復讐に燃える仲間たち 後編
彼女とは喫茶店で待ち合わせをした。約束をした午前十時。朝日奈恵子は男を連れてきた。彼女は私の座っている席に座り男を紹介した。
「探偵の前山田尚樹です」
「朝倉武彦です。なぜ彼を連れてきたのですか」
前山田はコーヒーを一口飲み答えた。
「私の友人も投身自殺をしたから。最も七年と半年前の話ですが。僕は情報収集を担当します。さて朝日奈さん。昨日は遺書の出てきた名前の人物の住所を調べました。これから友人に接触するつもりです。次に朝倉君。目標は何でしょうか」
「復讐です」
「殺人事件か傷害事件。どちらにしますか。」「殺人です。できればサスペンスでよくやる自殺に見せかけた他殺にしたいです」
「では一撃必殺を狙いますか。それともじわじわと追い詰めて殺しますか」
「まだ決めていません」
「難しいですからね。この問題は。それより難しいのは殺害方法。おすすめは凶器の入手が容易な刺殺か絞殺か放火です。まあ医療関係者なら毒殺も簡単ですが。それと男性なら撲殺でも可能でしょう。ちなみに朝倉さんの仕事はなんですか」
「作曲家です。だから金はいくらでもあります。印税で結構儲けていますから」
前山田は沈黙してから笑った。
「最高だ。金があれば奴らを仲間にできる」
「奴らとは」
「知っているか。漆黒の犯罪集団退屈な天使たちを」
朝日奈の表情が凍りついた。
「知っています。モリアーティ教授の再来と呼ばれる謎の組織。ボスの年齢及び性別は不明。六年前、華麗に一億円の価値がある宝石とその宝の所有者と執事の命を奪った強盗殺人事件があった。証拠を残さずに宝石を盗む姿が世間に注目を浴びたが、この事件は迷宮入りをした。しかしこの事件を最後にやつらは罪を犯すことはなかった。そんな組織のメンバーの居場所を知っているのですか」
「新宿にあるカジノのディーラーだそうだ。接触すべきは愛澤春樹。退屈な天使たちのメンバーの一人とされる人物で、奴らと協力して社長令嬢に詐欺を仕掛けたことで裏社会では有名人だ。今夜の九時に交渉をするから集合だな」




