モブNo.22:「あの『羽兜』が敵右翼に向かってくれたのは幸運でしたね。あれがここにいたら、我々は今頃宇宙の塵だ」
ちょっと短いのと、
主人公のセリフがありません
ご指摘等いただきましたので、文章を大幅に修正いたしました
ロスヴァイゼさんと部隊の一部が右翼の援護に向かったすぐあと、左翼の残った部隊は敵本隊に攻撃をしかけるべく前進を開始した。
それに対し、当然ながら敵本隊も迎撃体制を整えてくる。
小型機や無人機。中型戦闘艇に大型戦闘艇に超大型戦闘艇と、なかなかの戦力を向けてきた。
これで中央の膠着に動きが出るだろうし、ロスヴァイゼさんが敵左翼を潰してくれればさらに有利になる。
あとは敵側に一発逆転のびっくりメカが無いことを祈りつつ、ゆっくり時間稼ぎをすればいい。
と、そんな甘いことを抜かした5分前の自分を殴ってやりたいお!
残った僕達左翼部隊に相対してきた迎撃部隊は、きっちりと訓練された兵だった。
各個人の動き・しかけるタイミング・機体同士の連携と、最初にいた右翼部隊とは段違いの実力を持っていた。
何度も何度もギリギリにかわして何とか当てる。
コンマ1秒も気が抜けない状態が、さっきから続きっぱなしだ。
良くかわせているものだと自分で感心する。
ならばと中型戦闘艇に大型戦闘艇に超大型戦闘艇などに近づこうとすれば、即座に護衛機が立ちふさがり、中型戦闘艇・大型戦闘艇・超大型戦闘艇は距離をとるため近づくことすらできない。
はっきりいって前進どころか後退する勢いだ。
これはボクの勝手な想像だが、敵本隊は大半が傭兵崩れや犯罪者で構成されていて、士気はそんなに高くない気がする。
逆に伯爵側の本隊は士気も高く、良く訓練もされていたはずだからかなり精強なはずだ。
おそらく正規の兵であるこの人達がいたから、中央は拮抗していたと思いたい。
とりあえず戦場が大きく動くまでは、この緊張状態をしのぎきるしかない。
そうおもっていた時、不意に敵の迎撃部隊が反転、後退をはじめた。
理由はわからないが、深追いした場合は罠の可能性もあるので、部隊に残っていた連中は追いかけたりすることはなかった。
すると突然、彼等は自軍本隊に砲撃を開始した。
敵迎撃部隊に何があったかはわからないが、間違いなくチャンスには違いない。
『何だかよく分からんが攻撃続行!敵迎撃部隊には当てるなよ!』
事態を見ていた本隊からは、敵迎撃部隊を味方と判断したらしい。
『こちら右翼支援部隊。離反部隊及び敵左翼部隊を撃退。このまま敵本隊を攻撃します』
さらに、ロスヴァイゼさんがランベルト・リアグラズの声での離反部隊及び敵左翼部隊の撃退が告げられたことで、ロセロ伯爵軍の勝利は色濃いものになった。
主人公?サイド:敵迎撃部隊指揮官少佐
敵左翼部隊が本隊旗艦にむけて進撃を開始。
数が減っていたこともあり、何とか彼等の進撃を食い止めている状態だ。
「少佐。敵左翼部隊はジリジリとこちらに押されているようです。このまま行けば、敵本隊に接触・攻撃できるのも時間の問題です」
「あの『羽兜』が敵右翼に向かってくれたのは幸運でしたね。あれがここにいたら、我々は今頃宇宙の塵だ」
副官の中尉とオペレーターの少尉が、今現在の状況を多少なりと安堵する。
たしかにその通りだがまだ油断はできない。
「気を抜くな。まだあの『土埃』がいるからな。1度この船に接近された時には冷や汗をかいた」
「あの時は護衛機が間に合って良かったですね」
『羽兜』ほどではないが『土埃』も危険な相手だ。
このままゆっくりと押していくしかないだろう。
その時、副官の中尉が私に声をかけてきた。
「少佐…私達が本当に戦わないといけないのは、ロセロ伯爵ではありませんよね」
そんなことはわかっている。
だがそうするわけにはいかない理由がある。
「我々は亡くなったグリエント男爵の私兵であって、あの雌狐の私兵ではありません!」
「彼女はグリエント男爵夫人で、貴族なのは間違いない」
「ですが!」
「くどいぞ中尉」
中尉は熱を持って私に詰め寄ってくる。
しかし私にはそれを拒否しなければならない理由がある。
私1人ではない。
何十人という人達のために。
「中尉。だまって持ち場に戻りたまえ」
中尉は渋々といった表情で持ち場に戻った。
その時オペレーターから報告があがった。
「司令!通信文が届いています!差出人はオスルデパートです!」
「内容を読んでくれ!早く!」
その報告を聞き、私は思わず声を荒立てた。
「『2つの品は無事入手。破損なし。他の品物も無事入手。集荷場に向かう』以上です」
オペレーターは興奮しながらも、通信文を読んだ。
その内容は、私や一部の兵士達にとって待ち焦がれていたものだった。
「こんなときになにかの注文品の心配ですか!?」
副官の中尉は苛立った様子で私に声をかける。
「私達の家族が救出された…」
「は?」
私以外にも、何人もの部下達がその報告に涙を流しながら喜んでいた。
中尉は私や回りの者達の様子に驚き戸惑っていた。
無理もない。
人質を取られていたのは、家族持ちの一部のもの達だけなのだから。
「私を含めた十何人かは、家族を人質に取られ、あの女に従わざるをえなかった。いまのは、私達の家族があの女の手から助けられ、ごろつき共に奪われた軍事施設を襲撃し、街を取り戻しているレジスタンス達からの合図だ。おそらくあの女に人質を取られていた人達は、みな決起したはずだ!もう遠慮はいらない!我々の真の敵を倒しにいくぞ!」
ブリッジは歓喜の声に包まれた。
しかしその歓喜の声は、一発の銃声がかき消した。
その状況を作り出したのは副官の中尉だった。
「なんの真似だ中尉?」
「伯爵軍との戦闘を続けろ」
中尉は天井に向けていた銃を此方に向ける。
「理由を聞いていいかな?中尉」
「既にお分かりなのでしょう?」
「先ほどの挑発は随分と稚拙だったな」
中尉は顔を歪ませ、私に銃を向け直す。
ブリッジにいた全員に緊張が走る。
銃を突きつけられていることもそうだが、この状態が長く続けばいつ敵軍に撃沈されるかわからないからだ。
「君があの女の命令で私達を監視しているのはわかっていた。君が独身で恋人もおらず、ご両親もお亡くなりになっているため、人質が取れなかった。そのために、あの女は君を籠絡したのだろうな」
「エリザリア・グリエント男爵夫人は素晴らしい女性だ!その彼女を裏切ることは許さん!」
中尉は床に向けて再度引き金を引き、
「さっさと戦闘を続けろ!」
苛立ちながら声を張り上げる。
「少しは落ち着きたまえ中尉」
「がっ!」
中尉に向かって私がそういった瞬間、中尉の後ろにいたオペレーターの少尉が、中尉の首筋に電磁警棒を押し当てた。
中尉は短い悲鳴と共にそのまま床に倒れ込み、すぐにブリッジのメンバーに拘束された。
私は中尉が持っていた銃を手に取り、
「君は優秀だっただけに、実に残念だ。それだけあの女の手管が巧妙だったのだろう。洗脳の可能性もあるだろう」
身体が動かなくとも、私を睨み付ける中尉に向けて引き金を引いた。
「とはいえ君は、我々からみれば圧政者にしっぽを振った裏切り者だ。色々と証言はしてもらうぞ」
中尉は床に向けられた銃口を見つめ、悔しそうな眼をした。
主人公?サイド:終了
ジョンの船『パッチワーク号』のカラーリングは、カーキ色に決定しました。
オリーブドラブでも良かったのですが、カーキの語源のカーキー(土埃)が、かっこよかったのでこちらにしました。
少佐達は、色々調査しているうちに中尉がスパイ?なのを知りますが、家族の安全のために見ぬふりをしていました。
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