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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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これはデートですよね?

 王都で最大のホリデーマーケット。


 それは時計塔広場で行われているものだ。

 その広場自体が王都で最大の広場なので、そこで行われるホリデーマーケットは、必然的に最大規模になる。


 出店しているのは、飲食店からホリデーシーズンならではの雑貨を扱うお店、ホットワインのマグを売るお店と実に様々。さらにお店だけではなく、大道芸、演奏家、絵描きなど芸人もいる。


 広場の手前までは馬車で来たが、そこから先は、徒歩での散策だ。


 護衛の騎士もいるが、こうなると塊となって動くことは不可能。


 ライルと私、その後ろにベルナード、さらに距離を置き、護衛の騎士二名がついて来る状態になった。


「アイリ、はぐれると困ります。それにこれはデートですよね?」


 いつものように頬をぽっと赤くしたライルが、なんだか確認するように尋ねた。

 そう言われて初めて、「デート」と私は呟くことになる。


「そうですね。デートです。初めてのデートですね! 夫婦なのにデートが初めてだなんて。なんだか不思議ですが、その通りです」


「アイリとので初めてのデート……。嬉しいです。夢でした」


 いきなりの告白に眩暈がする。

 言葉もさることながら、その表情。

 まるで初恋に落ちた少年のように初々しい。

 ピュアさ全開のライルと私は、学生みたいな雰囲気だが、その実態は夫婦!

 でも白い結婚でキス止まり。


 そしてこんなに純粋無垢な乙女のようなライルだが、実は高級娼館に足を運んでいる!


 あまりにも見た目と実態が乖離し過ぎて、笑うしかない状況だ。


「アイリ、それで、ですね。はぐれると困りますし、初デートですから、手を……」


「手を……」と言ったあと、ライルが子供のようにもじもじしている。

「手をどうしたのですか?」と問い掛けそうになり、「あっ」と気が付く。

「手をつなぎたい」ではないかと理解する。


 え、手をつなぎたいという提案することに、こんなに照れているの?

 まさか、ね?


「ライル」

「はい」

「手をつなぎます?」


 この瞬間のライルの顔は。

 まるでずっと、ずっと、欲しかったご褒美をもらえることになり、人生最大の喜びを噛み締めるような笑顔になっている。


 その笑顔はなんというか、見ている者を幸せにするパワーまであるようだ。


 私もつい微笑み、周囲にいた人達も、男女問わず、年齢問わずで笑顔になっていた。ベルナードと護衛の騎士は、ハンカチで目を抑え、感動している。


 冷静に考えると、ライルはただ手をつなぐことに喜んでいるだけなのに。

 こんなにも皆に影響を与えるなんて!


 というか。


 そんなに手をつなぎたかったの……?


 高級娼館に足を運んでいるとは思えない、初心すぎる反応。


 しかも。


 そっと手を差し出すと、まるでしゅに触れるが如くで、恭しく自身の手を伸ばす。

 エスコートだって何度もしているのだから、そこまでかしこまる必要はないのに。そう思うが、嬉しいのは事実。


 ぎゅっと最終的に私の手を握ると、ライルが恍惚とした表情になった。

 つられた私も陶酔している。


「手をつないでデートする……これも憧れでした」

「願いが叶って良かったですね」


 うっとり応じて歩き出す。

 完全にライルの世界観に引きこまれている。


 その後はもう、新婚というより、交際を始めたばかりの学生カップルのような状態。


 絵描きさんに木炭デッサンで似顔絵を描いてもらったり、バイオリン弾きに即興でダンス曲を演奏してもらい、周囲の人達と一緒に踊ったり。大道芸では、協力者に指名されたライルがさんざんピエロに翻弄され、観客の爆笑を誘う。


 楽しくて笑い過ぎて喉も乾き、さらにお腹も空いてしまった。


「結構、歩き回りましたよね。軽く休憩をしましょうか」

「そうですね」


 広場の一画には椅子とテーブルが用意されており、食事をしたり、休憩をとれるようになっていた。そこに私を座らせると、ライルは軽食を、ベルナードは飲み物を買いに行くことになった。残された私のそばには、フィオナと護衛騎士がついている。


「マダム、こんにちは! まさかこんな大勢がいる場所で、あなたに再会できるとは! 今日はどうされたのですか?」


 声に振り返ると、そこにはエドガーがいた!

 ターコイズグリーンのセットアップを着て、手には木箱を持っている。


「こんにちは、チェイスさん! 今日は夫とデートで来ました。チェイスさんは……?」


「ホリデーマーケットでは、いろいろな装飾品が売っていますよね。家具を展示する時、利用イメージを想像しやすいように、小物を置くのですが、そういった装飾品をまさに購入していました」


 そう言うと木箱の中を見せてくれる。

 そこには、確かに沢山の小物が入っていた。ホットワイン用のマグだが、日常的に使えそうなもの。季節性を感じさせない、シンプルなフォトフレームなどだ。


「ニューイヤー以降も使えるものも、手頃に手に入るので、毎年ここへ買い物に来ているんですよ。結局、小物はサービスで、家具を購入するお客様にプレゼントしてしまうことが多い。よって毎年入手する必要があって」


「そうなのですね。全部チェイスさんが選んだのですよね?」


「はい」


 ホリデーマーケットでは、そこまでの高級品は扱っていない。皆、気軽に立ち寄るマーケットだからだ。でもエドガーが手に入れた小物は、どこか洗練されていて、安物には見えなかった。つまり彼のセンスの良さが光っていた。


「このアンティークなジュエリーボックス、とても素敵ですね」


「そうですよね。このエナメルのトープブルーの発色が、とても綺麗ですよね。金メッキですが、安物に感じません。……侯爵夫人がお持ちになるには安物過ぎますが、良かったらプレゼントします。先日のランチの御礼で」

トープブルー:トープは木炭で、黒に近い青のこと。

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