」


 そんな風に言われると困ってしまう。

 だがそこでフィオナがいい感じで声をかけてくれた。


「若奥様。そろそろホテルへ戻り、ドレスのお着換えをした方が良さそうです」


「マダム、今晩はご予定が?」


「はい。舞踏会へ顔を出すことになっているのです。薔薇石英の宣伝活動を兼ねて」


 するとエドガーは「舞踏会!」と瞳を輝かせる。

 舞踏会と聞いて男性が喜ぶのは珍しいので、つい理由を問うと……。


「きっと僕は、マダムに会いたかったからでしょうね。舞踏会に一度でいいから行きたいと思っていたのです、子供の頃から。そこに行けばもう一度会える。再会できると……幼い頃の僕は思っていたようです」


 この言葉には、胸にグッとくるものがある。


「舞踏会へ行かれたことがないのですか? チェイス家具店の名があれば、舞踏会に参加も難しくないと思いますが……」


「相手から『チェイスさん、舞踏会へ是非来てください』――そう言っていただけたら参加する。それが我が家のポリシーなんですよ。貴族の皆様と接点はありますが、僕達にとってはお客様ですから。こちらから『舞踏会へ招待してください』とは言えないです。そして貴族の皆様は、自ら平民を招待しようとは……しませんよね」


 それは本当にその通りだった。

 平民から「招待してくださいよ」と言われて初めて「仕方ないですね」と、ドレスコードやマナーが招待に値するか判別される。価値ありと認められれば、招待状を渡される……というのが実情だ。


 お客である貴族に舞踏会をせがむわけにはいかない。


 つまりエドガーは、舞踏会へ一度も行ったことがなかった。

 かつ幼い頃は私と再会できるかもと、舞踏会へ行くことを願っていた……。


 そんなことを聞いてしまうと、ついこんな言葉が口をついて出ていた。


「今日の舞踏会、夫は任務があり、参加できません。代わりにエスコートしてくれる夫の部下も、今回は来ることができません。私は一人でも行くつもりでしたが……。チェイスさんはビジネスパートナーでもあります。よかったら私と一緒に舞踏会、行かれますか?」


 フィオナが「!」と驚いているが、基本的に私の考えに反対はしない。よほど間違っていることでない限り。そして私の今の提案、おかしなところは何もない。


「え、よろしいのですか? 僕にとっては子供の頃からの夢が叶います。ぜひ行きたいのですが……。マダムの旦那様に怒られませんか?」


「夫はそんな器量が狭い人間ではありません。舞踏会に一度は行きたい。そんな願いを叶えてあげたいと考える私に、反対などしないはず。……ちなみにチェイスさんは、テールコートなどはお持ちですよね?」


「それは勿論。貴族の屋敷へ出入りしているので、マナーも大丈夫だと思います」

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