表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/112

ようやく

 エドガーと別れ、フィオナと御者と共に、馬車へ戻った。


 ホテルへ向かう馬車の中で、フィオナにエドガーのことを話した。


「やはりあの時の少年の可能性が高いのですか。立派な青年に成長されていたということですね。しかもチェイス家具店は有名ですし、そこの跡取りなら貴族も同然じゃないですか。爵位こそないですが、その財は伯爵家に匹敵しますよ。それに人脈。チェイス家具店の顧客には、公爵家もいるわけですから、根回しすれば爵位も手に入るでしょう。でも、そうですか。身分違いを考え、若奥様のことを忘れようと……」


 私の話を聞いたフィオナは、しみじみとそう口にする。


 「運命とはなんとも皮肉なものですね」とエドガーが言っていたが、まさにその通りだ。もう少しだけ早く、エドガーと再会していたら……。


 でもそれはなかった。


 何しろユーリの影で生きていた私は、自分から積極的に街へ出ることもなかったのだ。今日みたいに偶然レストランで再会する……なんてことはなかった。


 きっとエドガーと私は、そういう星の巡り会わせだったのだろう。


 そんなことを考えているうちに、ホテルに到着。

 ティータイムを使った商談が始まった。


 そこからは怒涛の勢いで時が流れて行く。


 ベルナードのエスコートもなく、一人で参加することになった舞踏会。

 でも壁の花になることはない。

 自ら積極的に動き、令嬢マダムに挨拶をして、薔薇石英を紹介した。


 幸いなことに、少しずつ社交界では薔薇石英のことが噂になっており、皆、興味をもってくれる。


 何より私が実際に身につけているのだから、どんな宝石かよく分かる。価格もお手頃。即断で購入を検討してもらえるところも大きかった。


 こうして舞踏会からの帰り道。

 ガタガタ揺れる馬車の中。


 ユーリをエスコートしていたライル。

 遅すぎた再会を果たすことになったエドガー。


 今日だけで私にとっては、大きな出来事があったが……。


 そのことを考える暇はなかった。

 明日以降の予定を考え、今日挨拶をした貴族達の名前を必死にメモする。


 ホテルに到着し、メモをまとめ、入浴を終え、ベッドに横になると……。


 そこでようやく思い出す。

 ライルからノートが届いていないと。


 日記のように毎日交換していたノート。

 それが途切れるのは、これが初めてのことだった。


 奇しくもライルがユーリをエスコートするところを目撃した日に、ノートが来なくなるなんて。


 いろいろ考えそうになるが。

 それよりも睡魔が勝ち、私は眠りに落ちた。


 ◇


 私自身はぐっすり眠っているつもりでも。

 眠りには周期があると思う。

 深い眠りと、浅い眠りを繰り返しているような。

 本当に深い眠りの時だったら、気づかなかっただろう。

 でもその時は浅い眠りだったと思うのだ。


 気配というか、視線を感じ、目が覚めた。


「……ライル……?」


 ほの暗い部屋で、組んだ手に顎を載せ、こちらをじっと見ているライルの姿が見えた。


 私の呼びかけにハッとしたライルが「申し訳ないです。起こすつもりはありませんでした。まだ夜明け前です。ゆっくりお休みください」と立ち上がるのを「待ってください」と上半身を起こし、掠れた声で呼び止める。


 寝起きであり、冬場。

 乾燥もしている。

 声が掠れたのはそのせい。

 だがライルはベッドサイドテーブルに置かれたガラスのカラフェから、グラスに水を注ぐ。そしてすぐに渡してくれる。


 こういうところは、やはり甲斐甲斐しい。


「ありがとうございます」


 やはり掠れた声のままグラスを受け取り、それをごくごくと飲み干す。

 水を飲むことで、覚醒もすすんだ気がした。


 チラッとサイドテーブルを見るが、ノートは置かれていない。

 ノートに何か書く時間もなく、ここへやってきたのかしら。


「熟睡している様子でしたので、まさか起きるとは思っていませんでした。本当に、申し訳ないです」


「いえ、気にしないでください。ぐっすり寝ているつもりでしたが、間もなく夜明け。眠りも浅くなっていたのかもしれません」


 あんなに会いたかったライルと面と向かって話しているのに。

 胸が高鳴らない。

 相変わらずライルは端正な顔で、着ているコバルトブルーの隊服も素敵なのに。


 理由は明白。


 ユーリをエスコートするところを見てしまったからだ。


「もうすっかり目覚めてしまいましたか」


「そうですね。……こんな時間にいつもいらしていたのですか」


「……日によりますが、この時間の時もありました。夜勤明けと申しますか……」


 「一体何の任務についているのですか?」と問いたくなるが、それは職務の秘密を漏らすことになる。よって答えられないと分かっていた。そこでその言葉は呑み込む。代わりに……。


「そういえばノートを受け取っていません」


「……はい。……言葉が思いつきませんでした」


「……?」


 するとライルは少しずつ明るくなる部屋で、とんでもなく悲壮な顔をして私を見た。


 さっきまで平常心だったのに。


 この表情には盛大に心臓がドクッと反応している。

お読みいただき、ありがとうございます!

【180万PV突破作・完結のお知らせ】

『鬼滅の刃』雷の呼吸の使い手・善逸役でお馴染みの

下野紘さんになろラジであらすじ朗読いただいた

『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生

でも安心してください

軌道修正してハピエンにいたします』

https://book1.adouzi.eu.org/n0824jc/

本作が完結しました!

遂に転生した小説の世界のラストまで完走です。

未読の読者様、この機会に一気読みはいかがでしょうか?

ページ下部に目次ページへ遷移するリンクバナーございます☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ