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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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まるで宴のような

「もう前祝いだ。飲め、飲め!」

「ウィンターボトム未亡人も、可愛い嫁ができ、元気になられた」

「めでたい、めでたい!」


 ライルの結婚式に参加するため、王都から駆け付けた騎士、その数、何と百名!

 本当はもっと希望者がいたが、王立騎士団は戦場から戻っても、全員が全員、休みではない。そもそもの役割として、王都と宮殿を守る役目がある。


 よって諸々都合がついて、この地へやって来たのが百名だった。


 この百名での晩餐会。

 もはや披露宴の予行練習のように思える。


 最初は緊張した。


 何せ着席しているのが義母を除き、男性ばかり。

 しかもその多くが、騎士!と分かる筋骨隆々な方もいる。

 ライルやベルナードのような、一見すると貴公子というタイプの方が少ない。


 しかもお酒が入る前の彼らは、無口でキリッとしていた。

 それは規律のとれた軍隊のそのもので、何だか威圧されてしまう。


 だがきちんと挨拶をして、さらに義母が……。


「ミルフォード伯爵令嬢は、ライルと顔を合わせることなく、婚約し、領地まで来てくださりました。私の病のせいで、ライルは王都に戻れなかったのだけど……。彼女は事情を理解し、昼食の席に私が同席したことを心から喜んでくれたのよ。それに食事の最中も何度も気を遣ってくれたの」


 着席した騎士達は真面目な表情を崩さず、義母の話を熱心に聞いている。


「そしてね、私が王都の様子を聞くと、人気のオペラや演劇の話をしてくれて、楽しかったわ。ちゃんと詳しく話してくれるから、観ている気分になれる。でもね、実際に観たい。元気になって私もミルフォード伯爵令嬢と観劇したいと思ったら……。なんだか元気が出ちゃったの。おかげでこの晩餐会に顔を出すこともできたのよ。不思議よね。彼女から生きる力をもらえたわ」


 これを聞いた騎士達は、一斉に私へ熱い視線を送る。そこでライルも口を開く。


「ミルフォード伯爵令嬢は、母上に元気を与えただけではない。昨晩の盗賊の襲撃で亡くなった者を弔う場に、自ら立ち会うことを申し出た。さらにこの屋敷に無事辿り着くことができた使用人達が、不便な思いをしていないか。気遣う優しさも持ち合わせている。心から尊敬できる女性だ。皆もぜひ、彼女と仲良くやってほしい」


 それからの乾杯で騎士達がお酒を飲むと……。


 次第に気分も上がり、饒舌となり、晩餐会とは思えない賑わいを見せる。

 もはや戦勝の宴のような盛り上がり。

 私は勿論、そんな宴に参加したことがない。

 ただ、ロマンス小説の中で描かれていた。

 勝利の美酒に酔う騎士達の姿が。

 その世界が目の前で繰り広げられているようで、なんだか私の気持ちも盛り上がった。


 近くの席に座る騎士は、気さくに私に声を掛け、昨晩の盗賊の話から始まり、戦場でのライルの活躍ぶりを話して聞かせてくれる。「脚色するな!」とライルは顔を赤くするが、どれもこれも本当に。現実で起きたことであり、きっとその場では、とてもドラマティックだったに違いない。


 そんな話で楽しく食事をしていると、コース料理の提供は終わり、皆、隣室へ移動。ソファに座り、私は義母とおしゃべりをしていた。紅茶とフルーツを楽しみながら。


「ミルフォード伯爵令嬢、私はそろそろ部屋に戻るわ。これまでずっとベッドで寝ている生活だったから、さすがに今日は疲れちゃった。でもこれは具合が悪いわけではないの。心地よい疲れよ。ぐっすり眠ることができそうな。きっとあなたに会えたからね。……良かったわ、あなたがライルを生涯の伴侶に選んでくれて」


「こちらこそ、私のために昼食と晩餐会に顔を出していただき、ありがとうございます。ぜひ今日はゆっくりお休みください。そしていろいろ落ち着きましたらぜひ、一緒にオペラや演劇を観に行きましょう」


「ふふ。それが今の一番の楽しみよ。あ、勿論、明後日の結婚式も。きっと素敵な花嫁さんになると思うわ」


 そう言った義母にハグされた瞬間。


 実の両親とハグをしたのは、いつだったかと思ってしまう。


「大丈夫よ。あなたのご家族が結婚式へ参列しないこと、誰も気にしていないから。そもそも我が家も親戚がいないのよ。亡くなった夫の兄弟も戦場でみんな命を落としてしまった。そして私には兄がいたけれど、兄は兵として出征し、亡くなっているの。皆、結婚することもなく、この世を去ってしまって……。だからライルの親族も、参列するのは私だけだから、安心して」


 この言葉には、とても励まされる。

 私から何か伝えたわけではない。

 でも異例のスピードで結婚式までが決まり、そして家族は誰一人、親族含め、新婦側は参加しないとなれば……何かあるのだろうと察しはつく。あえてそれを言わず、でも励ましてくれる気配りに、涙が出そうになる。


「マダム、お部屋までエスコートします。入浴の準備も出来ております」


 騎士と共に義母が去ると、彼女の座っていた席に、ベルナードが移動してきた。

 ライルは大勢の部下である騎士に囲まれ、何やら盛り上がっている。


「すっかりウィンターボトム未亡人のハートも掴まれましたね」


「それは逆です。私の心を、がっつりウィンターボトム未亡人が掴まれたと思います!」


「それはそれは。では我があるじの方はいかがですか?」


 これには自然と顔が赤くなる。その様子を見たベルナードは、こんなことを言い出す。


「そのお顔。王都の噂とは別人だったでしょう? ただ、見えない場所に多少の傷はありますよ。まだ未熟だった時の訓練で怪我をすることもありますから。でもそれこそ、名誉の負傷ですから、そこも含め、愛してあげてください」


「! 勿論です。私はライル様の見た目より、部下に慕われ、母親想いで、私に対しても気遣い頂けるその内面性に惹かれたのですから。傷があっても気にしません!」


 そう思わず答えてしまったが、すぐに恥ずかしくなってしまう。

 同時に。

 私にライルを好きになる理由は沢山あるが、彼は一体どうして私を選んだのかと不思議になる。


「ライル様はどうして私を選んだのでしょうか? 妹のユーリではなく、私が嫁ぐので問題ないということは分かったのですが、そもそもなぜ私なのですか……?」

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