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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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野獣

 入浴を終え、カウチで横になった状態で、フィオナやメイド二人に髪を乾かしてもらっていると……。


 ついウトウトしてしまう。


 それは間違いなく、あの危機を乗り越え、無事、ローズロック領に入れたからだ。


 それに。


 ユーリではなく、私を選んでくれたライル。

 予定していた場所に私が来ないことを心配し、わざわざ迎えに来てくれた。

 私のことを調べ、私の好みに合わせた素敵な部屋を用意してくれたのだ。


 それだけで十分だった。


 両親の愛は、ユーリが独占していた。

 私に向けられる関心なんて、ほぼないにも等しい。

 それを踏まえると、ライルが私のためにいろいろしてくれること。

 夢のようだし、嬉しかった。


 例え“野獣”(ビースト)のような傷だらけの恐ろしい姿をしていても。

 構わない。彼を愛そう。


「お嬢様、髪は後は自然乾燥で大丈夫でしょう。ピオニーの香油もつけたので、ぱさつくこともないはずです。ドレスへ着替えましょうか」


「あ、でも荷物は大変な状態なのよね?」


 するとフィオナはこんなことを教えてくれる。


「お嬢様が入浴中、隣室で荷物の状態を確認しました。ほとんどがダメになっていましたが……。宝飾品が入ったトランクは、カギがかかっていました。あとで開けるつもりだったのでしょう。そのまま放置されていました。ドレスが入ったトランクのいくつかは、中身がドレスだと分かると、すぐに閉じられたようです。汚れもありませんでした」


 そして隣室からフィオナが持ってきてくれたドレスは……。


「この優しい水色と繊細な白いレース。銀糸で刺繍された薔薇が、お嬢様の雰囲気にピッタリだと思います。これを着たお嬢様を見たら、きっと団長様も笑顔になるかと」


 こんな風にフィオナに言われたら、これ一択だろう。


 ドレスに着替えると、髪は両サイドでハーフアップの三つ編みを作り、それを後頭部でまとめ、髪飾りで留めた。お化粧はナチュラルに、宝飾品も無事だったものの中から、パールを選び、身に着ける。祖母の形見で譲られたもので、これはユーリにとられずに済んだ、数少ない宝飾品の一つだった。


 こうして準備が整ったまさにそのタイミングで、黒のテールコート姿のベルナードが、部屋に迎えに来てくれた。


「! とてもお綺麗ですよ。この領地にミルフォード伯爵令嬢程の美人は……いないと思います」


 そんな褒め言葉をかけられ、嬉しくなってしまう。


「今回はわたしですが、顔合わせが終わったら、以後はあるじがエスコートすることになります。これが最初で最後……というわけではないでしょうが、よろしくお願いいたします」


 そう言うとベルナードは左手は腰の後ろに、お辞儀の姿勢で右手を私に差し出す。


 実にエレガントだ。


 ベルナードは自身を従騎士だと名乗ったが、その様子を見る限り、騎士にしか思えない。なんなら彼が領主にさえ、思えてしまう。


 ともかくそんなベルナードにエスコートされ、昼食が行われる大広間に案内された。


 大広間。


 もしかしたら多くの家臣が勢揃いしているのでは?


 扉の前でドキドキしたが……。


 中に入るとそこにいるのは、眉目秀麗な貴公子と銀髪碧眼のマダムだけだ。

 大勢がいると思ったが、違うことに安堵する。


「改めまして、アイリ・ミルフォード伯爵令嬢。自分が王立イーグル騎士団の団長であり、ウィンターボトム侯爵、ライル・ウィンターボトムです。昨晩はお見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ありませんでした」


 椅子から立ち上がったライルが、私の前へ来て、優雅にお辞儀をしたのだけど……。


 「えっ」と小さく声を出し、私は固まってしまう。


 だって。

 ライルは私の想像とは全然違う。

 いや、王都中の人間が想像していた姿と、全く違うのだ!


 髪は輝くようなプラチナブロンドで、高い鼻梁の両側には、湖のように澄んだ碧い瞳。シャープな輪郭に血色のいい唇、戦場を駆けぬけていたとは思えない程、肌には艶がある。しかも見える範囲で、怪我の痕がないのは……。


 そうか。

 ライルは強いから、怪我を負うこともきっとそうないんだわ!


 それに甲冑をつけていないその体は、無駄を削ぎ落とし、鍛え上げられたものだと分かる。


 着ている紺碧色のテールコートのラインが、これだけシュッとしていることからも、それは明らかだった。


 つい見惚れてしまったが、慌てて私も挨拶を行う。

 ライルは美麗な笑顔を浮かべ、改めてお辞儀をした後に。まだ椅子に座っていたマダムの手を取る。ゆっくり椅子から立ち上がるのを手伝うと、マダムをエスコートし、私のそばへと移動した。


 もしかしてと思いながら、マダムを見る。


「ミルフォード伯爵令嬢、こちらは自分の母親であり、ウィンターボトム未亡人です。病を押してこの場に参加しています。途中、退席するかもしれませんが、どうかお許しください」


 ライルのお母様……!


 病が重く、ベッドで休んでいることが多いと聞いていたのに。


 美しい濃紺のドレスを着て、きちんとお化粧もして。

 つまり身綺麗にしてこの場に来てくれていることに、感動する。しかも……。


「ミルフォード伯爵令嬢、初めまして。ずっとお会いしたいと思っていました。私の病のせいで、ライルとも会えないまま、婚約、そしてここまで来ていただくことになり、ごめんなさいね。私のことなど気にせず、ミルフォード伯爵令嬢に会いに行くよう、何度も言ったのですよ。でもこの子はまだ親離れできていないみたいで……」


「母上、確かに自分は礼儀に欠く行動があったかもしれません。ですが母上は危篤だったのですよ!? 今、ここにいることが奇跡なぐらいなのに。親離れできていないなんて言い方をせずとも……」


 これを聞いた私はビックリ。まさか危篤状態だったなんて!

 それなら領地のこの屋敷から離れられなくても、仕方ないと思う。


 加えて親離れできていないとは、私も思わなかった。


 激戦を終え、三カ月の休暇をもらったと聞いている。

 それまでの十年間、休みなどなしだった。

 戦場にいる時間が、とにかく長かったのだ、ライルは。

 そんな折、母親が危篤となり、どれだけ心を痛めたか。

 なんとか間に合い、帰ってこれたのだから……。


「ウィンターボトム侯爵、ウィンターボトム未亡人。王侯貴族の婚礼では、姿絵の交換のみで、挙式当日に顔を合わせる……ということもよくある話。よって私は気にしていません。お気になさらないでください。むしろ、この場に同席いただけていること、心から感謝しています」

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