表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/112

望まれる結婚ではない

 ライル本人に会うことなく、婚約は成立した。


 しかも結婚式の日取りまで決まってしまう。

 それは今から三か月後!


 王族の結婚式であれば。

 各国への招待もあるため、一年前にその日取りが発表され、準備が進められる。


 貴族であっても婚約期間を経て、準備を進め、そして結婚式となる。その準備期間は半年程度必要とされていた。というのもウェディングドレスを仕立てるのに、それぐらいかかるからだ。


 だがしかし。


「まあ、お姉様、良かったですわね。お母様が着たウィディングドレスを譲ってもらえるなんて。クラシックで伝統を感じさせる、素敵なデザインじゃないですか!」


 妹のユーリはくすくす笑いながらそう指摘するが……。


 ようは母親が記念にとっていた、クローゼットの奥にしまわれ続けた流行遅れのかび臭いウェディングドレスを着ろ……ということだった。


 ウェディングドレスは高級品であり、オーダーメイドで仕立てると、通常のドレスよりもうんとお金もかかる。それでも平民でさえ、一生に一度の晴れ舞台と、そこはお金をかけるのに。


 勿論、いろいろな理由で、新たにウェディングドレスを仕立てないこともある。亡くなった祖母が大切にしてきたウェディングドレスを孫が着るとか、母親が着たウェディングドレスがあまりにも素敵なので、多少手を入れつつ着用するとか。そこにはポジティブな理由があった。


 でも我が家の場合は……ウェディングドレスでお金をかけるのは妹のユーリ。姉である私は……屋敷に着ることができるウェディングドレスがあるのだ。それを着ればいいだろう……という判断。


 つまり一番用意に時間がかかるはずのウェディングドレスは準備できている。多少の微調整が必要だが、母親と私は身長も体型も似ているので、大幅な補正は必要ない。それに屋敷から一人減るだけで、いろいろなお金が浮くことになる。


 ユーリは浮いたお金を自分に使うつもり満々だった。よって父親に「ウェディングドレスもあるのですから、一刻も早くお姉様を嫁がせた方がいいのではないですか。私、お姉様には一日も早く幸せになっていただきたいのです」と進言。


 ユーリを溺愛する父親は「そうだな。そうしよう」と快諾したのだ。


 その結果、三か月後に結婚式をあげることが決定した。


 これにはいろいろと思うところがある。


 だが望まれてする結婚でもない。

 どうせこれも政略結婚の一つなのだ。

 私は働くことも禁じられ、末は介護か修道院行きの未来しかない。

 それならばせめてこの屋敷を出て、緑豊かで美しい薔薇の産地で知られるローズロックで暮らせるなら……。今のような閉塞感からは、少しは解放されると思う。


 よって現状に文句を言うのは止めようと決意した。

 何か言ったところで、ユーリを中心に両親に説得され、結局は三か月後に式を挙げるしかないのだ。


 私はこの貴族社会にどっぷりつかって育っていた。

 もし私が異邦人だったら、いろいろなしがらみを無視し、ユーリをひっぱたき、両親に文句を言い、家を飛び出すぐらいしたかもしれない。でも現実でそれは無理だ。貴族令嬢は淑女となり、両親の教えには従い、兄弟姉妹とは仲良くすること。そう子供の頃から刷り込まれているのだから。


 こうして結婚式の日取りだけではなく、その詳細も徐々に決まる。


 ライルが残り三カ月でタウンハウスを手に入れ、結婚式を挙げられるようにするのは、無理な話だった。


 挙式は聖堂や教会でできる。でもその後の披露宴やウェディングパーティーは、通常貴族であれば、自らの屋敷で行う。でも急遽手に入れた屋敷で、慌てて使用人を雇い、いきなり披露宴やウェディングパーティーやるのは……非現実的だ。


 ではミルフォード伯爵家の屋敷でやればいいのではないか。

 そう思うが、ユーリも両親も反対。

 費用はライルが持つとしても、自身の屋敷でやるとなると、ものすごく気を遣う。


 実費は請求できても、気苦労や気遣いに対して請求はできない。何よりこれから親族になるのだ。請求できる仕組みがあっても、請求しないのが貴族の矜持のはず。


「アイリ、侯爵家の披露宴やウェディングパーティーを我が家でやるなんて。恐れ多い。とても満足できるような準備を三か月でするなんて無理だ」


 そんなことを言い出す始末。

 三か月後に挙式せよ!――とごり押ししたのは両親とユーリなのに。


 結局、挙式も披露宴もウェディングパーティーも王都ではなく、ライルの領地であるローズロックで行うことが決まった。これに対して両親とユーリは……。


「ぜひ駆け付けたいが、途中に戦時中に激戦と言われた土地があり、そこは今も荒廃したままだと聞いている。もしもがあると、とても恐ろしくて……」


 予想はしていた。だが本当に娘の結婚行事への参列を拒否するなんて。

 しかもライルには尤もらしいことを書き連ねた書簡を既に送り、「分かりました」と返事を得ていた。


 しかも両親とユーリが参列しないのに、他の親族が参加するのも……。


 女学校時代の友人は、王都から外へ出たことがない……という子も多かった。それでもせっかくだからと参列を表明してくれたが……。彼女達の両親が反対をした。その理由は両親と同じで、荒廃した土地を通過しないと、ローズロックには行けないこと。さらに私の両親やユーリを始め、親族一同が参列しないのだ。それなのに友人だけが参加はよくない……となったのだ。


 両親の反対を押し切り、参列すると言ってくれた子もいる。でもそこまでしてもらう必要はない……と私は思ってしまったのだ。


 なぜならライルと私が相思相愛でする、望まれる結婚ではないから。


 こうして私は一人、嫁入りすることが決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ