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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第九章 賢者

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168.やぁ

ミドリ編これで完結です。長い間のお付き合い有難うございました。

 もう、あの子達立派な冒険者になって、私と歳は変わらないけれど、まるで母親になった気分。


 その様子を木の陰から満足げに眺めていると、私の気配を感じたアイラが杖を構えて放たれた矢の如く突っ込んできました。


「誰?」


 アイラは木の陰に居た私を見て、杖を落としそうになる程体が震え、今にも 泣き出しそうな表情を浮かべました。私は苦笑をもって答えるのみです。


「師匠……帰ってきたんですね。心配で私達の様子を見に来てくれたんだ……」


「見てました?さっきの連携、凄かったでしょ。フィンも随分強くなったし、ネルもね、あれから頑張ってレベルを上げたんですよ」


 声の出せない私はウンウンと頷き、ただ黙って微笑みました。


「師匠が北の方へ行ってしまったから、帰って来る時には本当の意味で背中を預けて貰えるくらい強くなろうって頑張っていたんですよ。えへへ、私強くなったでしょ?」


 アイラの表情はもうくしゃくしゃ、涙をボロボロ流しながら精一杯私に話しかけてきます。『緑地公園』のリーダーとして頑張ったんだね。


「そうそう、この間ね、アニカさんからギルドの方へルナカモマイルのドライハーブが沢山送られてきたんですよ。私と師匠に世話になったからって、マリーさんからおすそ分けを頂いてね、師匠の分も預かっているんです、帰って一緒に飲みましょうね……」


 そこまで話して、再びアイラの眼から大量の涙が噴き出しました。


「でも、その身体じゃあ飲めないですよね。一体何処に居るんですか?だんだん身体が透けています。さっきから師匠の手を取ろうとしても掴めないのです。ど、何処に居るのですか?……何処に行っちゃったの?」


 私は苦笑しながらアイラを抱きかかえる仕草をしました。勿論素通りです。そして空中に指で『大丈夫よ、また会えるから』と書きました。


『ありがとう、アイラ』


「あ、消えちゃう……ねえ、ねえ待ってよ。師匠……」


「アイラ、どうしたんだ?」


「何で泣いているの?何があったのよ……」


 しゃがんで泣き崩れているアイラにフィンとネルが心配そうに問いかけます。


「師匠……ミドリさんが……きっと最北の神殿で何かあったんだ。私これから最北の神殿に行く、ごめん、フィン、ネル。新しいウィザード見つけてくれる?今の二人ならだれとでも組めるよ」


 フィンが鼻を人差し指で擦りながらニヤっと笑います。


「何を言ってんだよ。俺は一緒に行くよ、それも修行のうちさ。ネルは?」


「私も一緒に行くよ。私も、なんかそっちにミザリが居るような気がしてね。ミドリさんにも会いたいし」


「うん。そうだね。私達一緒だね。じゃあ、北へ行く準備しましょうか」


  ◇ ◇ ◇


「会いたい人たちに会えましたか?」


「はい。最後のお別れが出来た気がします」


「何を言っているのですか?しばらく会えないからご挨拶に行っただけでしょ?きっとまた帰って来るのよ」


「……そうですね。今度はちゃんと戻って美味しいハーブティーを飲まなくちゃ」


「そう言えば、ミザリ、ネルね、アイラと一緒に頑張っていたよ。随分強くなってた。もう安心だよ。心配だったでしょ?」


 ミザリは何も言わず目に涙を浮かべながら、ホッとした表情をしていました。旅の間ネルの話は一度も出なかったけど、心配していたんだね。元気な事を伝えられてよかった。


「有難う女神様。満足した。元気貰えた、行ってきます」


 私はこの上なく満面の笑みを浮かべてガッツポーズをしました。さあ、切り替えます。


  ◇ ◇ ◇


 頭の中でマサトをイメージしました。彼とこの世界で過ごしたのは本当に序盤。私がプリーステスになったばかりの時、彼に装備を揃えて貰ったっきりです。


 あれから随分な日数が経っているものね、彼も随分変わっているのだろうなぁ。私の事を見て「強くなったなあ」って言ってくれるかしら。


 私は賢者の杖を一振り『瞬間移動ワープ


 突如として目の前に海が現れました。そして地面が地味に揺れています。前に彼が言っていた通り、船の上なのですね。でも、そんな事秒で忘れて、目の前に広がる光景に心を奪われました。丁度夕日が沈んでいて海が真っ赤に燃えています。なんて美しいんでしょう。


 ふと気が付くと、多くの人達が私の方を見てギョッとしています。


 あははは……しまったなぁ。突然船の上に人が湧いてきたんだものね、そりゃあビックリするよね。


「あはは……あの、ごめんなさい。皆さんで楽しんでいる所に突然……えっと、やっぱり無賃乗車になりますかね?船だから乗船かしら……」


 笑って誤魔化すなんて……できないよね。どうしよう、捕まっちゃうかしら、仕方がない、もう一度どこかの街に戻って、現実の世界で現実の将人に説明をしてから出直すしかないかしら……


「え?キミドリ?」


「誰?私の事をキミドリって言うのは!ここではミドリで呼んでもらわなくちゃっ……って。あ、マサト」


「どうしたのいきなりこんな所に現れて……」


「え?ああ。や、やぁ」


「やぁじゃないよ。事情を聞かせて貰えるかな」


 何よその困った顔。あんたを助けに来てあげたんじゃないの。私が居ないと100パーセント全滅するんだよ。なんていうか、そう、もっと喜んだ顔をしなさいよ。


 マサトの顔を見てイラっと来た私は、他の大勢の人にじっと見られているのも忘れて仁王立ち。


「ふん、私が来た理由を懇々と説明してあげるわよ。耳をかっぽじってお聞きなさい。実はね……」


 その後、マサトの仲間たちも交えてこれまでの経過を説明した私。そして、これまでの経過を教えて貰った私。リアンさんもヴァレンティナさんもとっても素敵でした。それにフアナちゃんもウーゴちゃんも可愛い。


「賢者なんて凄い」って皆言ってくれて、快く仲間に入れてくれました。とてもこれから悪魔を倒しに行くって雰囲気ではないのですが、そうなのですよね?


 それにマサトとは久しぶりの出会いだから、愛を深めたり?ないない。だってしょっちゅう現実の世界で逢っているのだもの。まあ、武具を身に纏っているマサトは少しだけ格好いいのは間違いないかな。でも、ほんの少しだよ。


 はっ、もしかして一番浮かれているのは私?少しほっぺが赤くなりました。皆そんなに笑わないでよぉ……


 いよいよ明日はルイ大陸に上陸するそうです。少し怖いけど、皆が居る。悪魔を倒すために私も頑張ります。


いつも読んで下さりありがとうございます。なんとか第3部完結いたしました。

第4部の構想は出来ているのですが、まだ全く文字に起こしておりません。書くかどうかも悩み中って所です。忘れた頃に投稿するかもしれませんが、その節にはよろしくお願いします。

現在投稿中の『飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……』はしばらく続きますので、そちらの方も読んで頂けたら喜びます。

有難うございました。

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