モブNo.144:「あとあのデカいやつ。『グングニール』だっけ? あれを一撃で落としたあの戦闘艇。前の反乱軍鎮圧の時にいたやつだよな? 何かしらないか?」
超々極大型戦闘艇『グングニール』が大破し、ネキレルマ星王国との戦争が終わってから9日後、ようやく本拠地の惑星イッツに帰ってこれた。
途中、イッツへの直接のゲートがありはしたものの、保安上から封鎖されており、どうしても時間がかかってしまう。
とにかく無事にかえってきたからには、まずはローンズのおっちゃんに挨拶をしておこう。
「ただいま」
「戻ったか。おつかれさん」
おっちゃんは、傭兵の居ないギルドでいつもどおりの業務を行っていた。
「なんとか生き延びたよ」
「あのデカい船は相当ヤバい代物だったみたいだったが、その船を一発で消し飛ばした方も凄まじいな。直接見たんだろう?」
「あれやったのは第7艦隊所属の艇だよ」
「軍の虎の子ってやつか。どちらにしてもとんでもねえな。で、どうすんだ? わかってるだろうが報酬はまだ来てないぞ」
大規模だったり軍の作戦だったりする場合は、支払いが遅いのはよくあることだ。
「うん。だからしばらく休むわ」
「それがいいな」
「んじゃ……」
「おう。ゆっくり休め」
ローンズのおっちゃんは歯を見せて笑った。
ギルドを出た僕は、そのままドルグ整備工場に向かった。
「こんにちわー」
「おう、帰ったか」
おやっさんはエア・カーの下にもぐりこんでいて、僕が声を掛けると、いつもの様子で応対してくれた。
「船のオーバーホールを頼みたいんだけど大丈夫?」
「そうだな。少し待たせる事になるぞ」
「しばらく休むつもりだから問題ないよ」
「だったら明日にでも預けにきな。書類の書き方はしってるよな」
「はい。じゃあお願いしますね」
「おう。任せときな」
僕は必要書類を書いて、おやっさんに見せた後『ドルグ整備工場』を後にした。
それからはその足で『アニメンバー』に向かい、『ジャンプとパンプス』『こんな素晴らしい異世界で幸福を・シーズン4』『異世界世直し旅・第三期』のアニメデータや、『エルドラド・スペランカー』『ケイ素系彼女』あたりの新刊なんかをまとめて買った。
同時にゲームショップにも行き、『マウスポリス』や『ストレンジャー』なんかのレトロゲームのデータなんかも何本も購入した。
『アニメンバー』を出た後、町中をぶらぶらしていると、どこもかしこも戦勝ムードで浮かれていて、安売りセールや戦勝記念といった文字が飛び交っていた。
それらを眺めつつ列車に乗り、自宅の最寄り駅まで移動する。
近くのスーパーも、戦勝ムードで安売りセールをしていたので、夕食やその他の食材なんかも買って帰った。
久しぶりの自宅に帰り、船の中の生きた心地のしない寝台から、安心して眠れる自宅のベッドに変わった。
これだけでも生きて帰ってきたかいがあったというものだ。
おやっさんのところに船を預けた翌日を含めて丸3日間。
僕はアニメとマンガとラノベとゲーム三昧の日々を過ごした。
そして4日目の朝に、ちょっと気になってニュースサイトを見てみると、こんな記事があった
『先日、我が国に宣戦布告をしたものの、我が国の強力な軍の前に返り討ちに合い、100年前とは違い、我が国の新たな植民地となったネキレルマ星王国は、ネキレルマ地方として組み込まれる事になった。侵攻時の国王であったカイエセ・ドーウィンが死去しているため、先代国王と亡き第1王妃の娘であるカラーナ・ベーレントン・ネキレルマ元王女(12歳)が地方領主となり、統治を行うとのこと。ネキレルマの人々は、元々のネキレルマ政府に対して、もはや不信感しか抱いていない。その理由としては、過去の銀河大帝国の暗黒時代の再現と言える程の圧政だ。平民に対してはあらゆる事柄に税金をかけ、富を搾り取る。逆に貴族は過保護とおもえるほどに手厚く保護をしていた。そのために平民は飢え、衰弱し、それでもギリギリ生活が成り立っていたところに、戦争の名目で物資をさらに奪われ、さらに見せしめに惑星ごと消滅させられ、敵に対しての盾として使われた事に、平民の怒りが頂点に達しているからだ。現在病床にあるという先代国王は改革を実行しようとした直前に病に倒れたため、改革は実行されなかった。さらにその国王の病気の原因は、贅沢が出来なくなると考えた第2王妃が、病原菌を投与したと噂されており、第2王妃は第2王女(5ヶ月)を放置して逃亡したとの事。様々な要因から、元ネキレルマ星王国国民からの、ネキレルマ星王家に対しての不信感は天井知らずになっている。そのため、前国王の娘である元第1王女の統治は非常に難しいと言わざるを得ない』
なかなか辛辣な事を書いている感じがする。
まあ、厳密には第1王女の責任ではないけど、王族という事で責任は取らざるを得ないだろう。
あと、第2王女は間違いなくカイエセ・ドーウィンとの子供だろうね。
まあ僕みたいな一市民かつ一傭兵が心配したところでどうなるものでもないので、考えるだけ意味はないかな。
ともかくしばらく家にこもっていたので、流石に今日は出かける事にした。
ゴンザレスには通信で戻ってきたことは伝えているが、会ってはないので会うことにした。
しかしまずは『リラクゼーションヘルスランド』に行くことにした。
風呂に入らなかったわけではないが、やっぱり広い風呂は気持ちがいいからね。
ちなみにバーナードのおっさんに会うかと思ったがそんなことはなかった。
『リラクゼーションヘルスランド』をでたあとに、闇市商店街に足を運んだ。
ここも戦勝ムードに沸いていて、様々なセールが行われていた
そしてあのお肉屋さんでは、『脂泥に飛び込む死肉の巨岩』という、成人男性の握り拳くらいあるビッグサイズのメンチカツを期間限定で格安販売していた。
僕はそれを4つほど買ったあと、コンビニで炭酸飲料を買ってから、パットソン調剤薬局に向かった。
「ういっす。久しぶり」
「おう。無事五体満足みたいだな」
「なんとかね」
僕は『脂泥に飛び込む死肉の巨岩』の入ったパックと炭酸飲料をカウンターに置く。
すると、ゴンザレスが申し訳無さそうに声を掛けてきた。
「悪かったな。あんまりいい情報が提供できなかった」
ゴンザレスは、今回の戦場や敵軍の様々なデータを集めてくれてはいたのだが、様々な情報や、何より『グングニール』の情報が得られなかった事を悔やんでいた。
「仕方ないよ。向こうも最大の機密情報だから、最大限注意していただろうしね」
「紙に書かれて手動開きの金庫に入れられたりしたら、ハッキングじゃ盗めないからな」
ゴンザレスは、『脂泥に飛び込む死肉の巨岩』にかじりつきながら悔しそうにしている。
「あとあのデカいやつ。『グングニール』だっけ? あれを一撃で落としたあの戦闘艇。前の反乱軍鎮圧の時にいたやつだよな? 何か知らないか?」
ゴンザレスが真剣な表情で詰め寄ってくるのは珍しい。
知っているかいないかで言えば知っているが、流石に意思のある古代兵器と知り合いというのはヤバすぎるので、
「遠目から見ただけだからな。なんとも言えないよ」
「そうか……」
心苦しくはあるが知らないフリをした。
それからは、色んなくだらない話をし、近所にある『お食事処・常闇の枝』という、客も店主も厨二病会話しか喋らないという店で夕食を食べてから解散となった。
今回は説明回
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