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モブNo.119:「閣下。何をニヤニヤしているんですか?」

『ではこれより、模擬戦の2戦目を開始する。

 戦場は通常空間での超大型戦闘艇(せんかん)の護衛、及び襲撃だ。

 護衛側である第1艦隊側は、超大型戦闘艇(せんかん)がA地点からB地点に移動するまでに超大型戦闘艇(せんかん)を守りきれば勝利だ。

 襲撃側である傭兵部隊の諸君には、容赦のない攻撃をしてもらってかまわんので、超大型戦闘艇(せんかん)を停止させれば君たちの勝ちだ。

 なお、超大型戦闘艇(せんかん)に砲撃は使わせないので安心して欲しい』

ブレスキン将軍は全員に対してそう説明すると、そのまま自分の部下に対して、

『さて、我が部隊の精鋭諸君に告げる。第1艦隊に相応しい戦闘をするようにな』

 という、注意とも激励ともとれるような言葉を投げ掛けた。

 

 こうして始まった2戦目は、こちらにかなり有利に見えるが、実は油断ができない。

 超大型戦闘艇(せんかん)は砲撃はしないと言ったが、バリアは当然張るだろうし、超大型戦闘艇(せんかん)といえど2~3機の戦闘艇は搭載しているからそれを出撃させるだろう。

 他にもレーダージャマーや通信ジャマーをしてきたり、その巨体で突進くらいはしてくるかもしれないという、実際には向こうに有利になっている状態だからだ。

 将軍閣下もその辺が解っててやってるんだろうから意地が悪い。

 と、思っていたのだけど。

 超大型戦闘艇(せんかん)は艦載機もジャマーもバリアすら張る様子はなく、移動するだけだった。

 てっきり超大型戦闘艇(せんかん)からの援護があると考えていたこちらとしては好都合だ。

 すると当然、

『この俺様に続けーっ!』

 ダッシド・デノーガーという馬鹿が調子に乗るよね。

 あれだけ指揮だなんだと(わめ)いていたのに、自分達に有利とみるや、なんにも考えずに突っ込んでいった。

 たしかに最初は押していた。

 だが次第に、相手の連携の取れた動きに押しかえされはじめた。

 すると当然、

「おい貴様ら!指揮官の俺を助けろ!」

 という、泣き言をいってきた。

 僕が見るかぎり、ダッシド・デノーガーの戦闘艇での実力は、かろうじて城兵階級(ルークランク)に止まれる程度でしかない。

 多分、シオラ・ディロパーズ嬢の方が格上だろう。

 もちろんそれだけで傭兵の評価は決まらないが、こいつはその他の部分も、高いとはいえないから、まあ、コネ昇級に間違いないだろうね。

 それでも、超大型戦闘艇(せんかん)からの支援がない防戦一方の第1艦隊戦闘艇部隊に対して、攻勢にでれることは間違いない筈なのに押され始めるって言うのは本当にダメだねこれは。

 『早くしろ!』『なにやってる?!』『指揮官がやられたらおしまいだぞ!』とか喚き散らしているけど、誰もフォローにいかない。というかいけない状態に陥ってる。

 フォローを試みても、デノーガー達を攻撃しているのとは別の部隊が邪魔をしてくる。

 そしてフォローに行けない一番の理由は、本来守られるべき超大型戦闘艇(せんかん)が、速度を上げてこちらに接近したり、壁になったりしてくるからだ。

 もちろんこの超大型戦闘艇(せんかん)にもダメージ(D)フィードバック(F)フィールド(F)システム(S)は搭載しているだろうから、攻撃すればダメージにはなるのだろうけれど、こちらからの攻撃を装甲の厚いところにわざと当たるようにしている感じだ。

 しかもその超大型戦闘艇(せんかん)の影から別部隊が攻撃を仕掛けてきたりする。

 訓練としてなら、超大型戦闘艇(せんかん)には極力ダメージを負わせないようにするべきだけど、その超大型戦闘艇(せんかん)自身が、兵器を封印したどころか、バリアも張らず、艦載機も飛ばさず、レーダージャマーも通信ジャマーも使わない、いわばこちらを舐めた状態で、多少の被弾をものともせず、その巨体と操舵のテクニックと判断力でこちらを不利に、味方を有利に導いている。

 この超大型戦闘艇(せんかん)の乗組員と艦長は、はっきりいって戦闘艇部隊より脅威だ。

 波状攻撃・撹乱・からの奇襲と様々な手を使ったけど、無駄にこっちの数を減らすだけだった。

 デノーガー達は早々に撃墜。

 さらにはシオラ・ディロパーズ嬢・バーナードのおっさん・セイラ嬢も撃墜されてしまった。

 ロスヴァイゼさんなら、全部の機体をハッキングして動けなくしてから全滅させるぐらいは簡単に出来そうだけど、訓練という事で使っていない。

 とはいえ、向こうの戦闘艇も少しずつ減っているし、超大型戦闘艇(せんかん)もダメージは入っている筈で、攻撃を当て続ければ倒せるはずなんだけれど、

『双方それまで!この度の超大型戦闘艇(せんかん)護衛戦は、目標地点への到達により、第1艦隊戦闘艇部隊の勝利とする!』

 その超大型戦闘艇(せんかん)の活躍と、1戦目より動きの洗練されている戦闘艇部隊の動きにより、僕達の敗北が決定した。

 

 ☆ ☆ ☆


【サイド:ジャック・バルドー・ブレスキン】

 

 今度はこっちが勝ったか。

 まあ、超大型戦闘艇(せんかん)が味方をしてたから当然と言えば当然だな。かなり危なかったようだが。

 戦闘艇部隊も、1戦目の新人共と違ってベテラン達を当てたからな、傭兵連中はさぞかし苦労したろうよ。

 でも1回は勝っとかないとこっちのメンツがヤバイからな。

 これで新人共もちっとは士気(テンション)が上がったし、1戦目で少しは学んだろうから、ちっとはマシになったろう。

 3戦目は、新人共が軍の意地を見せて勝利するか。歴戦の傭兵達ににべもなく叩き潰されるか。実力が問われるところだな。

「閣下。何をニヤニヤしているんですか?」

 横にいた中佐(シュネーラ)が怪訝な表情で話しかけてきた。

「いやなに。今回の演習の勝敗で知り合いと賭けをしててな。それがどう転ぶか楽しみなんだ」

「不謹慎ですよ」

「お堅いことをいうな。みんな注目してるんだぞ」

「誰がその方々を巻き込んだんでしょうね?」

 俺の部下になって長いはずなのに、いまだにお堅いのは本人の性質(サガ)ってやつだな。

「それで。傭兵達の戦闘データは取れたか?」

「はい。ある程度は」

 今回のこの演習、悪いとは思ったが、傭兵達の戦闘データを取らせてもらっていた。

 ダメージ(D)フィードバック(F)フィールド(F)システム(S)に仕込むのではなく、超大型戦闘艇(せんかん)のカメラや人工衛星の『目』での録画というアナクロな方法だがな。

「やはり突出しているのは『羽兜(フェーダーヘルム)』ですね。動きといい反応といい、桁違いですね。途中からかっていたような動きはありましたが」

「新人教育に付き合ってくれたんだろうよ。まるで別人が動かしてるみたいにな」

 実際に戦ってた連中はさぞかし腹が立ったろうな。

「それで『土埃(カーキー)』の奴はどう見えた?」

「一言で言えば無駄がない。ですね。動き自体はまるで教本です」

 それに関しては俺も同意見だ。

 あいつの動きを生でみたが、その動き自体は基本に忠実だ。その分読み易い。

 が、その無駄と隙の無さの為にこっちの反応が遅れてしまう。

 格闘技の奥義は、基礎の技を究極まで高めたものだと聞くが、これはまさにそんな感じだろう。

 反乱の直ぐ後なのにまたきな臭いことになってるからな。

 出来ればここにいる有望株には部下になって欲しいところだが……その手の店(高級クラブ)でも誘ってみるか?

 だめだな。他のはともかく『土埃(あいつ)』は誘うだけ無駄だな。

2戦目はあっさりと敗北。

この戦艦の艦長は銀○伝のヤ○・ウェ○リーみたいな頭のキレる人だと思ってくださいw


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします



早くも第2巻の準備のため、更新が滞るかもしれません。

申し訳ございません

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく拝見させていただいております。 さて、続きを読みたくて読みたくて仕方ありません。 連載を再開してください。お願いします。
[良い点] 主人公のウーゾスの自己評価の低さに比例して周りからの評価はドンドン上がっていくのが良いですね ウーゾスはヒーローのような特別な機体を持っているわけでもなく、特殊能力を持っているわけでもない…
[一言] 閣下「傭兵の有望株を部下にして、コネ軍人どもの嫌がらせの標的にしたり意味のない権力争いに巻き込んで無駄死にさせてぇ。」 有能な部下を欲しがるけど、後ろ盾のない傭兵が軍人として重用される事によ…
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