モブNo.180∶「ねえあなた達。銀河民主国の国民として、私達と共に戦う気はないかしら?」
「まあまあ。そんなことを言わず話ぐらい聞いていっても損はないだろう」
サイレンに警戒して通してくれると思ったのだけれどそんなことはなく、男2人と女1人は、僕達の行く手を阻んできた。
そしてメンバーの女性が僕達の前に来ると、
「ねえあなた達。銀河民主国の国民として、私達と共に戦う気はないかしら?」
という、いきなりな質問をしてきた。
そんな彼女の質問に対して、僕達の返答は、
「「「はあ?!」」」
という困惑の一言だった。
そんな僕達の表情を気にすることなく、女性は熱を持った感じて話し始めた。
「本来私達銀河民主国には貴族制度は存在しなかった。それが、銀河帝国に侵略されてしまったことで、貴族制度が施行された。奴らは我が銀河民主国に貴族がいないと言う事で私達を道具のように扱い、権利も成果も奪われたの! あなた達だって理不尽な目にあったことがあるでしよう?」
「それは……」
「まあ……」
「数え切れないぐらいあるでござるな」
実際女性が言っていることは正しい。
行列の割り込み、予約の割り込み、品物・金銭の強奪、理不尽な暴力、手柄の横取り、罪のなすりつけ、僕らは経験はないが、恋人の略奪やセクハラ、身体の関係の強要なんかもよくある事だ。
そんな僕達の様子を見て、女性はにっこりと笑い、
「だったら私達の同志になって一緒に戦ってちょうだい! そして我が銀河民主国から貴族どもを追い出して、独立し、祖国を取り戻すのよ!」
熱のこもった口調で、僕達を同志にと勧誘してきた。
が、その勧誘に僕達が乗るわけはなかった。
「理屈はわかったでござるが……先代今代の皇帝陛下の改革によって権利や成果は保証されつつあるでござる。それに、貴方がたのやり方は平和を乱すやり方なのでは?」
クルス氏は金属の頭部をポリポリとかき、
「反皇帝派閥の貴族の反乱、ネキレルマ星王国との戦争、どっちもまだ戦後処理が終わってないからな。その状態で独立したところで、他の国から攻撃されたら潰れるんじゃないか?」
ゴンザレスは戦利品を読み始め、
「それに独立って言われても、生まれた時から帝国って言われて育ってるから、なんか違和感がある」
そして僕は呆れ顔をしながら女性達を見つめた。
その僕達の答えに、女性の顔がみるみるうちに般若のような表情に変わっていった。
「ふざけるんじゃないわよ! あんたらみたいなマンガなんかに夢中な役立たずを、祖国のために役立ててやろうっていうんだ! ありがたく拝命して、私達の指示に従って働けばいいのよ!」
さっきまでの話の内容とは打って変わり、こちらを見下した罵声を浴びせてきた。
正直、さっき自分が毛嫌いしていたゴミ貴族と変わらない感じだった。
女性は一回呼吸を整えると、
「もう一度言うわ。銀河民主国の国民として、祖国を取り戻す為に全てを投げ打って働きなさい!」
そういいながら懐から銃を取り出し、銃口をこちらに向けた。
同時に後の男達も銃を取り出し、こちらに向けてきた。
デモ隊がどうして銃を持っているのかじっくりと理由を聞きたいところだが、そんな物を突きつけられて入会を迫られている状態では聞く方がおかしい。
どうやってこの場を脱出するかを考えた時、ゴンザレスとクルス氏は民間人、僕は傭兵ということを考えると、僕が突破口を開く必要がある。
連中は、僕の腰に銃があるのを認識しているはずだ。
が、警戒している様子がないのを見ると、もしかするとコスプレ用の玩具と思っているのかもしれない。
その緊張の瞬間、連中の後ろから、
「お前達! そこで何をしてる!?」
という、警官隊の声と足音が聞こえてきた。
流石に連中もそちらに一瞬気を取られた。
僕はその隙をついて銃を抜き、近い奴からその手の銃を狙って3連射した。
「ぐあっ!」
「ぎゃっ!」
「ひいっ!」
が、うち男性2人は、距離があったのもあって、 銃ではなく手に当たってしまった。
威力は最弱にしてあるから、火傷ぐらいで済んでるはずだ。
主人公なら全員綺麗に銃に当てるんだろうから、僕なんかは足元にも及ばないね。
警官隊は、逃げ出した女と腕を押さえている男2人を拘束すると、
「お前達のデモ活動は無許可のうえ、騒乱罪および内乱罪の疑いだが……お前達3人は脅迫の容疑で逮捕する!」
と、通知して連中に手錠をかけた。
銃については、許可証があれば所持は合法なので通知はなかった。
すると女が、
「あの男が私達に発砲したのよ!」
と、女は大声を出した後、にやりと笑った。
たしかに撃ったのは僕で、彼等は撃ってない。
が、突きつけたのは向こうが先だ。
どう説明しようかと考えていると、
「ウーゾス殿は我々を守るために発砲しただけにござります! 先に銃を突きつけてきたのは其奴ら!証拠は某の汎用端末に画像がありまする!」
「私は儀体なんですが、緊急時には視覚と聴覚を録画・録音出来るようになっていますので、友人の発砲は正当だと証明出来ます」
クルス氏とゴンザレスが、僕の正当性と連中の罪を証言してくれた。
すると女は、
「そいつらは私達の仲間よ! 銃を出したのはちょっとした意見の食い違いからヒートアップしたからなのよ!」
と、苦し紛れに明らかな大嘘をはいた。
「それは本当かね?」
年嵩の警官が、僕らを怪訝な目で見つめてきた。
発砲はこちらが正当でも、連中の仲間で、発砲も仲間内のいさかいとなれば、僕達もデモの関連で逮捕されてさしまう。
さすがにこれはと思ったとき、近くにいた若い警官が、
「バッグの中身を見せて下さい」
と、いってきたので、大人しく見せた。
すると若い警官は、
「大丈夫です。彼等は反帝国主義者じゃありません。間違いなくコミックマルシェの参加者です。荷物が全部同人誌ですから!」
と、自信満々に年嵩の警官に報告した。
「そ……そうか……。では、こいつらを連行しよう」
年嵩の警官は若い警官の迫力に押され、僕達のことは放置する事にしたらしい。
こうしてデモ隊メンバーは警官隊に連行され、若い警官は、帰り際に僕達に向かって親指を立ててくれた。
まああの女は最後まで僕達を睨みつけていたけどね。
なんとかあの勧誘から逃げ延びた後は、また連中や警察につかまっては大変とばかりに、会話も一切することなく、いそいで駐車場に向かい、なんとか車までたどりついた。
そして車に到着すると、
「いやー、さっきは助かりましたぞウーゾス氏! 流石、傭兵ですな!」
クルス氏が開口一番にそんなことを言ってきた。
「銃抜くの初めてみたけど、意外に腕がいいんだな」
ゴンザレスは車のドアを開けながら、僕の銃の腕を称賛? してきた。
それが2人からの感謝の言葉なのは理解した。
友人からとはいえ、そういうのは気恥ずかしいので、
「素人よりマシなぐらいだよ。それより早くホテルに戻って新刊読もう」
車に手早く荷物を積み込み、移動を促した。
「左様でござるな。昨日同様コンビニに急がねば」
「今日は違うとこにしてみるか」
そのあたりを理解してくれたのか、2人ともそれ以上はなにも言わないでくれた。
そうして前日同様にコンビニで夕食を買い、ホテルでオタク三昧の夜を過ごした。
若い警官は同志で、本当ならイベントに参加したかったが休みが取れず、新刊の購入は友人に頼んでいました。
それなのに仕事で会場に来てしまった苦しみたるやw
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