モブNo.146:「待ってたよ、お兄さん♪」
「ここで探しものは大変だよ? まあここは他と違って悪臭が無いからまだましだけどね」
少年は顔を傾けながら歯を見せて笑い、
「ここがなんで悪臭がしないかは、あれらを見れば推測はできるよね?」
大きな焼却炉と蓄電器と貯水タンクと複数の電気分解式簡易トイレを指差した。
「でもなんであんなのがあるか知りたくない?」
そして何故か少年は科を作り、流し目をしながら僕に視線を向けてくる。
よく見れば身体も細く、容姿も中性的、服装も半袖に短パンではあっても、なんとなく女性的に見える。
おそらく彼は、ここにきた僕みたいなのや、住民を相手にそういう商売をしているんだろう。
そう考えると、見た目には小さくても、小学生ではないのかもしれない。
ともあれ、まるでなにかの漫画みたいな展開だけど、この後ろには怖い人が控えているのはよくある話だ。
「あ、結構です。じゃ」
なので関わることなく速やかにお断りして、即座に退散するのがベストの選択だ。
それから夕方近くになるまでこの『バンタウン』の半分ほどを捜索してみたけど、ターゲットの手がかりになりそうなものはみつからなかった。
仕方ないので、送迎用ドローンを呼んで町まで戻ることにした。
ここに来るときもつかったやつで、工場のある都市区画で、資源再生管理局で貸出をしている。
ちなみにこの惑星には政府はなく、この資源再生管理局が運営している。
この送迎用ドローンは、自分の汎用端末にビーコンを登録すると、今いる場所まで迎えに着てくれるシステムだ。
僕が頼んだのは、1人用の1番小さいやつだ。
ちなみに誰が書いたか知らないが小さく『エ◯ウルフ』という落書きがしてあった。
やめてほしいよねこういうの。
翌日、僕はまた『バンタウン』に向かった。
今日捜索してなにも無ければ、探索場所を変えることにする。
そうして『バンタウン』に到着すると、なぜかあの少年? が僕を待ち構えていた。
「待ってたよ、お兄さん♪」
え〜なんで待ち構えてるの?
しかもなんか怒ったような表情だし。
あれかな? よくも自分を袖にしやがったな的なお怒りかな?
だとしたら僕は別に悪くないと思うんだけど?
「なんか用?」
こっちから声をかけるととたんに笑顔になり、
「言ったでしょ。ここでの捜しものは大変だって。だから手伝ってあげようとおもって」
そう言いながら僕の腕を取ろうとしていたので、さっと一歩引いて、なんとか避ける事ができた。
その事に不機嫌そうな表情をするが、すぐにまた笑顔になり、
「どうして手伝ってくれるのかって思ってるでしょ?」
と、問いかけてきた。
たしかにそれは僕にとっては大きな疑問だ。
「なんか理由があるの?」
すると少年? はものすごく真剣な表情になり、
「親切にしてあわよくばお客さんになってもらいたいのと、定住するつもりが無いならすぐ出ていってほしいからさ。ここに永住する気がないかぎり、よそ者はトラブルの元だからね」
まあ確かにそうかもしれない。
昨日の捜索中に、暴力や罵声や嫌味は喰らわなかったけど、目が「早く出て行け」と訴えていた感じだったからね。
あと彼のお客さんになる気はない。
その後が怖いかも知れないからね。
「あーそうかもね。じゃあ早く出ていくためにも、最近ここに住み着いた人の情報はないかな? こんな感じの人なんだけど」
そういって、ターゲットの被害者の船の記録にあったターゲットの顔画像を少年? にみせる。
「うーん。最近のお客さんにはいなかったかな。あと、『バンタウン』の近くに住み始めた人は何人かいるけど顔を見たこと無い人以外は全部違うかも」
「なんで住んでるのを知ってるのに顔を見た事がないの?」
「お客さんで周りに人がいない方がイイって人がいて、その人といっしょに、ちょっと離れたところで楽しんだ帰りに人影を見かけたんだ」
少年はニコニコしながら僕の質問に答える。
その表情は明らかにからかっているものだった。
しかしその情報は有益なものだった。嘘でなければだけど。
「じゃあそこに連れて行ってくれないかな?」
「同伴ってことで結構高いよ?」
僕のお願いに、少年は人差し指を口元に当てながらスマイルを浮かべてきた。
「あ〜じゃあはい」
まあそう来るだろうとは思ったので、用意しておいた現金を渡す。
スラムでは情報は信用され無さそうだったからね。
「1万クレジットの紙幣3枚とは羽振りがいいねお兄さん♪ おまけにスラム街での支払い方をわかってるじゃない♪」
「早く案内してほしいからね。ちゃんと案内してくれたらもう2枚渡すよ」
腕を組もうとしてきた少年から逃げ、早速案内をたのんだ。
『バンタウン』の外に向かう間、少年は何かと僕に話しかけてきた。
「ちなみに僕の名前はエリオット・ルインリッヒ。常連さんはエリーって呼んでくれるんだよ?」
とか言いながら笑いかけてきたり、
「僕は一つの街に定住せず、いろんな街を転々としながらお客を取ってるんだ」
と、自分の営業スタイルを説明したり、
「『バンタウン』にある大きな焼却炉と蓄電器と貯水タンクと複数の電気分解式簡易トイレはある住人がーーこんな臭いところで生活できるかっーーって怒って、町や周辺の生ゴミや可燃ゴミを燃やして電気をためて、それを売って水とトイレを買い、住民に無料で使わせたんだ。そして――次からは生ゴミや燃えるゴミを持ってきたら水をやる――と言ってゴミを持ってこさせたんだ。水はスラムでは貴重だからね。そのおかげでこの街は悪臭から解放されたんだ。それ以外にも色々やってはいたらしいけどね。ちなみにその人の名前がバン・トゥエインだから『バンタウン』なんだ」
長々と『バンタウン』の名前の由来を教えてくれたりと、観光案内と営業トークのような感じだったけど。
そしてそんな事をしているうちに、目的地に到着したらしい。
「あれだよ」
少年・エリオット君が示した先には、まだ真新しい戦闘艇がゴミの山の上に絶妙なバランスで乗っかっていた。
「じゃあちょっと行ってくるよ」
危険があるかもしれないので、エリオット君を置いて僕だけが戦闘艇に近づいていく。
「もしもーし。ちょっとよろしいですか?」
「だれだい?」
僕の呼びかけにあっさりと姿を表したのは、疲れ果てた表情をした、痩せた中年男性だった。
「スティーブ・マルダオさんですね?傭兵です。用件はわかりますかね?」
僕は身分証と手錠をみせると、マルダオ氏は一切抵抗する素振りは見せず、
「そう……ですか……。海賊は廃業する予定だったから……ちょうどいい……」
そう言って僕に向かって両腕を差し出した。
少年は、イメージCVを誰にするかで印象が変わりそうです。
一応井上麻里奈さんをイメージしますた
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