表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/112

スカッとする爽快な恋愛喜劇!?

――「初夜というのは夫婦にとって、大きな意味を持つ! ザクロのような赤い血が流れることで、新婦の純潔が証明され、晴れて二人は本当の夫婦になれるのです。それを領主だからと言って、踏みにじっていい訳がない!」


――「領主様は初夜の重大さを理解されていない! 愛する男のために、新婦は貞操を守り続けたのです。新郎に捧げるために。それをご自身の快楽のため、新郎に先駆け散らす。そんなこと、あってはならないことです!」


――「夫婦になったばかりの二人が、痛みと喜びを分かち合う初夜。それがその後の夫婦にとってどれだけの絆をもたらすか、領主様は理解されていない。初夜の重要性を認識してください!」


 ライルと観劇した演劇。

 そのタイトルは「愛の勝利」。

 事前情報はないが、チケットを販売していたスタッフからは「スカッとする爽快な恋愛喜劇です!」と言われていた。上演十五分前の駆け込みでもあり、しかもチケットは半額! それならばいいだろうと即決でチケットを手に入れ、座席に滑り込んだ。しかもまさかの最前列!


 かつてこの世界で存在していたと言われる悪しき慣習、領主による領民への初夜権の行使。これを領民たちが蜂起し、領主から奪い返すというドタバタ劇で、確かに爽快な恋愛喜劇だったのだけど。


 出演者のセリフの中で、「初夜」が最低一回は出てくるような作品だとは思わなかった。


 しかも劇中で繰り返し、初夜の意味、初夜の意義、初夜の重要性が語られるのだ。その結果、初夜が夫婦の絆をいかに深めるものなのかを理解させられる。


 同時に。


 初夜を蔑ろにすることは、罪深いこと。特段の理由もなく新婚夫婦が初夜を行わないことは、不幸の始まり――そんな風に思えてくる内容だったのだ。


 これは……初夜がなかったライルと私には――。


 隣に座るライルがどんな気持ちでこの作品を観ているのか。

 ……想像できない。

 私自身、初夜がここまで大切とは思わなかった。


 なぜなら新婦に月のものが来てしまい、初夜できないこともあると思うのだ。披露宴でお酒を飲み過ぎて、できなかったなんてこともあるだろう。そこまで初夜にこだわらなくても……と思ってしまうのですが。


 初夜の主導権は男性にある。男性リードで始まる初夜なのだ。ゆえに私より、ライルが非常にいろいろと考えさせられることになったと思う。


 でも観劇中、隣に座るライルの顔を見ることなど、できるわけがない。


 拍手喝采で幕が下り、カーテンコールで役者が再登場し、またも拍手となり……。


 最終的に皆が席を立った時、ようやくライルを見ることになった。


 ライルは……。


 表情がない。

 というかフリーズしている。

 あの碧い瞳は舞台の一点に注がれ、微動だにしない。


「ラ、ライル、公演、終わりました……」


 一度声を掛けたぐらいでは、ライルは気づかない。

 五回目、そっと手に触れることで、ようやくライルは覚醒する。


 覚醒し、私を見た時の悲壮感と言ったら……。


 世紀末を目撃した顔に思えた。


 なんだか魂が抜けたような表情で、ライルはよろよろと立ち上がる。

 相当ショックを受けているようで、貴族としての基本であるエスコートすら忘れ、ベルナードに促される状態。エスコートを始めても、心ここに在らずで……。


 私はなぜこの作品にしてしまったのかと、背中に汗が伝う事態。


 時間的にはティータイム。でも「お茶でもします?」と言える雰囲気ではない。


 ちなみにフィオナ、ベルナード、護衛の騎士は観劇せず、近くのカフェで時間を潰していた。ただ、公演のチラシは……観ていたのだろう。そこには簡単であるが、あらすじも書かれている。それを読み、何かを察したのか……。


 フィオナが目で「若奥様、でもこれで若旦那様は動くかもしれません」と言っているけれど。どう動くのか、想像もつかない。


「アイリ……。ホテルの部屋に送ります。ルームサービスでお茶を頼んでください。あのホテルのアフタヌーンティーは有名ですので。自分は少しベルナードと打ち合わせの必要が……専用ラウンジで。終わり次第、夕食を……」


 なんだか息も絶え絶えでそう言うと、馬車へと私を乗せる。

 ベルナードと打ち合わせ……。

 初夜の件を相談する……のだろう。でも今更相談して、どうなるのか。


 というか白い結婚なのだから、初夜がなくても問題ないと思うのですが。

 いや、白い結婚だから初夜はなしにしたが、初夜ぐらいしておくべきだったと、後悔している……とか?


 観劇前は、エドガーのことでなんだかぎくしゃくし、でも私から手をつなぐことで、なんとか甘い雰囲気に戻りかけた。だが観劇後、ライルは茫然自失状態で、どうしていいのか分からない。


 今、私にできることは……ない気がする。

 初夜の件について感想を言うのも、励ますのも違う気がするのだ。


 ベルナードがライルに何かアドバイスするのであれば……。


 ライルが元に戻るようなアドバイスをしてくれることを、期待するしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ