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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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王命

「え、騎士団の団長!? いや、絶対! 体中傷だらけできっと獣みたいなんだわ! 私は第二王子みたいな優しい男性がいいわ! それに平民成り上がりの侯爵なんて、まがい物よ。絶対に嫌です」


 私の妹ユーリ・ミルフォードは、今年十六歳になっていた。

 まさに先日、社交界デビューを果たしたばかりで、ユーリの元には沢山の求婚状が届いている。


 ユーリは貴族令嬢としての教養やマナーが完璧というわけではなかったが、とにかく愛嬌があった。愛嬌……というか人心掌握術に長けており、両親の愛情も、令息たちの愛情も、まさに独占状態。


 つまり引く手数多なので、両親もよりよい婚約者をと、なかなか首を縦に振らずにいたら……。


 王家から声がかかった。


 妙齢の令嬢を持つミルフォード伯爵家に、王家から声がかかる。

 王家から声がかかるなんて、そうあることではない。

 もしや王族から求婚状が届くのかと、両親は一瞬期待した。

 ユーリが片想いをしている第二王子からの求婚状が来たのかと。


 だが届いた書簡を確認すると……。


 私達が暮らすカトレア王国は、国境を接するザーイ帝国と、長きに渡り対立関係にあった。ザーイ帝国は、隣国を潰しては国土を広げ、カトレア王国にまで迫っていたが。国王はこれを退けるため、遂に王都を守る精鋭騎士の集団、王立イーグル騎士団を戦場に投入した。


 王立イーグル騎士団を率いるのは、団長であるライル・ウィンターボトム。


 ライルは平民から武術の腕一つで団長までに昇りつめ、侯爵位を授かっていた。

 爵位と同時にウィンターボトムというファミリーネームを与えられている。

 彼の父親もまた、騎士であったが、既に戦死していた。


 つまりライルは初代ウィンターボトム侯爵に、若干二十歳で叙せられていたのだ。


 その若きカリスマは、国境でのザーイ帝国との激戦に、見事勝利を収めた。

 その戦いぶりは”野獣”(ビースト)と言われている。

 それだけ熾烈を極めた戦いであり、ライルは血の雨を浴びながら、勝利を得た――そう新聞には書かれていた。


 そんなライルに対し、国王陛下は格別な褒美を与えることを誓う。

 終戦の立役者である彼が望むものを、何でもとらせようと約束した。


 ライルは既に騎士団の団長であり、侯爵位も賜っている。

 これ以上で何を望むか。

 領地か、お金か、金銀財宝か。


 するとライルは、貴族令嬢との結婚を望んだのだ。


 貴族の結婚の許可は、カトレア王国では国王陛下がその権限を持っていた。

 王族と貴族のパワーバランスを崩すような婚姻が行われないようにするためだった。そして今回国王陛下は、ライルが望む貴族令嬢との結婚を快諾した。


 そのライルが望んだ貴族の令嬢というのが、ミルフォード伯爵家の令嬢だった。


 ライルが我が家を指名した理由は、明白。


 まず、彼が平民出身であることから、公爵家は求められても、難色を示す可能性があった。それでも国王陛下が望めば、公爵令嬢とライルの婚姻は成立したはず。でも社交界で後ろ指を刺されることになる。それはライルだけではすまない。ウィンターボトム侯爵家が存在する限り、言われ続けるのだ。


 平民成り上がり風情が調子に乗り、公爵令嬢を娶るとは!と。


 さすがにそれは避けたいとなったのだろう。

 そうなると、伯爵家、子爵家、男爵家の令嬢を……となる。


 今、社交界で話題の令嬢と言えば、私の妹ユーリ・ミルフォードだ。


 しかも両親が出し惜しみをすることで、まだ婚約者はいない。

 トロフィーワイフとして迎えるなら、まさにユーリは最適。

 よって我が家に王家から打診が来た時、当然、ユーリが指名されていると誰もが思った。そして両親はこの王家からの連絡を悪くない話だと思っていたのだが。


 まさかのユーリ本人が反対した。


 ここで王家からの話を受ければ、例え王族と婚姻しなくても、恩を売れることになる。それに相手は侯爵家の当主。伯爵令嬢であるユーリの結婚相手としては、上々のはずだった。


 というのも。


 プライドの高い公爵家は、伯爵家であろうと、相当上位でなければ、嫁を貰う気など毛頭ない。


 つまりユーリと公爵家の令息が結婚する可能性は低かった。

 

 その一方で、王家は政治的に婚姻相手を決めている。

 例え相手が伯爵家でも、王家に対し、多大な利益があるとなれば……。

 婚姻を結ぶことも厭わない。

 よって第二王子や第三王子がユーリと婚約というチャンスがないかと、父親は窺っていたようだが……。


 第三王子では歳の差があり過ぎ、おそらく王家側が断る。よほどの好条件を提示できれば、それも変わるだろうが……。でもそれなら第二王子と婚約するよう、言われると思うのだ。年齢もユーリと四歳差しかないのだから。


 だがしかし。


 ミルフォード伯爵家として、国王陛下が首を縦に振るような好条件は、提示できていない。そうなると侯爵であるライルとユーリの婚姻は……悪い話ではなかった。


 だが当の本人であるユーリは、騎士団長などではなく、優男の第二王子がいいと言うのだ。


 父親は困り切っていたが、書簡を改めて読み直し、気が付く。


『ライル・ウィンターボトム侯爵に、娘を嫁がせるように』


 “娘”と書かれているだけで、「ユーリを」とは書かれていない。

 つまりミルフォード伯爵家の娘であれば、姉でも構わないのでは……?と思ったのだ。


「アイリ、お前が団長に嫁ぐといい。社交界デビューしているのに、お前のところには縁談話がさっぱり来ない。どうせろくな嫁の貰い手も、このままではつかないだろう。戦争の英雄の妻になれるのだ。光栄だと思うがいい」


 父親はそんな言い方をするのだけど……。


 私が社交界デビューしても、スポットライトが当たるのは、妹のユーリだった。私は日陰の存在。それどころかユーリを引き立てるため、私には地味なドレスを着用するよう、父親は言っていたのだ。後ろで糸を引いているのはユーリだろうが、父親は嬉々としてそれに従っている。


 つまりは舞踏会では壁の花でいることを、両親とユーリから強制されていた。そんな扱いを受けていたので、私に縁談話が来るわけがなかった。


 でも、私はそれで構わないと思っていたのだ。


 なぜなら、約束があるから。


 幼い頃に行った収穫祭。


 そこで迷子になり、転倒した私を助け、コットンキャンディをプレゼントしてくれた少年がいた。両親を見つけだし、送り届けた後、名乗ることなく姿を消してしまったが。


 会いに来ると、あの少年は言っていた。

 私はその言葉を信じていたのだ。


 だって。


 その少年は、いつの間にか私にとって、初恋の相手になっていたから……。

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