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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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妹の代わりに私が

 幼い頃、私を助けてくれた少年。

 私の初恋の相手だ。


 壁の花でいることを強要されても、私は気にせずにいた。

 両親は、妹のユーリの結婚話で頭がいっぱいで、私に関心はない。

 もし大人になった少年が、例え平民でもそれなりに成功し、男爵位を手に入れることもできる状態だったら……。私と婚姻することも、両親は許すと思っていたのだ。


 それにユーリは、自分の婚約者が、私の結婚相手より劣ったとなれば……。絶対に大騒ぎするはず。


 ゆえに私が平民出身の男爵と結婚する……となれば、文句はないと思ったのだ。


 この頃の自分を思い出すと、もう苦笑するしかなかった。


 社交界デビューしたばかりの私は、ロマンス小説を読み漁り、まさに恋に恋している状態だ。少年と運命の再会を果たし、彼もまた私を好きでいてくれる。二人は長い時を経て、結ばれる――なんて本気だ考えていたのだから。


 実に夢見がちな少女時代だったと思う。


 でもさすがに十八歳になった今。


 夢から覚めた。


 あの少年もとっくに大人になっているはず。

 それなのに手紙の一通の連絡もない。

 まだ立派な大人になっていないから……なんて考えるのは、完全に自分に都合がいい解釈。


 あれはあの日あの時だけの、楽しい思い出にして、忘れるべきだった。

 きっと会いに来てくれる……と十年近く想い続けるなんて……。


 全くのお人好しだ、私は。


 もう少年のことは忘れ、今、自分が置かれている状況を考える。


 ユーリの引き立て役をやっているせいで、縁談話も来ない。行儀見習いに行くことや教師になりたいと願ったが、「そんな労働に従事する姉がいると知られたら、ユーリの恥になる。伯爵令嬢が働くなんて、家が貧しいのかと思われるだろう。やめなさい!」と両親から止められていた。


 おそらくこのままでは修道院に入れられるか、両親の介護をするだけで、人生が終わる。そして貴族の結婚なんて、家門同士の利益が優先。愛のある結婚なんて望めないだろう。


 それならば。


 受けていいのではないか。

 侯爵であり、騎士団長であるライル・ウィンターボトムとの婚姻を。


 ライルは騎士団長として忙しく、社交活動をほぼしていない。

 ただあのザーイ帝国を退けたのだから、よほどの強者だろう。


 筋骨隆々で、体のあちこちが傷だらけ。

 なんなら顔にも大きな傷跡があるかもしれない。

 ユーリが嫌がるような“野獣(ビースト)の団長”かもしれなかった。


 でも私は移ろう外見で、男性を見るつもりはない。

 どのみち歳をとれば、容姿は劣る。

 上辺の美しさより、内面の清らかさを重視したい……なんて言うと、まだロマンス小説かぶれなのだろうか。


 ともかくユーリは、会ったことも、見たこともない騎士団長のことを、噂や新聞記事の情報で毛嫌いしていた。だが私はそうではなかった。


 それに両親もユーリも、私が団長と結婚することを願っているのだ。断れば以降ずっと嫌味を言われ続ける……。ならばこう答えるしかないだろう。


「お父様、分かりました。ユーリの代わりで私が、騎士団長の所へ嫁ぎます」


 ◇


 ユーリではなく、姉の私、アイリが結婚相手になると王家に返事をした時。


「そうではない。妹のユーリの方だ」


 そう国王陛下が指摘する可能性もあった。

 それにライル自身も「なぜユーリではないのですか!?」と国王陛下に尋ねるかもしれない。


 一応両親はそのことに備え、いろいろ言い訳を考えていたが……。

 あっさり快諾された。

 ユーリではないのかと、問いかけられることもない。


 ライルは戦場に出ている時間が長かった。


 “ミルフォード伯爵家の令嬢は愛らしい”という噂しか耳にしておらず、その愛らしい令嬢が妹なのか姉なのか、分かっていないのではないか。


 ただ結婚に向け、まずは婚約が結ばれることになる。

 遅かれ早かれ、ライルと会うのだ。

 そこで私の容姿を見た時。

 愛くるしい……ではないと気付くだろう。

 でもその時は……もう遅い。

 国王陛下は、ミルフォード伯爵家の長女アイリと、ウィンターボトム侯爵の婚姻を認めたのだ。

 しかも褒美として。

 贈られたギフトに対し、後から「これは違う!」と言うのは失礼の極みだろう。それも相手はこの国の最高権力者なのだ。ゆえにライルはどうあがいても私と結婚するしかない。


 そこはなんだか申し訳ない気もする。

 でもちゃんと確認しない彼も、悪いと思う。

 ゆえに自業自得。

 ということで婚約について話し合いが行われることになったが……。


 その話し合いの場に、ライルの姿はない。


 というのも。

 ライルが侯爵となり、与えられた領地は王都になかった。


 元々は王都に暮らす平民だったライル。父親も騎士だったが、彼が幼い頃に戦死している。大黒柱を失い、住んでいた家の賃料が払えない。そこで母親と共に、知り合いの家に間借りをして、なんとか生活していた。


 広々とした家に住みたい……ということで王都の隣の都市、ローズロックに領地を与えてもらい、そこに屋敷を建てた。通常、その領地の屋敷がカントリーハウスとなり、王都にタウンハウスを置くものだけど……。


 父親の死後、働き詰めだったライルの母親は、現在(やまい)でベッドで伏せていることが多い。そして緑豊かなローズロックのタウンハウスで療養している。さらに騎士団長であるライルは、宮殿の敷地内にある騎士団本部の宿舎で、寝泊まりすることが多かった。


 つまりタウンハウスがなくても、なんとかなっていたのだ。

 しかもライルは騎士団長になった後、国境付近の戦地に向かい、王都からも離れていた。


 結果、タウンハウスが未だ王都にない状況。


 その上で、母親の容態がよくないということで、国王陛下への報告を終えると、すぐに領地へ戻っている。ゆえに私との婚約話は……ライル不在の中、代理人により進められることになった。

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