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モブNo.208∶「これは従姉妹の設定なの。熟女と幼女もあるけど見たい?」

『じゃあ明後日に私の店に来てくれるかな?』

「わかりました」

 僕はキュリースさんに新装備の詳細を伝え、それも搭載してもらえるように頼んでから、電話を終えた。

 

 翌日は色々と忙しかった。

 まずは銀行にいき、船を購入できるだけの情報データマネーを下ろしに行き、ビル・ドルクのおやっさんに、無事帰還したこと、船が無くなったこと、新しい船をキュリースさんが調達してくれることを報告に行った。

 するとおやっさんから、

「あああれか。少し前に、グレイシアの嬢ちゃんに、イオフス社の『ノルテゲレーム』をベースにした実験機を作るのを手伝ってくれって頼まれたことがあってな。お前さんにはそいつを売りつけるつもりかもな」

 という話を聞くことができた。

 勿論、どんな感じにしていたのかを、事細かく聞き出した。

 ちなみに痩せていたのには物凄く驚かれたが、怪我の治療と同時に、痩身の処置をされたらしいと説明すると、すぐに納得してくれた。


 そのあとは『アニメンバー』にいって、連載が復帰した『かもすもん✕』の単行本や、『レッドインデックス』の同人誌 などを購入、すぐ近くにあるゲームショップではリメイク版の『ミッションファンタジーⅠ・Ⅱ』を購入した。

 また、馴染みのゲームセンターである『プレイスターハウス』に行って、知り合いの店員さんに話しかけた時には、最初は信じてもらえなかったりした。

 さらに大規模入浴施設(スパ)の『リラクゼーションヘルスランド』にいって、たまたま見かけたバーナードのおっさんに話しかけたときはめちゃくちゃ驚いていた。

 同時に生き延びれたことを喜んでくれ、風呂から上がったあと、おっさんはビール、僕は炭酸飲料で乾杯した。

 

 

 そして翌日。

 僕は緊張しながら、闇市商店街にある『修理リペア再資源化リサイクルのキュリースガレージ』にやって来た。

「こんにちは」

「やあやあ。よく来たね」

 キュリースさんは普段と変わらない様子で、テレビであろう何かの修理をしていた。

 僕の姿を確認すると、その修理の手を止めて立ち上がり、

「機体は店の裏の倉庫にあるからね」

 裏手へと続く扉へと誘った。

 周囲の建物と店舗の建物のせいで外からは見えなかったが、店舗の裏手にはちょっとした空き地と大きな倉庫があり、空き地の端と倉庫の周囲には、素材ごとに分別された物が入ったボックスが整然と並べられていた。

「そこのは全部再資源化(リサイクル)予定のやつ。業者に売るんだよ」

 なんでも、修理が完全に不可能なものを引き取り、分解して分別し、素材として売っているのだそうだ。

 その素材の山を抜け倉庫の中に入ると、そこには、イオフス社の『ノルテゲレーム』と同じ様なシルエットでありながら、船体が多少大きい戦闘艇が鎮座していた。

「ちょっと大きいけど、見た目はイオフス社の『ノルテゲレーム』と同じ。内部に使用している部品や兵装は99%は市販のもの。要求された閃光弾と煙幕弾も搭載したよ。どちらも射出後の炸裂までの時間を1秒・5秒・10秒の設定できる市販品のやつね。レーダーはフォログ社の最新型『GPDB-03』探査距離は35億㎞。基本機能は全て搭載。省エネかつ連続使用880時間のやつね。しかしながらその構造や機構やエンジンは私の特別設計! 最高速度は時速23億㎞で光速の2倍ちょいまで出せるはず。見た目やカラーリングも前の船と同じにしたから、目立ちにくいはずだよ!」

 キュリースさんは、オタクに見られる特有のまくし立てる早口で機体の性能説明をしてくれた。

 工作艦と言ってたから、機械の修理や制作なんかが好きなのだろう。

 紹介された戦闘艇は、確かに少し大きいが、見た目は間違いなくどノーマルで薄茶色カーキーのカラーリングのイオフス社の『ノルテゲレーム』だった。

 閃光弾と煙幕弾の搭載スペースを確保したためだろうから許容範囲だ。

 ビーム砲もノーマルで、光子魚雷もノーマルだ。

「どうせなら、貫通力のある『トルネードブラスター』とか、破壊力のある『超粒子砲』とか、杭打ち機(パイルバンカー)式ビーム衝角ラムなんかは……搭載するつもりはない?」

 キュリースさんが上目遣いでにじり寄ってくるが、そんなことでOKを出したりはしない。

「けっこうです」

「……残念」

 まさかこっそり搭載してないよ……ね?


 ともかく、新しく下ろした機体にまずやらなければならないのは、

「じゃあ、少し慣らし運転をしてきていいですか?」

 この船のクセや反射、加速の度合いなんかを見て、場合によっては手直しを要求するための慣らし運転だ。

「じゃあ、私の本体が衛星のショータムから少し離れたところにあるから、そこに行ってくれる? 向こうで機体の具合なんかを聞くからさ」

 この倉庫より、本体内部の設備のほうが充実しているだろうから、手直しするにしてもその方がいいだろう。

 こうして僕は、闇市商店街にある『修理リペア再資源化リサイクルのキュリースガレージ』の裏手の倉庫から宇宙に飛び立った。

 

 この新しい機体の最初の感想としては、元々の『ノルテゲレーム』より、反応が良く、操縦桿ジョイスティックを通して、機体の隅々まで僕の意思が伝わっているような感覚になった。

 コンソール周りもしっかり調べて、おかしな人工知能が搭載されていないのは確認済みなので、機体が勝手にうごいているわけではなさそうだ。

 それから様々な戦闘軌道マニューバを試してみた。

 ヨーから始まり、ロール・ループ・インメルマンターン・エルロンロール・スプリットS・バレルロール・捻り込みと試してみたけれど、やっぱり元々の『ノルテゲレーム』よりスムーズな動きができた。

 そして暫くの間、慣らし運転をした後に、キュリースさんの本体、グリムゲルデに向かった。

 その機体は、サイズは中型戦闘艇(くちくかん)よりすこしだけおおきく、銀地に黄色のラインが入り、助けられた時に見た、黄色のガントレット(小手)のエンブレムがあった。

 近づくとハッチが空き、誘導光が投影されたのでその格納庫に入ると、

「お疲れ様。慣らし運転はどうだった?」

 と、ロングウェーブの銀髪に碧眼、褐色肌に180cmはある長身に、素晴らしいスタイルをスーツにしまい込んだ感じの、艶っぽい女性が出迎えてくれた。

 まさか姉妹の誰か? と、警戒したけど、

「驚いた? これもアバターの一つなのよ」

 という、よく聞いていたキュリースさんの声での言葉に、ほっと胸を撫で下ろした。

「随分雰囲気が違うんですね」

「これは従姉妹の設定なの。熟女と幼女もあるけど見たい?」

 と、コレクションを自慢したいマニアの空気を漂わせたので、

「いえ。けっこうです。それで、機体の方は問題なく動いて、反応や操作性は既製品よりかなり良くなってました」

 機体の感想と感触の話でキャンセルさせてもらった。

「そこは私設計だもの! 期待に応えられるとおもうわよ!」

 キュリースさん(従姉妹バージョン)は自慢げに胸を張る。

 従姉妹バージョン(こっち)のほうがサイズが大きいので目のやり場に困ってしまった。

「それで支払いなんですが……」

 なので迅速に支払いの話にシフトチェンジする。

「全部コミコミで1200万クレジットよ。1クレジットたりともまけないからね♪」

 そしてキュリースさんから提示された額は、おそらく性能から考えれば、倍でも安いかもしれない値段だった。

「ではその金額でお願いします」

「お買い上げありがとうございました♪」 

 

 こうして僕は、新しい戦闘艇ふねを手に入れた。

 ちなみに登録する機体名は『パッチワーク号』に決まっている。

if…新兵器『トルネードブラスター』が搭載されたバージョン

 

ビーム砲もノーマルで、光子魚雷もノーマルだ。

しかし、コンソールにておかしなスイッチを発見した。

「あの……なんですかこれ?」

 不安を覚えながらキュリースさんに尋ねると、

「それは、船首の下部に内蔵された、白と青の2つのビームが縒り合わさり(ツイストし)ながら発射される、貫通力の高い『トルネードブラスター』の起動スイッチだよ。トリガーと連動してるから普段の感覚で撃てるはず」

 キュリースさんはドヤ顔で親指を立ててきた。

「わかってる! スペシャルウェポンは補充やメンテナンスが大変だっていうのは! でもこれは通常のブラスター用のエネルギーで補充が可能だし、ドルクの親父さんが考案したものだから、私しか調整出来ないなんてことはないから大丈夫! それに、もしまたゲルヒルデ姉さんみたいな古代兵器と戦うことになった時のためには、持っておいたほうがいい」

 そして怒涛の勢いで利点メリットを上げたと思ったら、真剣な表情で搭載を進めてきた。

 たしかに、ゲルヒルデさんには通常のビームは効きづらかったし、あの『グングニール』も、実は意外と頑丈だったのかもしれない。

 それに、目立たないように内蔵式にしてくれているなら大丈夫かもしれない。

 補充も普通のブラスター用エネルギーが流用できるのがありがたい。

 それに出どころがビル・ドルクのおやっさんなのも安心だ。

「ありがたくいただいておきます……」

 ちょっとだけ諦めを噛み締めながら、ありがたく受けとる事にした。


☆☆☆☆☆


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― 新着の感想 ―
モブの一線を守った…だと
やはりモブ属性なら新型やロステクではなく改造機ですね······
1%の違いはとてつもなく大きい、ただし性能を全て発揮できる人に限る。 300km出せる車に100kmしか出せない運転手より、140km出せる車に140km出せる運転手が速い。 その上で、相手が予測して…
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