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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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夢のような時間

 結婚式当日。


 ファーストミートの慣習に則り、朝食からライルとは別行動だった。

 自室に朝食は運んでもらい、フィオナとおしゃべりをしながら、食べた。


 その朝食が終わると、早速、身支度を整えることになる。


 まずはメイクをしてもらう。


 顔を洗い、クリームを塗り、ファンデーションで肌のトーンを整えた。パウダーを全体的にのせ、瞼に薄くアイシャドウを広げる。アイライナーで目の縁を強調させ、淡い色合いのチークをほんのりのせていく。最後はローズ色のルージュを使い、メイクは完成。


 次に髪をアップにして髪飾りで留めると、ウェディングドレスへの着替えとなる。


「せっかくの晴れの日の衣装、新しく仕立てた物を身につけられたら良かったのですが……でもお嬢様はスタイルもいいので、このクラシックなドレスもお似合いですよ」


 ドレスの件は、ライルに話していない。

 戦場に出ていることが多い“野獣”(ビースト)なら、ウェディングドレスのことなど、どうせ気にしないと思っていた。実際に会って以降は、洗練された雰囲気のライルにドキドキしてばかり。そして頭の片隅に母親のお古の垢抜けないウェディングドレスがチラついていた。


 でも。


 どうにもならない。


 既製品では、サイズがしっくり来ないだろう。もし急ごしらえで用意していると、ライルや義母に知られたら……。印象が悪いと思う。もはや式当日に悪あがきしたところで無意味だ。


 まずは下着を身に着け、カビ臭さを感じるウェディングドレスを着ようとしたまさにその時。


 扉がノックされる。


 尋ねてきたのは、義母の専属侍女。


 どうしたのかと思ったら……。


「盗賊の被害に遭い、もしかするとウェディングドレスで問題が起きていないか。奥様は心配なされ、こちらの衣装を用意しています。何かお困りでしたら、ご利用ください、とのことです」


 そう言って渡されたのは……。


「まあ、お嬢様、見てください。なんて繊細で手の込んだウェディングドレスでしょう。この胸元を飾るリバーレース。ウエストを飾るサッシュリボンもとても華やかです。それにスカートのカットワークレースも本当に素敵ですね」


 一目見て分かってしまう。

 私の両親のごり押しで、三カ月後の結婚式が決まった時。

 義母は、ウェディングドレスは新調しないのだろうと気付いた。

 古いドレスを着ることになるかもしれないと想定し、限られた時間の中で、このウェディングドレスを用意してくれたのだ。私のために。


 さらに。


「こちら、ウィンターボトム侯爵様からです。薔薇石英を使ったネックレス、イヤリング、髪飾りで、侯爵様の所有する商会で試作品として作ったもの。もしよければ本日の披露宴やウェディングパーティーでお役立てください、とのことです」


 王侯貴族が好む、ピンクサファイアのような煌めきはない。だが柔らかい色合いの薔薇石英は、それだけで十分美しかった。何よりもライルが私のために用意してくれたのだ。私が変に気を遣わないで済むよう、結婚式当日に渡してくれた配慮にも、胸が熱くなる。


「お嬢様、泣くのは堪えてください! せっかくお化粧したばかりですから。式が始まってから泣くのは仕方ないでしょう。でも今はまだ、新郎にも会っていないのです。踏ん張ってください!」


「そうね。笑顔でウィンターボトム侯爵に会わないと。それにお義母様にも」


「そうですよ、お嬢様。それではこちらの素敵なウェディングドレスに着替えますね?」


 この問いに「ノー」の答えなどない。


 こうして私は義母がプレゼントしてくれたウェディングドレスに着替え、結婚式に挑むことになった。


 ◇


 挙式でのライルとのファーストミート。


 これは本当に……感動的だった。


 ライルの着ているフロックコートは、碧みがかったシルバー。とても素敵だった。


 何より本人が、いつもおろしているサラサラの前髪の分け目を変え、左側の前髪を後ろに流していたのだけど……。普段以上にハンサムで、私の心臓はドキドキいいっぱなし。


 もはやその姿に見惚れ、自分が何をするべきか忘れそうになるが……。

 私をエスコートするベルナードが、昨日の練習同様、真剣にエスコートしてくれる。おかげでちゃんとライルの待つ祭壇のところまで、行くことが出来た。


 行くことはできたが……。

 私を見てとろけそうな笑顔になるライルを見ていると、嬉しさと感動で全身の力が抜けそうになった。


 でもすぐにしゅへ宣誓が始まり、気を引き締めることになる。


 さらに。


 誓いのキス。


 昨日の練習で額にキスをされたので、今日もそうだろうと思っていた。

 ベールをあげてもらった後も、変に緊張することはない。


 ベールを上げた状態の私と向き合ったライルは「アイリ」と初めて私をファーストネームで呼んだ。これに心臓がドキンと高鳴った瞬間。


 ライルの顔が近づき、慌てて目を閉じる。


「!」


 唇に感じる体温と柔らかい感触。

 その触れ心地があまりにも気持ち良く、これまで感じたことのない痺れが足元を這い上がる。


 キスをされている、額ではなく、唇に!


 その事実に興奮してしまうし、息遣いは荒くなってしまう。そして私のその様子がライルにも伝わったのか、彼も熱い吐息を漏らしながら、キスを続けている。どんどんお互いの気持ちが高まり、止まらなくなりそうになった時。


 司祭の咳払いに我に返る。


 初めての唇でのキス。完全に陶酔しきっていた。


 トロンとした瞳でライルを見上げると、彼の碧い瞳も潤んで、目元が赤くなっている。


 再びキスをしそうになり、再度の司祭の咳払いと共に、「指輪の交換です」と宣言されてしまう。しかもリングボーイも登場するので、慌てて白いロング手袋をはずすことになった。

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