モブNo.78:「いらっしゃい!修理・買い取り・買い物。何が入り用かな?」
とはいえ、まずはおやっさんに相談だね。
カタログのメーカーに直接行けばいいのだけど、絶対流行りの奴を押しに押しまくってくるだろうから、ものすごく苦手だ。
おやっさんの店『ドルグ整備工場』に歩いて来店する。
「こんにちは~」
声をかけながら工場内にはいると、おやっさんと従業員達がせわしなく働いていた。
「よう。船なしとは珍しいな。船が爆破でもされたか?」
作業を中断し、汗をふきながらおやっさんが話しかけてきた。
僕がここにくるのは船関係しかないので、大抵は船でやってくるので冗談でそんなことを言ってきた。
しかしそれは今回は冗談ではない。
「はい。たまたま船を降りていた時に船が砲撃されて大爆発しまして…」
「なに?!…まあ、命があっただけ儲けものか…」
「せっかく色々手伝っていただいた船を…申し訳ありません」
「まったくだ。サイボーグになったお前さんのメンテナンスをしなくてよかったぜ。まあ、その方がお前さんはイケメンになるかもな!」
おやっさんはめちゃくちゃ驚いたけれど、僕が無事な事は喜んでくれた。
イケメンじゃないのはいじらなくてもいいとおもうけど。
「てぇことは…これだろ?」
そういっておやっさんが見せてくれたのは、あのパンフレットのイオフス社の『ノルテゲレーム』のページだった。
「色んなメーカーが、『買い替えレベルの船が来たら見せて欲しいって』置いていってな」
「注文できますかね?」
「大丈夫だろ。当然レーダーはいいのをつけるんだよな?」
「もちろんです!」
「じゃあ前のより良いやつを探しておいてやるよ。来たら連絡する。支払いはそのときにな。それに購入後は調整もするんだろ?」
「ありがとうございます!また、場所と工具お借りします!あと、レーダーは僕も探しておきますから」
機体の購入はおやっさんに丸投げの形になったので、レーダーの方はしっかり探しておこう。
お金に糸目を着ける気はない。
おやっさんの見つけた方が性能が良ければそっちにすればいいしね。
船探しが意外にも早く終わったので時間が出来た。
なのでお祓いに行ってみようと思った。
宇宙船がバンバン飛んでる時代に非科学的だと思うが、神社・寺院・教会・神殿といったものがいまだに残り、様々な宗教儀式を残しているということは、何かしらの御利益があるからだと思う。
なので、惑星イッツにあるこれらの施設のなかで、アニメファンには有名な『ぶれす★こめっと』のキャラクターの実家のモデルになった、鷹殿神社を訪ねることにした。
神主さんは急なお祓いの依頼を受けて下さり、初穂料(お祓いの代金)を納め、お祓いをしてもらった。
大好きなアニメの聖地という事と、生の巫女さんという興奮したくなる条件だったけれど、本気で厄祓いがしたかったのもあって、お祓いが終わるまでは冷静でいられた。
ちなみに普通のお守りとアニメコラボお守りを売っていたのだけれど、当然アニメコラボはフルコンプ。通常の厄除けお守りも買っておいた。
これで少しは厄除けが出来るといいんだけど。
アーサー君とかならここで巫女さんとの劇的な出会いの一つでもあるのだろうが、僕にはあるわけがない。
おやっさんのところでの船の注文と、神社でのお祓いをすませたところで、昼食を過ぎたくらいの時間になった。
なのでファーストフードの店に入り、適当に昼食を食べ、その足で『アニメンバー』へ向かった。同時に『せいざばん』にも向かうけど。
なにしろせっかく買った様々な漫画やラノベやアニメデータカードが灰になってしまったのだから、買い直しをしないといけない。
新作は簡単に手にはいるけれど、旧作はなかなか難しいだろう。
一縷の望みをもって『せいざばん』に入り、灰になった品物を探したところ、『僕の姉がこんなに可愛いのは間違ってる』と『俺に友達はいない』はあったけど、『カウガールスウィング』と『限界超越ガロンバロン』は見当たらなかった。
取り扱いがあるかわからないけど、『アニメンバー』で注文をしてみよう。
生産終了してなければ手に入るはずだ。
『Assassin×Family』は新作なのですぐに手に入り、『限界超越ガロンバロン』は注文できたけど『カウガールスウィング』は駄目だった。
ついでだからなにか新作をと『アニメンバー』をうろうろしていたら、なんとゴンザレスに出くわした。
いつもの白衣ではなく、お洒落なカジュアルジャケットを羽織っていた。
「よう。ここで会うのは久しぶりだな」
「学生の時は良く出くわしてたけどな」
お互い時間が出来たら来るところが、学生時代から変わってないのはなんともショボい話だね。
「なに買いにきたんだ?」
「実は仕事場に暇潰しで持っていって灰になった奴の補充」
ゴンザレスは僕の言葉に一瞬驚くが、
「買いにきたって事は無事ってことだな」
と、切り返して来て、いつもの様子に戻った。
「そっちは?」
「『タイタンズトルーパー』と『銀の召喚師』の同人ノベル探しからの『Assassin×Family』のアニメデータカードの予約」
「あ!そう言えば僕もやっとかないと」
そして逆に聞き返したところ、僕自身もやっておかないといけない事を返してくれたので、2人で『Assassin×Family』のアニメデータカードの予約をして、『アニメンバー』を後にした。
『アニメンバー』を後にしてからも、僕とゴンザレスは最寄駅までの同じ道を歩いていた。
この道は学生時代も良く歩いていた道だ。
その道中には、大抵はくだらない話が始まる。
「実はさ。明日はお前のところに向かう予定だったんだよ」
「情報か?」
「いや。正確にはお前の店と商店街の船関係の店。レーダーが欲しくてさ。以前は量産品で性能のいい奴が手に入ったんだけど、今回出来ればそれよりいいのが欲しくて。もちろん量産品で」
条件としてはなかなか厳しいものでもあるので、ゴンザレスに情報を集めてもらい、その手の店をまわる予定だった。
するとゴンザレスが、
「それなら最近いい店が入って来てな。今からならまだ時間あるぞ?善は急げって言うし、行ってみるか?」
と、提案してきた。
僕は少し考えてからゴンザレスの提案に乗り、闇市商店街に向かう事にした。
闇市商店街の雰囲気は相変わらずだけど、日が傾きかけているとさらに怪しさが倍増する。
例の肉屋は『油泥から産まれし者共の価値は半減した!』という張り紙があったりする。
道を行き交う連中も、含み笑いをしたり、独り言を言ったりとバラエティー豊かだ。
そんな光景を見ながら、ゴンザレスに案内されてたどり着いたのは、船だけではなく、家電・パソコン・ドロイド・車・武器・兵器などの本体・部品・残骸に埋もれ、入り口のドアだけが見えるという、一見ゴミ屋敷にも見える感じの、『修理と再資源化のキュリースガレージ』という、見た目は闇市商店街に相応しい感じのリサイクルショップだった。
そして外観に反して店内はかなり綺麗で、リサイクル品の大型端末・汎用端末・家電・武器なんかが丁寧に陳列されていた。
そして店の奥には、金髪緑眼でショートボブ、肌は褐色で身長は150㎝と小柄ながらも、出るところは出て引っ込むところは引っ込んだスタイルの良い、黄色いツナギに頭には遮光ゴーグルというスタイルの若くて綺麗な女性がいた。
「いらっしゃい!修理・買い取り・買い物。何が入り用かな?」
彼女はそういって、笑顔で僕達を迎え入れてくれた。
褐色肌に金髪緑眼はマイノリティでしょうか…
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