一人で乗りましょう +イラスト
イナミ様よりリーリアのイラスト頂きましたー!
手足がっっ 萌ぇ――――(p〃д〃q)――――!!
なんとなく思いついたお話もプラスでお久の最弱竜です♪
イナミ様ありがとうございます―!!
d(ŐдŐ๑)☆スペシャルサンクス☆(๑ŐдŐ)b
城の裏手の草原地帯で、ドカドカドカッと馬の蹄が地面を蹴る音が響きます。
そして、私はというと、その音を立てる馬の鬣を掴んで、ぶんぶん振り回されておりました。
「キュアアアアアアッ」
「リア、ちゃんと座らないと危険だよ」
馬を駆るのは、長い銀髪の髪に真紅の瞳をした、見た目は最上級の王子様ウィルシスです。
ですが、世の男性は、見た目はともかく中身だと私は思うのですっ!
なぜならこのウィルシス、魔力はあっても発揮できず、力も体力もない竜でありながら最弱というこの私、リーシェリアことリーリアになんとっ、乗馬を教えようという無謀さを犯す、中身が鬼畜な王子様なのです!
ちなみになぜ乗馬かといえば、最近始めたギルドカフェのアルバイト、その職場への往復に、騎士団の誰かがいつも送り迎えしているという現状を私が心苦しく感じたのが発端です。
さすがに悪いと思うのです。ですので、自ら足を確保すべく奔走しているとき、ウィルシスに捕まり、最も避けていた案を出されたわけです。
が、予想通りの大苦戦ですよ!
「足が短くて座れません~!」
キュアッ キュアッと抗議の声を上げ、上下にぶんぶん揺れる私には、立派な翼があります。
そうですね、これは自慢ですが…ついに2メートル飛ぶことができました!
10秒も! いや、2メートル地点は最初の一瞬で、後は落ちているだけとも言いますが…。
努力は大事です。
というわけで、お馬さんに振り回され、飛ぶこともできずにしがみ付き、落ちないようにするのが私の乗馬スタイルなのです。
気分はロデオですが。
「竜と羊には乗れるのにね」
もちろんです。竜は私のお友達ですので、乗り手が私でも竜達が落とすことはありません。
存在を忘れられて一回転し、落ちかけたことなら数回ありますが、あれはたまたまです。たまたま。
羊さんについては行き先不明になることがタマに傷ですが、落ちることはありません。あの背中でほっこりと日向ぼっこするのは気持ちいいのです。
思い出して思わずほっこり仕掛け、ぶんっと降られて私の体は弧を描いて宙を舞いました!
「キュアアァァァァ~…」
ぼてっ
地面に落ちました。
私、最弱竜ですが、こういった衝撃にだけは強いので、痛くはないのですよ。でも、お馬さんに乗れず心が痛いのです・・・。
「やっぱり俺が抱っこしてあげないと駄目かな?」
意地悪く微笑まれましたのでぷいっとそっぽを向きました。
「…ポニーから始めます」
そうです。世の中にはポニーちゃんという名の子供に優しいお馬さんがいたではありませんかっ。
何も背の高い軍馬から始める必要はないのですよ。
ムクリと起き上がり、うんうんと腕を組んで頷くと、ひょいっと体が持ち上げられてウィルシスに抱きあげられました。
「ポニー?」
あ、この世界ではポニーという名ではないのかもしれませんね。
私は身振り手振りを交えつつ、ポニーについて説明します。
「と言うとっても温和なお馬さんなのです」
「・・・温和ねぇ」
なぜか遠い目をされました。どういう意味でしょうね?
こういう時に感じる嫌な予感というものは大抵はずれないものです。
「じゃあ、ポニーに乗ってみようか。竜の騎乗訓練場に何頭かいるはずだから」
「竜の騎乗訓練ですか!? 何故そんなところに温和なポニーちゃんがいるのですか!?」
竜の背中にポニーちゃんを乗せて、竜の方が鍛えられているとか、そういうことですか!?
ますます嫌な予感はしますが、私はウィルシスに連れられて、そのまま竜の騎乗訓練場へと連れていかれました。
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厩舎に馬を預け、お馬さんにはちゃんとお礼を言ってからウィルシスに抱っこされての移動です。
私の足ではいつまでたっても目的地にたどり着け無いほど騎士団の訓練施設は広いのです。
そうして辿り着いたのが竜の騎乗訓練場。ここに集まるのはまだ竜持ちで無い年若い青年達です。未来の竜騎士候補ですね。
とはいえ、竜を捕まえるのは至難の技なので、多くの者が普通の馬乗り騎士になってしまうそうですが。
「頼んでおいたからすぐに来るよ」
いつの間にやらウィルシスはポニーちゃんを確保していたようです。仕事が早いのはさすが騎士団総隊長ですね。
「ところで、竜の騎乗訓練場なのに、何を使って訓練しているのですか?」
見た所、下は軟らかい砂地の、道具も何もない、柵だけがしてある屋根つき施設です。
小型の竜を連れてきて乗ってみるとかでしょうか。しかし、竜は空を飛ぶものですので、地上を走るだけでは訓練になりませんよね。
「すぐにわかるよ」
「キュア?」
首を傾げていると、前方からポニーを連れた騎士が一人やってまいりました。
ポニーちゃん登場です!
「ポニーちゃん?」
え? これはポニーちゃんなのでしょうか。
体の形は間違いなくポニーです。しかし、なぜでしょう、顔が…お顔が…鬼のお面のようです。
牙の生えた馬ってなんですか!?
「一番大人しい子を用意しました」
騎士はそう言って私達の前にポニーを横付けし、ウィルシスが私をその背に乗せます。
乗り心地はポニーです。これは間違いありません。
ですが、顔からすでに大人しい子とかけ離れておりませんか!?
「じゃあ、頑張ってね」
そう言うと、ウィルシスはポニーの背にぽチョンと座る私に手を振って騎士共々傍から離れました。
え…と、手綱は握れておりませんよ…?
問うように視線を向けると、ぐんっとポニーちゃんが走り出し…。
「キュアアアアアアアアアア~!!」
私は大絶叫しましたよ!
なぜなら、このポニーちゃん、動きがロデオです! 馬と違ってこちらは正真正銘ロデオな動き!
馬に揺られて、ロデオ~などと言っていた自分が甘ちゃんだったと思えるすさまじさですよ!
しかも空を飛び、縦横無尽に動き回るので上下の感覚が無くなります!
鬣を掴んで耐えましたが…。
「ウギュルゥゥッ」
自分ではものすごく頑張ったと思ったのですが…。
ぼてっ
落ちました。
「10秒ですね」
「こんなものかな。ほらね? 馬の方がいいだろう?」
まさかとは思いますが、それだけを言いたいがためにこの悪魔のような仕打ちをしたのでしょうか…。
地面にへばり付いた私は、ぐるんぐるん回る景色を見ながら、小さく呟いた。
「も…もう、お馬は乗りません~」
しかし、後日、クロちゃんから送られてきたのは、あのおとなしいというポニーちゃんより凶悪なお顔のまっ黒ポニーちゃんでした。
「ピギャ~!」
その日、青く澄んだ空に、古竜の鳴き声が響き渡ったのでした。




