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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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宮殿

 夢かと思ったら、実際にライルに抱きしめられ、キスをされていた日から数日間。


 ライルと私は、お互い忙しい日々を送ることになった。


 ライルは現在就いている任務により、ホテルへ顔を出すことができない。

 これまでは夜中や明け方にふらりとホテルに現れ、私の寝顔を愛でてくれていた。


 ……それは照れくさいが嬉しい。

 だがしかし。

 それもままらないようで、日中に従者がノートを届けてくれることも多くなった。


 つまり私の寝顔を愛でることもない。

 正真正銘、会えない日々。


 私も私で薔薇石英の宣伝と商談で、忙しい日々を送ることになった。


 ライルの商会の幹部は、ちゃんと王都に事務所を開設し、本格的に薔薇石英の取引を開始している。でも飛び込み営業なんてしないので、基本、私が参加した舞踏会、晩餐会で知り合った貴族を紹介する形になっていた。


 勿論、そこで紹介した貴族が、さらに自身の知り合いを紹介して……という流れもある。それに私が知り合うのは貴族であるが、彼らが経営する商会や宝飾品店もあり、大型取引はそう言った規模のものだ。


 侯爵家の嫁として、のほほんとお茶会に参加し、晩餐会で談笑し、舞踏会でご挨拶をして……というお気楽社交とは程遠い状況。


 でも充実していた。


 ミルフォード伯爵家にいた時は、ひたすら目立たず、地味にユーリの影で生きていたのだ。今はライルと共に思いっきり光を浴び、自由に生きていると実感できている。


 忙しさが活力になるとは思わなかった。


 ただ……。


 肝心のライルに会えないのは寂しい。

 もはや白い結婚であろうと、高級娼館の件も関係なく、ただただライルに会いたかった。


 それは既にホリデーシーズンに突入した冬晴れの日のこと。


 由緒正しき公爵家の令嬢に呼ばれ、薔薇石英の試作品の宝飾品を渡した帰りの馬車。対面に、いつものグレーのワンピース姿のフィオナが座っている。


 ターコイズブルーのドレスを着た私は、ふと窓から外を見た。

 そこには宮殿の塀が見えている。


 さすが公爵家。その屋敷は宮殿の目と鼻の先にあった。


 宮殿。


 そこには王宮もあり、この国の最高権力者である国王陛下や有力貴族達が集結している場所だ。その広大な敷地内にライルが寝泊まりしている騎士団宿舎もある。さらに今、ライルがどんな任務についているか分からないが、宮殿に彼がいる可能性もあった。


 え、もしかしたら。

 今、宮殿に行ったら、ライルがいるかもしれない……?


「フィオナ」

「はい、若奥様」


「この後の予定は、昼食をホテルで食べるのよね? ランチミーティングではないわよね?」


「はい。今日はランチミーティングはありません。それどころかティータイムでのラミス商会との商談まで、予定はありませんよ。刺繍の時間がたっぷりとれますね」


 刺繍。

 ライルにプレゼントするマントの刺繍。

 それは彼の名前の最後のアルファベット、「e」を刺繍すれば完成だった。


 それよりも。


「そうね。連日分刻みで動くことが多かったから、時間があるのは奇跡だわ。奇跡と言えば、すぐそこに宮殿が見えているでしょう」


「そうですね」


「……宮殿に行くわ」


 突然宮殿に行くという私にフィオナは「?」となっている。


「ライル様に会いたいの。ノートを交換しているから、連絡が取れていない状態ではないわ。でも顔を見ない日々が続いている。もう焦れ焦れ通り過ぎて、私、おかしくなりそう。会いたいの、ライル様に、どうしても!」


「若奥様……」


「白い結婚でもいい。キスしかしてもらえなくてもいい。高級娼館に行っても構わない。だってあのノートに書かれているライル様の言葉。気持ち。あれは紛れもなく私を好きという気持ちだもの」


 突然語り始めた私にフィオナは驚き、でもちゃんと話を聞いてくれた。

 ゆえに私は今の気持ちを赤裸々に語る。


「愛にはいろいろな形があるのでしょう? 騎士はプラトニックな愛こそ、崇高と考える精神もある――そうロマンス小説で読んだわ。究極の愛は、肉体の接触さえなくても、気持ちが一つになれることだって! たとえライル様が男娼ではないと、肉体が反応しないのでも構わないわ。子供は……いざとなれば養子を迎えることもできる。だから」「若奥様」


 そこでフィオナが私を制し、優しく微笑んだ。


「分かりました。そこまでお気持ちが固まっているなら、もう焦れ焦れ作戦は不要でしょう。今、宮殿のそばを馬車が通過しています。そして宮殿には騎士団宿舎があり、若旦那様の執務室もそちらにありますよね。もしかしたら今、宮殿へ行けば、若旦那様に会えるかもしれない。……会いたいのですね」


 その通りなのでコクリと頷く。


「分かりました。会えない可能性もあります。ですがウィンターボトム侯爵家の紋章のついた扇子を見せれば、宮殿に入ることはできます。例え不在でも、訪問したことを、補佐官に言付けできるでしょう。無駄足にはならないはずです。これまでは若旦那様がホテルへ顔を出すことを、待つ日々でした。この社会では、男性が主体的に動くことが基本ですから、当然です。でも会いたい気持ちは若奥様も同じ。女性から動いても……私はいいと思います。行きましょう、宮殿へ!」


 フィオナが保守的な思考ではなくて良かった。


 いるかいないか、いても打ち合わせや任務中で会えない可能性も大きい。

 でもフィオナの言う通り、宮殿へ来たことを伝言として残すことができる。

 私の会いたい気持ち、ライルに伝わるはず。


 こうして私は宮殿へ向かうことになった。

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