モブNo.115:「分かりました。期日の最後の日に申し込みます。それでいいですか?」
多数の御指摘と、自分でもどうかと思っていたのもあり、思いきって原因を改訂したしました。
これなら前よりは大丈夫かと思います
無事に目立つことなく惑星イッツに帰りつき、自宅に帰って早々に洗濯物を洗おうとした時に、母さんから電話がかかってきた。
『ジョン!よかった繋がったわ!』
「どうしたの母さん?そんなに慌てて」
腕輪型端末の立体映像に映った母さんは、随分と慌てた様子だった。
「実は……大変な事になったのよ……」
母さんの様子から、かなりの事態が起こったのだと判断し、落ち着いて話をするために自宅の電話で話す事にした。
そして、母さんが話してくれた内容は、とても信じられないものだった。
父さんが、収穫した野菜をトラックに載せて組合に納めにいく途中に、追突を食らったそうだ。
怪我はなく病院での診断も異常はなかったそうだ。
しかし問題はその追突してきた相手だった。
追突してきた車に乗っていたのは、父さんが以前勤めていた会社『株式会社ラベムコーポレーション』の社員で、7年前父さんに自分のミスを擦り付け、多額の借金を背負わされたままクビにした、テノート・リーンデルトという子爵令息(30)らしい。
なんでも、帝国最高学府である国立ハイン大学を首席卒業し、『株式会社ラベムコーポレーション』の社長に土下座までして頼まれたので、部長待遇なら入社してやってもいいという条件で入社、そして1年後にとんでもないミスをしでかし、それを父さんに押しつけた糞野郎だ。
以前は僕が未成年なのもあって教えてくれなかったのだけれど、成人した今の僕なら話していいだろうと判断したそうだ。
そしてそのテノート・リーンデルト子爵令息が、父さんのトラックに追突した理由だが、惑星タブルに別荘を購入したとかで、恋人と一緒にそこにいく途中だったそうだ。
その時、前を走っていた父さんのトラックが急停車したために追突し、車は大破、本人は恋人と一緒に大怪我をしたため、急停車した父さんを訴える事にしたという。
が、示談金3億クレジットを払うなら訴えをとりさげてやると言ってきたらしい。
しかし父さんや現場にいた人達や最初に駆けつけた警官達の証言によると、父さんのトラックは信号で停止していた上に、追突した彼らからは酒の臭いがし、車の安全システムも切られていたという証言や証拠があるそうだし、車も大破まではいっていないそうだ。
さらには大怪我も嘘だろうと言われている。
しかしそれでもリーンデルト子爵令息は、父さんが急停車したから車が大破し、大怪我を負ったという主張を止めないらしい。
流石に父さんが運転していたとは知らなかったらしいけど。
そしてそいつがそこまで強気な主張が出来る理由は本人曰く、
「俺はアルティシュルト・ビンギル・オーヴォールス公爵閣下の直孫だ。お祖父様には溺愛されている。その私が言っているのだから間違いない。逆らうなら公爵家の近衛隊によって捕縛されることになるが…いいのか?」
との事だそうだ。
正直、その話も嘘だとは思うが、まさか公爵家に出向いて面通しをしてくれなんてお願いをできる筈がない。
それでも父さんは、そちらが悪いのだと強引に突っぱねようとしたらしいけど、相手は軍人崩れみたいなボディーガード達を雇っていて、支払いを受け入れなければ、母さんへの暴力も匂わせたらしい。
おそらく7年前も、公爵閣下の直孫だという話と暴力で会社の上層部をだまらせ、今回も警察の上層部に圧力をかけて認めさせるつもりなのだろう。
以前の反乱でかなりの馬鹿貴族が処罰されたんだけど、まだこんな馬鹿が残っていたんだなあ。
たしかにこれはあの作業員さん達の苛立ちもわかるよ。
ちなみに父さんは今、もしもに備えて少しでもお金を工面するために奔走しているそうだ。
取り敢えず、預貯金から1億ぐらいは出せることを母さんに話すと、ごめんなさいとありがとうを連呼された。
母さんから電話があった翌日。
僕は昨日の夜からずっと、どうしたものかと考えながらギルドに向かった。
本音を言えば、今すぐラベムコーポレーションに乗り込んでテノート・リーンデルトを撃ち殺しに行きたい。
でもそんなことをすればこちらが犯罪者になるし、両親にも迷惑がかかってしまう。
今までは一回の依頼毎に何日か休日を取ってたけど、これからは休み無しで報酬の高い依頼を受けた方がいいだろうか?
そんなことを考えながらギルドの建物にはいると、見たことのある人がいた。
それは、中央艦隊討伐部隊第1艦隊所属であり、ジャック・バルドー・ブレスキン将軍の秘書でもあるシュネーラ・フロス中佐だった。
「こんにちは。ウーゾスさん」
「どうも。以前はありがとうございました」
「いえ。治安維持に貢献するものとしては当然のことです」
爽やかな笑顔をむける中佐殿に対して、僕は以前の横取り事件の時のお礼をいう。
「ところでどうしてこちらに?」
「実は貴方を含めて依頼を発注にきました」
軍が傭兵に依頼をするのは珍しいことじゃない。
僕を含むということは、ギルド全体に対して、何らかの依頼をしに来たのだろう。
しかし今の僕は、一つの疑念を確認しなくてはと考えた。
「あの……もしかしてその為に将軍閣下が手を回したんですか?」
「……なんのお話ですか?」
僕は意識していなかったけれど、中佐殿に対して口調がきつくなってしまっていたのかもしれない。
中佐殿は少し眉をひそめていた。
「7年前に父に濡れ衣を着せて借金を背負わせた相手を、わざわざ父のいる惑星に送り込んでわざと事故を起こして父を危険運転の犯人にしたてあげて、示談金を提示して金銭が必要な状態におちいらせて、自分にそちらの依頼を受けざるをえない状況にする事です」
「!……それが真実であるなら、私は閣下を本気で殴り飛ばさねばなりませんね」
中佐殿は、僕の話を聞いて驚き、将軍閣下に対して怒りの感情を見せた。
それから中佐殿は、僕から聞いた話をジャック・バルドー・ブレスキン閣下に小型端末で電話をかけ、尋問をはじめた。
そうして話を聞いた将軍閣下からは、
『まてまてまて!天地神明に誓ってそんなことはやってないぞ!』
という返答が返ってきた。
画面の向こうでの慌てようを見る限り、将軍閣下達は関わってはいないらしい。
「どうやら真実のようですね。閣下がそこまで愚かではなくてよかったです」
中佐殿は、うんうんと首を縦に振る。
部下の自分への反応に憮然としながらも、将軍閣下は、僕の父さんに二度も自分のミスを押しつけたカスの情報を話してくれた。
『まず結論として、そいつは公爵閣下の直孫なわけがない。公爵閣下の子供は男1人女1人。男のほうは現宰相のテリー・ランゲイス・オーヴォールス侯爵。女の方はある子爵家に嫁いでいる。そして孫は3人いて、その中で男は公爵閣下の息子であるテリー・ランゲイス・オーヴォールス侯爵の第二子で長男、のオリバー・レイミス・オーヴォールスただ1人だ。年齢は17歳。しかも病気療養中だ』
その情報を聞いた瞬間、今すぐそのカスを撃ち殺しに行きたくなった。が、そんなことをするわけにはいかない。
「明らかな偽者ですね。おまけに身分詐称、しかも公爵閣下が溺愛している孫とは命知らずにもほどがあります」
中佐殿もその事実には腹を立てたらしく、表情がものすごく冷たくなっていた。
『ともかく、聞いたからには放置はできん。公爵閣下の名誉に関わる事だからな』
将軍閣下もかなり真剣な表情をしており、貴族の身分を詐称することがどれだけヤバイことなのかが垣間見えた気がする。
しかし次の瞬間、
『……と、言いたいところだが、俺はこう見えてもいそがしくてなあ。そこにいる俺の部下が持ってきた依頼をお前さんが受けてくれるなら、その礼として時間を作ってやらんでもないんだがなあ……』
将軍閣下が明らかに芝居がかった棒読みで、こちらへの対価を要求してきた。
まあ、完全に無料の100%善意と言われるよりは信用できるけどね。
「その依頼というのはなんなんです?」
僕の返答を肯定ととらえた中佐殿が、
「こちらからの依頼は、我々第1艦隊の戦闘艇部隊との模擬戦闘においての侵略側部隊をお願いしたいのです。もちろん募集対象は傭兵ギルドイッツ支部に所属する傭兵全員です。子細はこちらに」
僕の腕輪型端末に電子書類を渡してきた。
内容はこうだ。
○
業務内容:ハルイトック宙域での、中央艦隊討伐部隊第1艦隊所属の戦闘艇部隊との模擬戦闘
業務期間:銀河標準時間で約8時間(移動時間含まず)
業務環境:戦闘開始前及び終了後の燃料支給・模擬弾薬の載せ変えと現状復帰
業務条件:宇宙船の持ち込み必須・持ち込み宇宙船が破損した場合の修理費は保証。
募集人数:30名程
報酬: 200万クレジット・固定。撃墜ボーナス有り
○
公爵閣下の名誉に関わるから放置はしないだろうけど、これを受けないと直ぐには動いてもらえないんだろうなあ。
募集に応じるのが僕だけではないだろうから、目立たないようにやられればいいかな。
もしかすると募集人数がいっぱいになるかもしれないしね。
「分かりました。期日までには申し込みます。それでいいですか?」
『十分だ』
僕の返答に満足したのか、将軍閣下はニヤリと笑みを浮かべた。
何かしらのきっかけにはなるかもしれない事件です。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします
自分でも無理矢理かなと思っていたのと、皆様からの御指摘、これならまだ納得がいくかなという展開が思いついたので、思いきって書き直しました。
多少はマシになったと思いたい…




