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モブNo.52:「じゃあ人生の先輩のアンタに奢ってもらおうじゃないか!みんな!露店にいくよ!飲み放題だ!」

 テロリスト達が捕縛され、陽キャ貴族達も捕縛された後、本部では夕方から盛大に祝勝会が行われていた。

 特に『漆黒の悪魔』『深紅の女神』『羽兜』の 3人は大量のマスコミに囲まれていた。

 ランベルト・リアグラズ=イキリ君は緊張しまくってたけど、後の2人は慣れている様子だった。

 アーサー君にもマスコミが群がっていて、セイラ嬢がべったりと張り付いて彼女アピールしてたね。

 その最中、僕は燃料と弾薬を補充し、預けてあった陽子魚雷を返却してもら…えなかった。

 あの陽キャ達が、僕や他の人達が預けていた陽子魚雷を、勝手に持ち出していたらしく、荒野に不時着した際に砂ぼこりが入った可能性があるから、チェックをしてから返すと言われてしまったからだ。

 砂ぼこりが入ることはないとおもうが、念のためということらしい。

 陽子魚雷は基本消耗品なので、新しく買い替えてもかまわないのだが、それなりの値段なので、返却してくれるまで待つことにした。

 本当なら自分達も祝勝会に参加したいだろうに、安全のためにと整備点検をしてくれる整備兵の人達には、本当に頭がさがる。

 報酬は後日傭兵ギルドに送られてくるので、本当は祝勝会が始まる前に帰るつもりだった。

 祝勝会に参加して、変なの、特に顔も知らない『青雀蜂(ブルーホーネット)』なんかに絡まれたりしたら、たまったものじゃない。

 なので、船は本部の一番端っこまで移動させ、船の中でおとなしくしておくことにした。

 微かに聞こえてくる歓声を聞きながら、参戦者名簿のチェックを済ませて、帰り道にある露店で買った、肉串とコーヒーと乾パンという食事をすませると、しっかり戸締まりをし、簡易ベッドに横になってラノベを読み始めた。



 主人公サイド:アーサー・リンガード


 ようやくマスコミから解放されると、どっと疲れが襲ってきた。

 はっきりいって、敵を撃ち落とすより、マスコミ対応の方がつらい。

「大丈夫ですかアーサー様?」

「ちょっとヤバいかも…」

「では、もうテントに戻りましょう」

「そうだね」

 セイラも心配してくれたので、早めにテントにもどろうとしていた所に、バーナードさんとモリーゼさんとレビンがやってきた。

「よう坊主。その様子だと、マスコミに(たか)られたみたいだな」

「戦闘より疲れました…」

 バーナードさんは、アルコールの入っているらしいカップを手にしていて、

「相変わらずそいつを連れてんのかい?たまにはあたしなんかどう?」

 モリーゼさんはいきなりヘッドロックをかけてきた。

 胸が顔に当たるし、耳元で囁かれると、変な気分になってしまう。

「くっ…苦しいから放して下さい」

「モリーゼさん!わたしのアーサー様にくっつかないでください!」

「おーこわ。冗談だよ冗談」

 セイラがモリーゼさんに一喝すると、モリーゼさんはすぐに離れてくれた。

 また捕まってはたまらないので、レビンに話しかける。

「やあ。いい戦果だったらしいね」

「まあな。『黒』『赤』『青』『黄緑』の4人には敵わねえけどな」

 レビンとは、拳を合わせる挨拶をする。

 これは彼に教えてもらった挨拶だ。

「あの4人か…。特に『黄緑の羽兜』は次元がちがうね」

「『赤』も凄いよな。あの頭のおかしい連中を、戦闘能力を奪った上で不時着できるぐらいは動けるようにするのは、なかなか難しいはずだ」

「ウーゾスさんならできそうだけど」

 素晴らしい実力を持つウーゾスさんなら、やってしまうかもしれない。

 そんなことを考えていると、

「いい腕してるわよね。2㎞は離れたとこから、トーチカの銃眼にミサイルを綺麗に飛び込ませたからね」

 モリーゼさんがウーゾスさんの戦果を報告してきた。

 にわかには信じられないけれど、モリーゼさんが嘘を言う必要はないので、真実なのだろう。

「それだけの腕があって、どうして騎士階級(ナイトランク)に留まろうとするんでしょうか?面倒だからというのはなんとなくわかりますが」

 僕は、前から思っていた事をモリーゼさんに尋ねてみた。

「あたしも一緒さ。司教階級(ビショップランク)からは色々面倒臭いのが増えるし責任も増えるからね。騎士階級(ナイトランク)の方が気楽でいいさ」

 その答えは、以前セイラが聞いたものと同じで、モリーゼさんも騎士階級(ナイトランク)で留まってる人なのが発覚した。

「それで本人は?」

「帰っちまったんだろうぜ。奢らせるつもりだったのによう」

「普通はあんたが奢るんじゃないのか?」

「俺は新人だぞ?奢るのは先輩の義務って奴だ」

 レビンが、バーナードさんにウーゾスさんの事を聞くと、なんとも都合のいい答えが帰ってきた。

 その主張に、モリーゼさんが乗っかっていった。

「じゃあ人生の先輩のアンタに奢ってもらおうじゃないか!みんな!露店にいくよ!飲み放題だ!」

「ちょっとまて?あんたザルで有名だって聞いたぞ!やめろ!報酬がなくなる!」

 露店に向かうモリーゼさんをバーナードさんが必死の表情で引き留めようとする。

 まあ、こんなのも傭兵同士のやり取りの1つだ。


 主人公サイド:終了



 翌朝。日がまだ昇りきらないうちに、整備のところに向かい、陽子魚雷を受けとると、あの陽キャ達がどうなったか尋ねてみた。

 侯爵令嬢は、父親の名前をだして抗議したらしいけど、伯爵には通用しなかった上に、侯爵(ちちおや)から縁切りをされたらしい。

 その仲間内も似たような状態で、侯爵令嬢共々正規の軍人(階級は侯爵令嬢が大尉・他は中尉・少尉)であったために、軍法会議にかけられるらしい。

 さらには、それを不服として逃亡しようとしたらしく、罪がさらに重くなったそうだ。

 まあ、当然の結果かな。

 朝早い時間ではあるが、すでに動いている人達はいっぱい居たりする。

 炊き出しをしている人達や、食事を提供している露店の人達だ。

 特に露店の人達は、売れるだけ売っておこうという考えらしい。

 どちらにしても、朝食を提供し終えたら撤収を始めるそうだ。

 せっかくなので朝食をもらって、備え付けのテーブルでいただいていると、誰かが目の前に座った。

 まさかヒーロー君かと思ったが、違う人だった。

 違う人だったが、とんでもない人が来てしまった。

 掛け値なしのイケメンというのをご存知だろうか?

 僕みたいな、芸能人の俳優や女優に一切興味のない人間からみても、『ああ、この人はイケメンなんだな』と、わかるくらいの人物が、僕の対面に座ったのだ。

 ちなみに、掛け値なしの美少女というのもあるが、お目にかかったことはない。

 年齢は高校生ぐらい、私服だった陽キャ達と違い、きちんと軍服を着ているから、駐屯兵か伯爵の私兵なのがわかる。

「昨日は大変だったなぁ…」

 なんだ?なんでいきなり話しかけて…きたわけではなさそうだ。

 コミュ障気味の僕としては、見知らぬ人から急に話しかけられるのは非常に辛いので、話しかけられてないのはありがたい。

「一族全体が軍人の家系で、父や叔父達全員が酒飲みで酒癖が悪い人が多いから後片付けとか介抱とか本気で大変なんだよなぁ…。尊敬している人達だけに怒鳴るわけにもいかないし…はぁ…」

 盛大な愚痴を言った後、謎のイケメン少年は、かなり疲れた表情をしながら、本気のため息をついた。

 そのため息の理由はわからなくもない。

 未成年が酒の席に居てもつまらないだろうし、親族と言うことで逃げ出すことも出来なかったんだろう。

 何より軍での階級が上なのだろうから、叱責も出来ないんだろう。

 だとしても、なんでその愚痴を初対面の僕に聞かせるように話しはじめたんだ?

 あれか。こっちから『どうしたんですか?』と、話しかけられるのを待ってる状態なのか?

 それなら実に迷惑な話だ。

 それとも、誰にも言えない愚痴をこの場で吐き出してるだけか?

 それだったら、もう少し小声にして欲しいし、早いとこ病院にいったほうがいいと思う。

 まあ、ここにいるってことは、作戦の参加者なわけだし、なんか苦労してるみたいだから、スルーしてやるかな。

 それから5分ほどで食事を終えると、イケメン少年をそのままにしてその場を後にした。

 誰かに捕まらないか心配だったが、早朝な上に、大半が酔いつぶれて寝ているため、ちょっとのことでは起きない。

 なので、足早に船まで移動すると、早々に船に乗り込んで惑星テウラを後にした。

独り言がでるイケメン少年は何者なんでしょうか?w


年末にさまざまな所用があり、時間が失くなってしまうため、年内の更新はこれが最後になります。

来年からもよろしくお願いいたします。


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします


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― 新着の感想 ―
>点と点が絶妙に線にならないバランス感覚 なるほど上手い見立て 話が繋がるようでつながらない、でも伏線になってる。 それがはっきりわかるけど内情は分からない。
[良い点] ここで話しかけ無いから点と点が絶妙に線にならないバランス感覚、綱渡りで良いですね(*´ω`*)
[一言] とても続きが気になります
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