表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/112

……帰りたくないです

 ライルにぎゅうぎゅう抱きしめられながら、どうしたら二度目も抱いてもらえるのかを考えた。考えたが……分からない。これはフィオナに相談するしかないと思った。そして大型犬のように私に抱きつくライルをなでなでしていると。


 「きゅう~」というなんとも愛らしい音がした。

 ライルのお腹が鳴っていた!


 お昼はホリデーマーケットの屋台で食べたが、女性には丁度良くても、男性からすると満腹!には程遠かったと思う。そもそも屋台で提供されている料理は、さっと食べられるような手軽なボリュームだから……。


 そしてライルはティータイムもなしで、至る現在だったのだ。


「ライル、少し早いですが、夕食にします? 私はケーキを頂いたら、食欲に火がついた気がします。つまり私もお腹が空いているので」


「! アイリ、君は本当に優しいです。……大好きです。心から。他の誰にも渡すつもりはありません」


「安心してください。もうライルと結婚しているのです。私の身も心も全て、ライルのものですから」


 ライルはゆっくり体を離すと、うるうるの碧眼で私を見て尋ねる。


「……貴族の中には、情夫を持つ方もいると聞きます」


「確かにそうですね。ですが私はそんなに器用な人間ではありません。それにライルのことが大好きなので、情夫は不要です」


「……本当ですか。その……」そこでライルはぐっと奥歯を噛み締めるようにして、目を閉じた。そして深呼吸をすると「アイリを信じます」と言い、額にキスをする。


 私が浮気をしたり、情夫を持つことを心配するなんて。

 本当に。

 高級娼館に通っていたのは、ライルの方なのに!


 今、高級娼館になぜ行ったのかと問い掛けたら、答えてくれるかしら?


 初夜の件を申し訳ないと思っている。

 その申し訳ない気持ちの延長で、高級娼館のことも話してくれる可能性は……。


 理性が吹き飛びそうな状況ではない。

 初夜の件で動揺はしているが、冷静だと思う。

 今のライルに尋ねたら……。

 高級娼館に行ったことを知っている=尾行を付けたと思われる可能性が大。


 止めておこう。


 それよりも。


「夕食に行けるよう、ドレスを着替えますね」

「ありがとう、アイリ。そうしよう」


 ◇


 ネイビーのマーメイドラインのドレスは、身頃に銀糸による繊細な刺繍、スカート部分は裾に行くほど沢山のグリッターが散りばめられている。髪は思いっきりアップにして、薔薇石英の宝飾を合わせる。


 今日も本当は薔薇石英の商談がいくつかあったが、ライルと丸一日、デートできることになったのだ。商談はライルの商会のメンバーにお願いしていた。そもそも商談も、実際の取引の詳細の話になっており、同席する私は頷いていることの方が多くなっている。あくまで紹介までは私ができても、価格交渉やどれぐらいの量を取引できるかとなると、商会の人間ではないと分からない。


 よって商談はお任せとなっても。


 広告塔の役目は続いている。ライルと外食をするなら、やはり宝飾品は薔薇石英一択だ。


 ということで寝室で私が着替えを終えると、パールシルバーのテールコートへ着替えたライルがリビングで待っていた。隊服姿も素敵なのだけど、正装したライルも素敵だった。


「ライルも薔薇石英のカフスとタイ飾りをつけているのですね」


「アイリが頑張ってくれているので、自分もできることをと思い……。でも男より女性が美しく身に着けた方が、断然人気になると思います」


「そんなことないですよ、ライル。奥様や婚約者とお揃いのコーディネイトをしたい方も多いですから。薔薇石英のカフスやタイ飾りも、人気が出ると思います」


 ライルは私の言葉に「そうですか」とふわっと優しい笑顔になる。


 ここに来てようやく。


 エドガーと初夜の一件も落ち着いた気がする。


 せっかくのデートだったのに。

 随分と翻弄されてしまった。


 ともかく私の知っている、美味しい洋食屋に向かうことにした。

 その馬車では……これまでの時間を取り戻そうとするかのように、ライルが私に甘えてきたのだ。


 つまり私の隣に座ったライルは、ホテルの部屋の時と同じように、私をぎゅっと抱きしめる。


 いつぞやかの大型犬モード!


 サラサラのプラチナブロンドのライルの髪を撫でていると、やはりバームという犬のことを思い出す。


 洋食屋に到着すると、対面に配置されていた椅子を移動させ、私の斜め右の位置に着席したライルは……。


 料理が出てくるまでの間、私の手をぎゅっと握っていた。

 そうかと思えば手を持ち上げ、甲へ「ちゅっ」とキスをする。

 でも料理が来るとそれは中断され、ライルは複雑な表情になってしまう。

 料理の到着は嬉しいけれど、私の手を離したくない。


 相反する感情に揺れるライルは……。


 やはり可愛くてならない!


 だがデザートが終わり、食後のコーヒーとクッキーが到着すると、ライルは再びしょんぼりしている。


「ライル、デザート、気に入らなかったかしら?」


「! そんなことありません。アイリが選んだお店だけあり、とても美味しかったです」


「でもせっかく美味しく食事ができたのに。元気ないですよ」


 するとライルは乙女のように視線を伏せ、頬を赤くする。


「食事が終わったら、アイリをホテルへ送り届け、騎士団宿舎へ帰らなければならいので……。……帰りたくないです」


 まさに恋する乙女のようなことを言うのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ