未知との遭遇!
媚薬の行方の続きです
夢を見ました。鳥が飛んでいく夢です。白い鳥はたくさんの竜になり、やがて虫になり…そしてなぜかUFOに…。
「何故でしょう?」
目が覚めた私はひたすら首を傾げましたよ。
何かの前兆とかいう夢ですかね、意味は読めませんのでしたので、全く意味のない夢かもしれませんが。
キュルアッと声を出し、体を伸ばすと、隣で眠る男性の姿に一瞬どきりとします。
もちろん眠っているのは長い銀髪に真紅の瞳の美丈夫、ウィルシスです。
本日は珍しくぐっすり眠っているようですね。サラサラの髪を一房掴んでさらさら~っと下にこぼしてみても起きませんし、隣でダンスを踊ってみても起きません。
いつもならば私が目を覚ますと必ず横で起きていて悪戯を仕掛けてくるのですが…。
ふといつもと逆なことに気が付いて思わずマジックを探してしまいました。
別に額に文字を書きたいとかそんな悪いことを考えた訳ではないですよ? えぇ、ないです。
残念ながらこの世界にマジックはありませんので、諦めて、私は彼を起こすことにしました。
「起きてください。朝ですよ」
ぺちぺちと我が小さな掌で彼の頬を軽く叩きますが、返事がありません。
いつもならとっくに起きておはようのキスをしているはずなのですが・・・・て、あわわわわわっ。べ、別にそのキスに意味はありませんよっ、朝の挨拶です! ただの挨拶ですから!
心の中で余計な言い訳をしつつ、今度は体の上に乗ってもう一度ぺしぺし手で頬を、尻尾で体を叩いてみれば、ようやく彼は目を開けました。
「リア? 気持ちいい…」
色っぽい流し目で熱っぽく言われましたー!
問題発言です!
それは問題発言ですよウィルシスさん!?
「キュ、キュ、キュアッ、ピッ、キュ」
あまりのことに驚いて言葉に出来ずにいると、ウィルシスの瞼が再び閉じていくではありませんか!
しかもなんだか息が少し荒いような気がします。
さすがにおかしいと思い、額に手を置いて…
古竜の手では微妙に体温が計れません!
「キュルルルルル~!」
私はそのまま小さく悲鳴をあげつつ体温計を探します!
が!
この世界の体温計ってどんなのでしょう!?
落ち着くのです!
まずは最弱竜である自分が風邪を引いた時を思い出してみましょうか…
・・・・・・・・・・
・・・・・・
記憶にありません!
風邪を引いたら大抵お布団でノックダウンですね! さすがは最弱竜の体質ですっ。まさか記憶もあやふやとは思ってもみませんでした。
それならば!
私は翼を動かし、少し大きなベッドに再びよじ登ってウィルシスの上に乗ると、目を覚まさないのを何度か確認して、人型に変わりました。
「これなら体温は計れますね!」
ピタッとウィルシスの額に手を乗せ、う~んと唸ってみます。
ところで、人型の竜と人間の熱は同じなのでしょうかね?
彼の体にまたがりながらうんうん唸っていると
「熱が上がりそうだね…」
悩む私の下から掠れた声が響き、私は飛び上がるほど驚きましたよ。
なぜこういう時に限って人は目を覚ますのでしょうっ。
「ちゃ…ちゃんと眠ってくださいっ!」
真っ裸と言う羞恥心と、彼に見られていると感じる奇妙な熱と、目が覚めたことの驚きとがごちゃ混ぜになり、私は彼を眠らせるために思わず…
ごいん!
頭突きをしてしまいました…。
「ぐっ」
「きゅあっ」
双方にダメージです。
「お医者様を呼びますからね。眠っててください。動いてはだめですよ!」
私は額をさすりながら額を押さえて唸る彼の上から退き、ベッドから飛び降りようとしたところ、腕を掴まれ、ベッドの上に縫い止められてしまいました。
乙女のピンチです!
すみません、まだ乙女です!
あぁ、頭が混乱しているようです。
目を白黒させていると、目の前には熱…なのか、頭突きのせいなのか、少し目が潤んだウィルシスの色っぽい顔があり、私の胸はドキドキと高鳴ります。
「移せば治るよ」
誰にですかー!?
て…私にですかー!?
「ちゃ、ちゃんと治さないと・・だっ、んっ」
ちゅっと吸い付かれるような口づけに言葉が消えていきました。
その後は、あれよあれよという間に蕩かされて・・・・・
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「随分すっきりした顔をしているが何かいいことあったのか?」
セルニア王国守護竜である短い赤毛に蒼い瞳をした長身の偉丈夫グレンが、どこかぐったりした小さな白い竜を抱いて鼻歌を歌うウィルシスに尋ねると、彼はクスリと笑う。
「えぇ、とてもいいことがありましたよ。ケインには感謝しないといけませんね」
ケインと言うと黒竜隊の副隊長でリーリアのことが好きなあのケインだろうか。
「?? そうか」
とりあえず頷いたグレンは数日後、庭の芝生の上に倒れ、ほろほろと涙を流しながら全く反応を示さない廃人のような姿のケインを目撃した。
「ケイン、なんだか知らんがウィルシスがお前に感謝をしていたぞ」
まだ伝わっていないのかと思い伝えたグレンは、ケインが「うっ」と言ってさらに泣き崩れた姿に首を傾げた。
図らずも、彼はケインに止めを刺したのだった…。
リーリア 「私は未知と遭遇してしまったのでしょうか!!
あの夢はこのことを知らせる夢!?」
ウィルシス「とっても可愛かったよ」
リーリア 「ピキュアアアアアア~!!」
リーリアは、未知との遭遇を果たしたのか…それはお月様だけが知っている




