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モブNo.194∶『首都にある美味しいアイスクリーム屋さんって知ってますか?』

 あって欲しくない情報の通達から始まった初回のシフトは、それ以降は何事もなく終了し、また休憩時間になった。

 襲撃があった事は全体に知られており、コロニーの食堂や休憩室では、次は何処にいつ来るのだろうというのが話題になっていた。

 幼い元王女様に同情する声も多く、今回の襲撃者に対して、多くの傭兵が怒りを覚えているようだった。

 そんな状況の中で、僕は与えられた部屋で『フルゼル・F・ファルシオン大全集』を読んでいた。

 襲撃犯にいかな理由があろうと、こっちのやる仕事は決まっているのだから、考えるだけ無駄だしね。

 そうして名作を楽しんでいる時、なぜかアーサー君から電話がかかった。

 アーサー君はセイラ嬢と一緒に、式典会場の近くである惑星ハインの大気圏内で、親衛隊と惑星防衛艦隊・帝都惑星ハイン防衛部隊と一緒に警備をしている。

 それはともかく、アーサー君が僕に連絡してくるとは珍しい。

「やあアーサーくん。どうかしたの?」

『ウーゾスさん。ちょっと聞きたい事があるんですが、いいですか?』 

「なんだいいきなり?」

『首都にある美味しいアイスクリーム屋さんって知ってますか?』

 画面越しのアーサー君の表情は真剣で、背景はどこかの廊下だった。

 生命の危機という感じではなさそうだけど、かなり切羽詰まる感じなのは間違いない。

 しかし、その質問は聞いた相手が良くなかった。

 まず僕は首都に詳しくはないし、その中の特定の店、特にスイーツの店なんかわかるはずがない。

「そういう質問は聞く人間を間違ってるよ。それこそ、いつもいっしょにいるセイラ嬢にでも聞けばいいんじゃない?」

『はい。まあ。そうなんですけど……』

 よく考えれば、アーサー君ならそれぐらいはすぐに思いつくはずだ。

 それが出来ないということは、この仕事が終わって、首都の出入りができるようになったら、セイラ嬢とデートにでもいくのだろう。

 だったら本人には聞きづらいよね。

「ああ、ディロパーズ嬢なら知ってるんじゃないかな? 首都の学校に通ってたらしいし」

 なので、知ってそうな人の名前を教えておいた。

『わかりました、そうしてみます。ありがとうございました!』

「はいはい」

 アーサー君は安堵の表情を浮かべながら電話を切った。

 そして切る直前に、セイラ嬢じゃない女の子の声が聞こえた気がする。

 これは……なんかに巻き込まれたねアーサー君。

 しかもかなりの厄介事に。

 だからスイーツの店を僕なんかに聞こうとしたんだろう。

 さすがは主人公、健闘を祈る。

 

 

 『フルゼル・F・ファルシオン大全集』を30巻ほど読んで、一眠りして起きると、また襲撃があったという情報があった。

 襲撃箇所は僕の担当するエリアの近く。

 パターンがあるのかと考えた人もいたけれど、規則的な感じはしないから、おそらく襲撃のグループが複数あり、それぞれが散発的に襲撃をしているのだろうと推論された。

 正直そんなやり方で成功するとは思わないし、人員の無駄でもある。

 もしかすると、もっと効率のいいやり方を隠すためにこんな雑な襲撃をしているんだろうか?

 そんな事を考えながら、僕は2回目のシフトに入る。

 ちなみにそのもっといいやり方は、なんとなく解らなくもないけれど、それを防ぐのは僕の仕事じゃないからね。

 

 僕の担当するCシフトは、標準時間で午後10時から翌日の午前6時まで。

 いわゆる深夜シフトというやつだけど、宇宙空間や24時間稼働のコロニーなんかではあんまり意味はない。

 警備の方法は非常に簡単、その場に留まって、何かが近づいて来たら報告し、司令部の指示に従う。

 それ以外はその場にじっとしているだけでいい。

 僕達傭兵の戦闘艇だけでも何十万機とある上、軍の戦闘艇や軍艦、陛下のためと集まった貴族たちの私兵も合わせると何百万隻にもなる。

 一応、傭兵が一番外側、軍がその次、その次は貴族の私兵、そして一番内側の大気圏内には、選抜された傭兵、親衛隊、惑星防衛艦隊・帝都惑星ハイン防衛部隊が待ち構えている。

 それだけの数が下手に動くと大事故になってしまうため、巡回警備はやりづらい。

 そのため、軍の極少数だけが巡回警備を行っている。

 つまりは僕等の警備の種類としては、門番か見張り番といった感じだ。

 なのでその時間は非常に退屈なわけだが、仕事中なのだから漫画やらラノベやらを読む事は出来ない。

 まあ、当たり前だけどね。

 その間の食事は、コロニー内の食堂が出してくれるミールボックス=弁当を持っていくか、コロニー内のショップでなにか買っていくかの二択になる。


 そんな感じで大人しく見張り番をしていると、かなり向こうから何かが近づいて来ているのが見えた。

 まあ間違いなく、襲撃犯だろう。

 報告しようとしたとき、既に誰かが見つけていたらしく、司令部から連絡が入った。

『敵集団を発見! 性懲りも無くお姫様狙いで突貫して来やがって! 先に捕まえた奴の中に、元姫様に乱暴してやるとか抜かしたのがいたからな! ロリコン共に遠慮は要らねえから容赦なくぶちのめしてやれ!』

『『『『『おーっ!』』』』』

 司令部の人は軍人のはずなんだけど、いいのかなあ情報流して。

 それに全員がロリコンではないでしょうに。

 まあそのおかげで士気は上がったみたいだけどね。

 その襲撃犯達(ロリコンども)は、揚陸艇を中心に戦闘艇で周りを囲み、こちらを突破していくつもりらしい。

 が、それにしては規模が小さすぎる。

 本気で突破しようとするなら、揚陸艇は最低でも駆逐艦クラスは必要だろうし、護衛の戦闘艇も数百は用意するべきだろう。

 この襲撃犯達は本当に成功させる気があるのだろうか?

 不審には思うが、まずは目の前の襲撃犯を撃破・捕縛する事が最重要行為だ。

 とはいえ多勢に無勢なので、向こうはすぐに護衛の戦闘艇の大半を無力化されてしまう。

 揚陸艇は味方を失いながらも、さらに進もうとスロットルを開いて、噴射口ノズルから火を噴き出しはじめた。

 しかし、速度がではじめる前に、なんとか噴射口ノズルを破壊できた。

 が、噴き出した火は収まらず、噴き出るまま船体を包み始めた。

 乗組員はすぐに脱出し、逃げ出そうとしたが、流石に逃げることはできず、あっけなく全員が捕まった。

 捕まえた後は軍に引き渡し、また門番の仕事に戻る。

 勿論、負傷したり船が破損したりした場合は、コロニーに戻って治療や修理をする。

 その後はなにも起きず、時間は平穏に過ぎていった。

書籍関連での特典SSの執筆のため、少しの間投稿がストップします。

申し訳ありません。


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― 新着の感想 ―
今更気づいたが、これローマの休日の相手が皇帝だったらリオル君、モブも幼馴染もアーサー君にかっさわれることになるな
アーサー君は大変だなぁ(他人事)。 他の方もおっしゃっていますが、イケメンが女の子とアイスクリームを食べに行くのはローマの休日を彷彿とさせますね。 早見沙織さん吹き替えのオードリー・ヘップバーンはマジ…
襲撃犯、別に罠でもなんでもなく単に無能なだけなんかい
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