モブNo.166∶『このままだと追いつかれます! 散開して各個撃破、隙をついて脱出をお願いします!』
映画の小道具入りのトランクが発見された後は、何のトラブルが起こることもなく、平穏に過ぎていった。
まあ、一部の勇者が女性更衣室や女性用浴室を覗こうとして発見され、ディロパーズ嬢に制裁(金的)された事件や、アーサー君を巡ってセイラ嬢が他の女性達と、血で血を洗う壮絶な口喧嘩を繰り広げた事件はあったが、概ね平和だった。
そうして契約期間は終了し、その結果人工天体の周囲は綺麗な空間になり、その人工天体の修理も完了した。
これからは領地の人達を雇用し、少しずつ経済を立て直していくのだろう。
そうして御役御免になった僕は惑星イッツに帰ることにしたのだけれど、何故かまた、アーサー君とセイラ嬢とディロパーズ嬢がくっついてきた。
正直迷惑なのだけれど、明確な迷惑でもないので非常に拒否がしにくい。
理由を聞いてみたところ、
『目的地が一緒だし、トラブルがあった場合、人数が多い方が対処がしやすいので』(セイラ嬢)
それはたしかにごもっとも。
『色々話がしてみたい』(アーサー君)
なんで? 僕としては、仕事の事以外は君と話が合うとは思わないんだけど?
『船の動きが見たい』(ディロパーズ嬢)
オートパイロットですが?
という答えが帰ってきた。
彼等(セイラ嬢は除く)にとっては有意義なのかもしれないが、僕にとっては憂鬱でしかない。
とはいえ、彼等が数少ない職場での知人であるのは違いがないので、その感情は微々たるものでしかなかった。
そんな感じで惑星イッツまでの帰路を航行していたとき、不意に円形の光が現れ、船の先端部分から少しずつ現れ始めた。
これは、いわゆるゲートを通るときの現象だ。
つまりここには、一般に知らされていない、もしくは政府に管理されていない、ゲートの出口があるということだ。
一般に知らされていないゲートは、軍が緊急事態の時に使用するもので、通常は市民や貴族でも使用できないものだと言われている。
そして政府が把握していないゲートは、主に海賊や犯罪者が利用している。
このゲートの事は、『闇ゲート』と呼称することになったそうだ。
そのゲートから出てきた船は大型の空母だった。
が、軍のカラーリングではなく全体が真っ黒で、船体にドクロのマークが描かれた、分かりやすい海賊の船だった。
それを見た瞬間、誰が何を言うでもなく、全速力で船を走らせた。
空母ということはかなりの数の戦闘艇があるという事で、数的には不利である上に、船体からの砲撃もあるからだ。
船体に張り付く戦法は、周囲に他の艦船がいれば同士打ちを避けて発砲しないが、周りにいないなら、撃ち放題になる。
さらには、空母は巨体な為にまだゲートから出きっていないため、方向転換ができない。
その間に距離をとり、あわよくば逃げ切る事を目指して全速力で船を移動させる。
しかし相手は、船の全体がゲートから出きる前にこちらへの対処を開始した。
戦闘艇を発艦させたのだ。
数は6機。まっすぐにこちらを追尾してくる。
そうすると、逃げ切れないと判断した、セイラ嬢が、
『このままだと追いつかれます! 散開して各個撃破、隙をついて脱出をお願いします!』
という指示があった。
断る理由もないので、承諾し、散開した。
☆ ☆ ☆
【サイド∶海賊】
私の操縦桿をにぎる手は小刻みに震え、グローブの中は汗をかいていた。
『土埃』とは何度か対決した。が、全て敗北してきた。
その事実が私を震えさせていた。
が、今の私はリーダーとして行動する必要がある。
「フォーク1より全機。相手に手練れがいる。気を引き締めていけ」
『フォーク2、了解したわ』
『フォーク3了解です! 頑張ります!』
『フォーク4、了解した。ちくしょうついてねえぜ』
『フォーク5了解。ヤバいのはお願いする』
新入りの3と6以外は、全員が『土埃』に落とされた事があるため、緊張が走る。
『手練れ? あんな連中せいぜい騎士階級程度だろ? 警戒するほうが間違ってる! この俺様が負けるわけないだろ?』
しかし新入りの1人、フォーク6は、『土埃』との戦闘経験がない。
そのため『土埃』を侮るのも仕方ないが、それ以前にかなりの自信家のため、周囲の人間と折り合いが良くない。
『まずはあの白い奴から軽く落してやるか!』
『待て! フォーク6! 勝手に動くな!』
フォーク6は私の指示など聞かず、先行していった。
もともと私が指揮をすることに不満があるらしく、事あるごとに反抗してくるのだ。
『仕方ない。フォーク2と3は私と一緒にあの薄茶色だ。フォーク4と5は、残りをお願い』
『『『『了解!』』』』
こうして私達は『土埃』に勝負を挑んだ。
『土埃』の得意な戦法は、スラスターを活かした3次元的な背後取りだ。
それを警戒し、
『2は下、3は上を! 左右は私が!』
そう指示した瞬間に、『土埃』の機体が消えた。
来る! しかし次の瞬間、『土埃』は私達に背を向けて逃走した。
『待てーっ! 逃げるなーっ!』
新入りのフォーク3が『土埃』を追いかける。
流石に3対1では不利だと考えたのだろう。
『私達も追うわよ』
フォーク2も、フォーク3に倣って『土埃』を追撃するべく前に出た。
しかしその時、私は嫌な感覚がした。
「待って! 深追いは駄目っ!」
そう注意した瞬間、
『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
フォーク3こと、へレニー・ブロニアナは、『土埃』が仕掛けた、ミサイルを切り離してその場に放置して相手の障害物にする『置きミサイル』に引っかかり、爆発四散してしまった。
『あっぶなかった! 下手すりゃ私もやられてた!』
『索敵を!』
安堵するフォーク2に、注意を促す。
フォーク3の爆発ののち、『土埃』の姿が消えたからだ。
「左右にわかれて!」
私がそう指示して、左右に分かれた瞬間、真下からビームが襲ってきた。
そのままの流れで、『土埃』を二方向から攻め立てていく。
しかし、その全ての攻撃をギリギリで躱していく。
『なんであのタイミングで躱せるのよ! もう!』
「千里眼って呼んだのは自分でしょ!」
『そうだけど!』
私もフォーク2も正直いっぱいいっぱいだった。
そうして焦ってしまったためか、私もフォーク2も隙を突かれて、被弾してしまった。
どうしてあんな体勢から反撃が出来るのかが
分からない。
そうして私の視界には『LOST』の文字が大きく表示された。
私はバイザーを外しながら、カプセルのカバーを開けた。
カプセルの外には、幾つもの同じカプセルが並び、その先にある休憩所には先程撃墜されたフォーク3こと、へレニー・ブロニアナがスポーツドリンクを手にぐったりしており、その近くには先走ったフォーク6こと、ジミー・エディードが悔しそうに地団駄を踏んでいた。
どうやら彼も撃墜されたらしい。
何故撃墜された彼等や私達が無事なのか?
それは、有人機風の無人機をラグタイムゼロでリモート操作することが出来る『クオンタム・リンク・システム(QRS)』のおかげだ。
つまり私達は、遠隔操作で戦闘をしていたということだ。
生身で戦闘をしている人たちから見れば卑怯にも見えるけれど、人数が限られる私達にとっては大事な戦力維持のための手段だ。
「まーたやられちゃったね〜〜」
フォーク2ことアエロが、悔しそうにしながら、休憩所に備え付けているスポーツドリンクを手に取る。
「うかつでした~。今度は引っかからないように気をつけます……」
へレニーは随分と凹んでしまっていた。
今度はといっているけれど、もし遠隔操作でなかったら、私達は全員ここには居ないということは理解して欲しいものだ。
ちなみにエディードは白い人にあっさりと返り討ちにあったらしい。
『土埃』達は、私達を撃退した隙をついて逃走。
第2陣が追跡するも、逃げられてしまった。
多分、ゲートのことは傭兵ギルドに報告されてしまうだろう。
今回のことは上から文句を言われるだろう。
恨むわよウーゾス君……。
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新年明けましておめでとうございます。
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